整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

リハビリ専門職が臨床研究を始める前におさえておきたい8つの研究プロセス!(前編)

リハビリ業界でもエビデンスというワードが浸透しており、効果判定や予後予測が重要視されています。
学会発表や論文執筆に興味をもっていても、進めかたが分からずに最初の一歩を踏み出せない方もいるでしょう。
本シリーズでは、臨床で浮かんだ疑問を研究成果として報告するまでのプロセスについて前編後編にわけて解説します。

「なんでだろう?」をかたちにすることがスタート地点

臨床研究とは、ひとことで言うと疑問と仮説を検証する作業になります。
まずは、日々の疑問をかたちにする方法についてご紹介します。

●研究テーマから学会発表までのプロセスを知っておく

臨床研究を開始するにあたって、気になる疑問が浮かんでも、いきなりデータを収集することはできません。
臨床研究は以下のプロセスを理解しておくことが重要です。

  1. 1)臨床場面で疑問をもつ
  2. 2)疑問を具体的な研究テーマとしてまとめる
  3. 3)先行研究の確認&研究デザインを作成する
  4. 4)研究デザインを他者に評価・修正してもらう
  5. 5)研究計画書を作成する
  6. 6)データ収集開始
  7. 7)結果をまとめる
  8. 8)学会発表または論文執筆

本記事では、上記1)〜4)のプロセスについて解説していきます。

●クリニカルクエスチョンからリサーチクエスチョンへの発展

臨床研究での疑問は、クリニカルクエスチョン(CQ)とリサーチクエスチョン(RQ)にわけられます。
CQとは、「◯◯が△△なのはなんでだろう?」という、生まれたばかりの率直な疑問のことです。
しかし、このままでは研究テーマとして役目を果たさないため、その疑問をもう少し深く掘り下げる必要があります。
RQとは、「◯◯は××の影響で△△になるのだろうか?」と、CQをより検証できるかたちに昇華したものです。
CQ「なんで高齢者は転倒するのだろう?」
RQ「高齢者はバランス能力が低下するから転倒するのか?」
という流れで、CQを掘り下げると疑問を検証する糸口が見えてきます。

●その疑問を解決することで得られる成果を考えよう!

たとえば、病院で働く新人セラピストが以下のような疑問をもったとします。
CQ「なんで高齢者は転倒するのだろう?」
RQ「加齢によるバランス能力低下と転倒リスクに関連性はあるのか?」
調査の結果、バランス能力と転倒リスクに有意な相関関係を認めたとしても、自分の疑問が解決しただけです。
重要なのは、「今自分が置かれている状況で、その検証結果がなにの役に立つことなのか」をテーマに設定することです。
この場合、「高齢患者に対してのバランストレーニングは院内での転倒予防に効果的であるか?」と設定すればよいでしょう。

臨床研究で1番重要なポイントは研究デザインの作成!

ここでは、研究デザインを作成する上で必要な作業について解説します。

●まずはPICOを意識して研究計画書を作成してみよう

研究デザインを作成するときに重要なポイントとしてPICO(またはPECO)が挙げられます。
PICO(PECO)とは以下の頭文字をとったものです。

  • Patient(誰に)
  • Intervention(介入すると)またはExposure(影響下におかれると)
  • Comparison(なにと比較して)
  • Outcome(どうなるか)

自分のたてた計画をPICO(PECO)に当てはめて、その研究の枠組みをつくることが重要になります。

●その計画、FIRMMNESSを意識していますか?

FIRMMNESSは以下の頭文字をとったもので、研究デザインを作成する際には必ずチェックしておきます。

  • Feasible(実現可能な)
  • Interesting(興味深い)
  • Relevant(切実である)
  • Measurable(測定可能な)
  • Modifiable(アウトカムが修正可能な)
  • Novel(独自性がある)
  • Ethical(倫理的である)
  • Structured(構造化された)
  • Specific(具体的に)

それぞれの項目の確認方法は、具体的な研究テーマを例に挙げて後述します。

あなたの計画は完璧?研究の質を上げるためには相談が必要

ここまで、研究デザインをつくる過程について解説しましたが、次のプロセスは研究デザインを他者に評価してもらうことが必要です。

●同僚や先輩からアドバイスをもらおう

研究の大枠が完成すると、すぐにでもデータ収集をしたい気分になります。
しかし、研究計画を説明して助言を得るというステップを忘れてはいけません。
前述した、「高齢患者に対してのバランストレーニングは院内での転倒予防に効果的であるか?」というRQを例に挙げてみます。

  • P:入院中の高齢患者さん
  • I:バランストレーニング
  • C:バランストレーニングを行わない患者さん
  • O:院内での転倒率

上記のようにPICOは設定できましたが、このデザインにはいくつかの問題点があります。

  • ◯高齢者の定義(年齢)は?
  • ◯どのような疾患の高齢者を対象にするか
  • ◯トレーニングの質や量をどう統一するか
  • ◯バランス能力以外にも転倒につながる因子がないか

など、数えだすとキリがありません。
綿密にたてた計画でも、臨床経験や研究実績のある先輩たちに意見を求め、研究の精度を高めることが重要です

●PICOとFIRMMNESSで研究デザインの最終チェック!

前述した研究テーマについて、指導内容も含めて最後にもう一度妥当性を考えてみます。

  • P:脚の骨折で整形外科に入院している85歳以上の患者さん
  • I:前後左右へのリーチ動作を利用したバランストレーニング
  • C:バランストレーニングを行わない85歳以上の患者さん
  • O:院内での転倒率

対象者や介入方法がより具体的に絞り込まれましたので、次は妥当性について考えてみます。

  • ◯Feasible:入院中の患者さんなので実施可能
  • ◯Interesting:バランス能力と転倒率の関係は興味深い
  • ◯Relevant:入院中の転倒予防は重要な課題
  • ◯Measurable:転倒率で表すことが可能
  • ◯Modifiable:転倒予防のために既存のリハビリプログラムを改定できる
  • ◯Novel:85歳以上を対象とした先行研究はない
  • ◯Ethical:対象者にとって不利益になることはない
  • ◯Structured&Specific:PICOが具体的に設定されている

ここまでしっかり考えることができれば、ようやく次のステップに進むことができます。

さあ、勇気を出して研究デザインを作成しよう!

良い研究成果を残すためにはPICOを意識した研究デザインや、研究の質を高めるための努力が必要です。
難しいと尻込みをするのではなく、まずは勇気を出して疑問をかたちにすることから始めてみましょう。
後編では、研究計画書の作成から学会発表までのプロセスについて解説しますので、ぜひご一読ください。

関連記事:
リハビリ分野で役立つ文献抄読のまとめ方は?研究・臨床で役立つ基本知識を解説

参考:
福原俊一:臨床研究の道標〜7つのステップで学ぶ研究デザイン〜,認定NPO法人 健康医療評価研究機構,京都,2014.

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)