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二重課題(デュアルタスク)のトレーニング例は?リハビリ室ですぐに使える訓練のアイデア3つ

実際の生活場面において「二重課題(デュアルタスク)」を遂行することが求められる場面も少なくありませんが、患者さんによってはこの能力が低下しているケースもあります。
今回は理学療法士や作業療法士として働く人のために、リハビリで使えるトレーニングの考え方と例をご紹介します。

リハビリ職が必ず知っておきたい二重課題(デュアルタスク)の考え方

歩行訓練のような定番のリハビリを、必要に応じて「二重課題(デュアルタスク)」にアレンジすることによって、介入のバリエーションは広がります。
まずは二重課題(デュアルタスク)の基本的な考え方について確認していきましょう。

●二重課題(デュアルタスク)とは?

二重課題(デュアルタスク)とは、2つの課題を同時に遂行することが求められる課題です。
英語表記に由来して、「dual-task」「デュアルタスク」と表されることもあります。
「〜しながら…をする」というように、2つの課題へ注意を向ける必要がありますが、この能力が低下している患者さんは少なくありません。
二重課題(デュアルタスク)を考えるときには、「会話をしながら車を運転する」という場面がしばしば取り上げられます。
この場合、会話に注意を向けることによって運転の精度が落ちるため、事故のリスクが高まることがよく知られています。
このように2つの課題を同時に遂行する力は、脳卒中や認知症、加齢などが原因となって低下することがあります

●なぜ二重課題(デュアルタスク)の評価・トレーニングが必要なのか?

リハビリ室での運動や動作に問題がなかったとしても、実際の生活場面においては多くの刺激を受け取ることになります。
たとえば、自宅で歩いているときに家族に声をかけられたり、障害物を避けながら移動したりすると、注意を向けるべき対象が増えるために転倒のリスクが高まることがあります。
二重課題(デュアルタスク)の能力が低下していることが原因で転倒リスクが高まっていると判断される場合、リハビリの中でトレーニングを行っていく必要があるのです。

リハビリで実践したい二重課題(デュアルタスク)のトレーニング例3つ

「運動」を主課題として、付加できる認知課題の例を3つ挙げていきます。
随意的に体を動かす時点で一つの課題にはなりますが、床歩行、トレッドミル歩行、椅子座位での足踏み、手拍子などから選択します。
患者さんのレベルや用いる認知課題の性質に応じて運動の内容は調整していきましょう。

1)「運動」+「言葉の想起」

「動物の名前を声に出しながら歩く」など、ある条件に従って言葉を想起しながら運動することは二重課題の簡便なトレーニング例です。
たとえば、トレッドミルで歩きながら、「犬、猫、あひる…」と名前を挙げていきますが、単純に歩くだけの場合とくらべて認知的負荷は大きくなります。
なお、設定するお題は、次のようなものから自由に選択することができます。

テーマ例 ●日本の苗字
●スポーツの名前
●「あ」で始まる言葉
●感情を表す言葉
●住んでいる都道府県の市町村 など

このようにお題のパターンを頭に入れておけば、特別な道具も必要でないため、二重課題(デュアルタスク)の要素を取り入れたことがないスタッフでも簡単に実践可能です。

2)「運動」+「計算」

立位や座位での運動に簡単な計算課題をプラスすることも手軽な方法です。
「2+7」「11−4」など暗算できる簡単な計算であっても、運動と組み合わせることによって認知的な負荷は高まります。
計算が難しい場合のトレーニング例には、リハビリスタッフが言った数字に1を足したものを声に出すという方法もあります。
このあたりも患者さんの能力に応じて段階付けを行っていきましょう。

3)「運動」+「Stroop Test」

Stroop Test(ストループテスト)とは、注意の切り替えを評価するスケールです。
このテストの要素を参考にして、二重課題(デュアルタスク)のトレーニングとすることもおすすめです。
たとえば、赤という漢字が青色で示されているとき、文字をそのまま読むのではなく、実際に使われている色の名前(=青)を読み上げていく、という具合でテストが行われます。
実際には、次のようなイメージで課題が提示されます。

文字をそのまま読んでしまいそうになりますが、実際に使われている色に沿って読み上げていくと、反応を抑制したり、注意を切り替えたりするプロセスが含まれます。
このような課題をパソコンで作って印刷しておけば、二重課題(デュアルタスク)のトレーニングに活用することができます。
1)や2)と比較して認知的な負荷が上がるため、転倒のリスクには十分配慮しながら実践しましょう。

二重課題(デュアルタスク)のトレーニングにはどんな効果があるの?

多くの研究報告で、二重課題(デュアルタスク)のトレーニング効果が検証されています。
山田ら(2008)は地域高齢者を二重課題(デュアルタスク)を行う群(dual-task群)、単一の課題を行う群(single-task群)に分けて介入しています。

single-task群 バランストレーニングのみ
dual-task群 バランストレーニング+計算や文章の音読

この訓練を12週間実施したところ、いずれの群も身体機能は向上しましたが、介入後6カ月間の転倒が前者でのみ減少(40.9%→4.5%)したと報告しています。
実際の生活場面における転倒予防を考える際には、「二重課題条件下」での訓練の提供が重要な要因となることが推察されます。
二重課題(デュアルタスク)のトレーニングでは用いる課題によって負荷もさまざまですが、少なくともこのような要素を加えることで、より生活に即した訓練となるといえます。

二重課題(デュアルタスク)に着目して、リハビリの幅を広げよう

患者さんの二重課題(デュアルタスク)を遂行する能力が低下しているとわかれば、普段のリハビリに少しの要素をプラスすることで、より応用的なトレーニングになります。
今回ご紹介した二重課題(デュアルタスク)のトレーニング例を参考に、リハビリの幅を広げてみてはいかがでしょうか?

参考:
山田実, 他:Dual-taskバランストレーニングには転倒予防効果があるのか?―地域在住高齢者における検討. 理学療法ジャーナル42(5): 439-445, 2008.(2018年8月2日引用)

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