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変形性膝関節症の痛みを緩和する運動は?ガイドラインからわかるお勧めの運動方法3選

変形性膝関節症の患者さんの痛みを緩和するために運動は高いエビデンスがあります。
しかし、運動の方法は多岐にわたり、効果のある運動を選択することは簡単ではありません。
そこで、おすすめの運動方法をガイドラインをふまえながらお伝えします。

変形性膝関節症のガイドラインからわかる!痛みの緩和に効果的な運動

日本理学療法士協会がまとめた「理学療法診療ガイドライン第1版(2011)」では、膝関節症の治療ごとに推奨グレードが定められています。
その中で、運動療法は痛みの緩和においても有益であるとされ、推奨グレードは最も高いAランクとなっています。
また、日本整形外科学会が作成した変形性膝関節症のガイドラインにおいても、運動の実施は推奨度は94%と高くなっており、最も重要な非薬物療法とされています。
「理学療法診療ガイドライン第1版(2011)」では、具体的な運動として6種類の方法が示されており、それぞれの推奨グレードは以下の通りになります。

運動内容 推奨グレード
筋力増強運動 A
有酸素運動 A
ストレッチング C
関節可動域運動 C
協調性運動 A
振動刺激療法 B

推奨グレードが最も高いAランクの運動は3種類あり、これらの運動を積極的に行うことが痛みの緩和に有効になります。

変形性膝関節症の痛みを緩和するために行いたい3つの運動方法

ガイドラインに示されている運動の中から、推奨グレードが最高レベルのAランクである、3種類の運動方法を紹介します。

●筋力増強運動

下肢の筋力増強運動は、変形性膝関節症における痛みの緩和に有効な運動療法の一つとして、複数の報告があります。
変形性膝関節症の代表的な運動方法としては、パテラセッティングを始めとする大腿四頭筋訓練があります。
Fransen Mらの報告では、大腿四頭筋訓練に限定した運動でも疼痛軽減の効果があるとされています。
しかし、大腿四頭筋訓練に限定しない運動のほうが有意な効果が見られるとも報告されており、運動は複数組み合わせて行うようにしましょう。
Jan MHらの報告では、負荷の高い運動を多く行う場合と少なく行う場合とでは、疼痛軽減の効果に大きな差は無いとしており、患者さんの状態に合わせて負荷量の調整が可能です。
また、運動の種類として、筋収縮の様式による違いを研究した報告もありますが、どの運動においても、疼痛緩和の効果に有意な差はなかったとされています。

●有酸素運動

筋力増強運動と同じ推奨度の運動が有酸素運動で、運動の種類としては歩行練習による介入結果が複数の報告でみられます。
Roddy Eらによると筋力増強運動と歩行練習の効果をくらべた結果、疼痛の緩和においては同じ程度の効果が認められたとしています。
歩行練習以外の運動としては、水中運動やヨガ、太極拳があり、運動の強さは疼痛の改善の良し悪しには影響を与えないと報告されています。
この結果から、有酸素運動は歩行練習や水中運動といった日頃の生活習慣に取り入れやすく、患者さんの行いやすい運動強度で取り組んでいただくことができるため、臨床で活用しやすい運動療法です。

●協調性運動

バランス運動や足指の巧緻性運動と変形性膝関節症との関連性についての報告があります。
特にバランス運動として、ステップ運動や片脚スクワットなどを行った場合、筋力増強運動と同じ程度、疼痛軽減の効果があったという報告があります。
また、筋力強化のみを行うよりも、バランス運動と併用したほうが有意に疼痛緩和の目安であるWOMACのスコアが改善したという報告があります。
そのため、筋力トレーニングなどのほかの運動に加えて実施することをおすすめします。

運動は自主トレじゃダメなの?セラピストによる指導が重要

運動が痛みの緩和に重要であっても、臨床では自主トレとして患者さんに行ってもらうことも少なくありません。
しかし、日本整形外科学会のガイドラインでは、運動療法を行う際に、理学療法士の介入を重視しています。
具体的には、運動について専門家による評価、指示、助言を受けることは推奨度86%として、有益なものであるとしています。
もちろん、自主トレとしてしっかり日頃から運動を行ってもらうことは重要です。
しかし、自主トレが十分な効果を発揮するためには、あくまでセラピストが個別に関わり、評価を行った結果、適切な運動方法を指示し、正確に運動を行えるようになるまで助言をする必要があるのです。

ガイドラインを積極活用して変形性膝関節症の治療効果を高めよう!

筋力トレーニングや有酸素運動といった運動は変形性膝関節症による痛みの緩和にとって、エビデンスレベルも高く、推奨される治療ですので積極的に実施していきましょう。
また、ガイドラインは運動の強度や運動の種類についても示されており、臨床ですぐ活用できます。
自主トレで済ませず、ガイドラインを駆使しながら、セラピストが積極的にリハビリを行いながら痛みを緩和させましょう。

参考:
変形性膝関節症 理学療法診療ガイドライン(2018年7月23日引用)
津村弘:変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版).日本内科学会雑誌106(1):75-83,2017.

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