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作業療法士が解説!パーキンソン病の患者さんのADL指導に使えるアイデア

パーキンソン病の方では、振戦・固縮・無動・姿勢反射障害が生じ、日常生活活動(ADL)に支障をきたすケースが少なくありません。
今回は、理学療法士や作業療法士の方が知っておきたい、パーキンソン病に対するアプローチの考え方やADL指導に使えるアイデアをご紹介していきます。

パーキンソン病の重症度から考えるADLの障害

パーキンソン病の重症度は、「Hoehn-Yahr(ヤール)の重症度分類」によって区分されることが一般的です。
「できるADL」を見極める上でも、まずはヤールの重症度分類でどこに該当するのかを考えることは非常に重要です。

●ヤールの重症度分類は5段階

ヤールの重症度分類にはⅠ〜Ⅴの5段階があり、Ⅴに近づくほど症状は重くなります。
まずはヤールの重症度分類の内容を簡単にまとめていきます。

stage Ⅰ ●症状は体の片側だけに生じる。
●軽い手足の震え(振戦)や筋のこわばり(固縮)などが生じる。
●機能障害はないか、あってもごく軽微。
stage Ⅱ 症状は体の両側に生じる。
●姿勢保持の障害はない。
●ADLや仕事には多少の障害があるが行える。
stage Ⅲ 姿勢反射障害やすくみ足が生じる。
●機能障害は軽〜中等度。
●介助なしで生活できる。
stage Ⅳ 機能障害は重度。
●歩行はどうにか可能。
●1人で日常生活を送ることは困難。
stage Ⅴ ●立ち上がりや歩行が不可能。
●車いす・ベッドで過ごす時間が長くなる。

パーキンソン病では「stageⅡ」から振戦・固縮・無動などの症状が両側性に出現するため、ADLに支障が生じ始めます。
これらの症状が強まるほど上肢や下肢の動きに影響が及び、さまざまなADLの動作が行いにくくなります。
また、「stageⅢ」で姿勢反射障害が出現することは一つの分岐点となり、座位や立位を保つ必要のあるADL(例:トイレ動作)にも影響が出てきます。
このように、ヤールの重症度分類はADL障害の特徴や程度を知るための手掛かりとなるので、最初に確認しておくことをおすすめします。

すぐに実践できる!パーキンソン病のADLに対するアプローチ

パーキンソン病の方でよく見受けられるADLの障害と対策を頭に入れておくことによって、患者さんへの対応がスムーズになります。
次に挙げるアプローチのアイデアを、ADL指導の参考にしてみてください。

●食事動作

振戦・固縮・無動の症状が強くなってくると、箸などを使った細かな操作がしにくい、茶碗をうまく持てないなどの制限が生じます。
また、姿勢反射障害がある場合には前傾姿勢が強まり、食事中に顔を上げることができない方もいます。
食事動作への対策としては、箸やスプーンを持ちやすいものに変更する、テーブルの高さを調整するといった基本的な対応も効果的です。
また、体が傾くときは棚や壁の「縦線」と体の軸とのズレを確認・修正するよう声掛けで促し、できる方には自分で確認することを習慣化してもらいましょう。
また、そうした意識付けだけでは姿勢を修正できない場合、肘付きの椅子に換えることによって体の傾きを抑え、食事動作が行いやすくなります。

●更衣動作

更衣動作では、固縮に伴う体幹の回旋運動の乏しさ、円背、上肢の動かしにくさが大きく影響します。
そのため、背中や肩に手が回りにくいので上着の着脱や下衣の上げ下げが行いにくくなりますし、ボタン留めなど細かな動作にも困難感が生じます。
病院などでは「留め具がなく、伸縮性のある衣類」を用意することはよく行われますが、パーキンソン病の方の上肢機能の特徴(振戦や固縮)から考えても実践すべきポイントとなります。
また、更衣のやり方を指導することも大切です。
たとえば、手探りで袖や裾を通すのではなく、先に袖・裾をたぐって束ねてから、手足を通すべき箇所を目で見るなど、「視覚的な手掛かりを活用する」という方法を習慣化していきましょう。

●トイレ動作

パーキンソン病の方は、自律神経症状によって頻尿になることがあります。
しかし、動作が鈍くなる症状によって、トイレに間に合わないという課題に直面することも少なくありません。
まずはトイレに行きやすい部屋を確保することが前提ですが、それでも立ち上がりや方向転換がしにくい、便座にうまく座れないなどの制限が生じます。
転倒を防ぐために、ふくらはぎを便座につけてから座る、床に足型をつけて座る位置の目印を作るなどの対策をおすすめします。
姿勢反射障害で前傾になるときは目線の高さに目印をつけて、それを見るようにすることも効果的です。

このように、パーキンソン病の症状から特にどのような動作が障害されやすいのかを考え、それを補えるような工夫を行ってみてください。
ほかのADLについても基本となる考え方は同じであり、振戦や固縮、動作の緩慢さによる機能障害や、姿勢反射障害に対応したアプローチをしていきましょう。

パーキンソン病のすくみ足を改善する2つの刺激とは?

病院や自宅での移動において、すくみ足が動作の妨げとなるケースは多く、実際のADLにも影響を及ぼします。
パーキンソン病の方ですくみ足や無動が起こるのは、補足運動野で随意運動時の内発的な運動プログラム生成が障害されているためと考えられており、外的刺激で手掛かりを与えることが効果的です。
「聴覚刺激」と「視覚刺激」は、どちらもパーキンソン病の方に対する介入方法としてよく用いられるものです。
ただ、どの刺激が効果的に作用するかは患者さんによって異なるため、試行錯誤しながら探ってみてください。

1.聴覚刺激を使ったアプローチ

音や掛け声、音楽などの聴覚的な刺激を活用する方法であり、パーキンソン病の方では「リズム」に合わせることですくみが解消されやすいです。
メトロノームのリズムや「いちに、いちに」などの声掛け、あるいは音楽のテンポなどに合わせて歩くことで、すくみ足が改善される方は少なくありません。

2.視覚刺激を使ったアプローチ

床にテープなどで引いた線や、床のタイル模様をまたぐようにして歩くとすくみ足に効果的ですが、これらはいずれも目から入力される視覚的な手掛かりを活用した方法です。
また、パーキンソン病の方の使用を想定した杖では、杖の下部から足でまたいで使うための棒が出てくるものもあります。
近年は足でまたぐための線をレーザーで映し出す杖や靴なども開発が進んでいます。

パーキンソン病のすくみ足に聴覚刺激や視覚刺激が効果的となるのは、内発的な随意運動の機構とは異なる、外発性の機構を介して運動が誘発されるためと考えられています。
ADLを妨げる要因がすくみ足にある場合は、これらのアプローチで対応してみましょう。

環境整備・外的刺激の活用も含めたサポートを

パーキンソン病の方のADLに対するアプローチでは、まずヤールの重症度分類で各ステージの特徴を理解しておき、機能障害の程度や姿勢反射障害の有無を確認します。
食事の自助具や着脱しやすい衣類の用意、目印の設置などの環境整備や、視覚刺激・聴覚刺激など外的刺激の活用も視野に入れ、できるADLを増やしていきましょう。

参考:
難病情報センター パーキンソン病(指定難病6)(2018年7月26日引用)
岡田洋平:パーキンソン病の理学療法 Up to date. 理学療法学42(8):755-756, 2015.(2018年7月26日引用)

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