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半側空間無視の検査方法まとめ!観察評価から机上検査まで解説します

半側空間無視の重症度は、観察評価と机上検査から探ることができます。
今回は、作業療法士などのリハビリスタッフが知っておきたい無視の検査法についてご紹介するので、日々の臨床業務の参考にしてみてください。

よくある反応をチェック!半側空間無視の行動観察でわかること

半側空間無視の患者さんを評価する際は、臨床場面での行動観察が欠かせません。
ここでは左半側空間無視の方で観察されやすい様子について挙げていくので、チェックしてみてください。

●顔や眼球が右側を向いている
●寝ているときに左側の手足の位置を気にしない
●左側にいる人に気づかない
●座っているときに体が左側に傾く
●曲がり角などで車いすや体が左側の壁にぶつかる
●左側に曲がるべきところを見つけられず直進する
●体の左側に対して無関心である
●車いすで左側のブレーキやフットレストの操作を忘れる
●食事のときにトレイや皿の左側にあるものを食べ残す
●着替えのときに左側の袖を通さない
●衣類の上下左右がわからなくなる
●髭剃り、整髪、歯磨きなどで左側だけ忘れる など

臨床的には、上記のような様子が多く観察されます。
基本的な反応としては自分を中心として左側の刺激へ注意を向けられなくなることが典型的です。
そのほかには、物体の左側を無視することも特徴的で、このような反応は「物体中心の無視」といわれています。
物体中心の無視が生じるために、右側に置かれているお皿の中でも左半分を残してしまったり、衣服の上下左右を認識しにくくなったりするのです。
単純に自分の左側に注意を向けられなくなるほか、ある物体の左側を認識することもできなくなると覚えておきましょう。
なお、右半球損傷では左半側空間無視(=左側の無視)、左半球損傷では右半側空間無視(=右側の無視)となります。
半側空間無視では、その多くが右半球損傷に伴う左無視となるため、基本として左無視のパターンを覚えておくことをおすすめします。

半側空間無視の患者さんに対する4つの机上検査とは

観察評価でもある程度の状態像はつかめますが、半側空間無視の状態をより定量的に理解するためには、机上検査を行うことをおすすめします。
日本でも標準化されている「BIT行動性無視検査日本版(以下、BIT)」で網羅されていますが、よく用いられる検査項目について知っておきましょう。

  1. 1.抹消試験(線分抹消試験・文字抹消試験・星印抹消試験)
  2. 2.線分二等分試験
  3. 3.模写試験
  4. 4.描画試験

1〜4の各検査を使って大まかな評価をする病院もありますが、BITでは明確な採点基準とともに、正常値と照らし合わせることが可能となります。
次に、「高次脳機能障害学(石合純夫著)」で紹介されている基準を参考にしながら、検査の概要をご紹介していきます。

●抹消試験

多くの短い線が描かれた検査用紙で線分に一つずつ印をつけていく「線分抹消試験」、ひらがなや★マークが配置された用紙で標的にのみ印をつけていく「文字抹消試験」「星印抹消試験」があります。
BITでは、次のようにカットオフ値が設定されています。

検査名 配点 カットオフ
線分抹消試験 36 34
文字抹消試験 40 34
星印抹消試験 54 51

線分抹消試験では36本の線がありますが、2本見落としがあった時点で異常と判断されます。
同様に、文字抹消試験では6個、星印抹消試験では3個の見落としがあるかどうかを判断の基準とします。
難易度が最も低い線分抹消試験でも、無視の程度が重い場合、用紙の最も右側の列にしか印をつけられない患者さんもいます
また、無視の程度が軽い患者さんでは、左下にいくほど見落としが多くなる傾向にあるので、見落とし方のパターンにも注目してみることをおすすめします。

●線分二等分試験

検査用紙に描かれた3本の線の中央だと思うところにそれぞれ印をつけてもらう検査です。
患者さんが印をつけると、印の位置が右側に偏位するケースが多いです。
BITでは204mmの線分を用いて、印の位置が中心から12.7mm以内であれば、1本につき3点が与えられます。
また、中心からの距離が遠いと減点になり、19.1mm以内ならば2点を与え、25.4mm以内なら1点となります。
患者さんの中には鉛筆などの物品を基準に中心を見積もろうとする方がいるので、目分量で行うように教示してください。

●模写試験

花の絵が描かれた手本を提示して、白紙に同じ花を書き写してもらう検査です。
花の絵を用いることは有名ですが、BITでは花のほかに星、立方体、図形の4種類を使います。
BITの基準では、手本通りに描けるかどうかで各1点または0点が与えられます。
左半側空間無視がある場合、絵の左側が欠落した状態になることが典型的ですが、多くの患者さんは「すべて描けた」と感じています。
患者さんによっては花びらの枚数を数えるなどして代償しようとする方もいますが、数えた枚数をぐるりと円になるように配置することは困難なケースが多いです。

●描画試験

大きな時計の文字盤を描くように教示する検査です。
左半側空間無視の患者さんでは、文字盤の数字が右半分しか描かれない、1〜12時まで描かれているものの右半分に密集している、などの反応が多く見受けられます。
先に12、3、6、9時の場所を描いて目印とすることで、無視があっても正しく描ける方もいるので、結果だけでなくプロセスについても確認してみてください。
BITを使う場合は、時計のほかに人と蝶の絵を描いてもらう検査もあるため、こちらの結果にも注目してみましょう。

もっと簡単にできる半側空間無視の検査って?

半側空間無視の患者さんが多くない施設では検査道具がないケースもありますし、急性期の患者さんでは鉛筆を持って検査が実施できないこともあります。
そのようなときは、簡易的な検査として30cm程度のひもの中央をつまむように教示して反応を探る方法も使えます。
このときに「正面にあるひもに気づかないが、右側に提示すると気づく」「中央よりも右をつまんでしまう」などの反応があれば、無視がある可能性が高くなります。
あくまでも簡易的な手法にはなりますが、状況によっては評価として有効活用できます。

また、評価を終えたあとの介入についてはこちらの記事(半側空間無視の対応で役立つ!看護・介護・リハビリスタッフがすぐに使えるアプローチの視点)からヒントを探ってみてください。

机上検査+観察評価の併用がポイント

半側空間無視の検査を行うと、リハビリのプログラムを考えたり、リハビリの効果を捉えたりするときに役立ちます。
ただ、検査で無視の症状がはっきりと現れていても、実際の生活場面では「慣れ」や「記憶」によって適応できる患者さんもいるので、冒頭でご紹介したように観察評価も非常に重要になります。
半側空間無視の患者さんには、机上検査と観察評価を併用して状態像をひも解いていきましょう。

参考:
前田真治:半側空間無視. 高次脳機能研究28(2):86-94, 2008.(2018年8月22日引用)
石合純夫:高次脳機能障害学 第1版. 医歯薬出版, 東京, 2010, pp.121-136.

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