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クリニック・治療院 OGメディック

  • 高木雪絵

    公開日: 2018年10月23日
  • リハビリ病院の悩み

発達障害の小・中学生に実施するソーシャルスキルトレーニングの方法と実際

発達障害のリハビリといえば、運動機能や感覚機能にアプローチすることが定番です。
しかし、行動面やコミュニケーション面に課題を抱える小・中学生もいるため、ソーシャルスキルトレーニングが必要となるケースがあります。
今回は、療育に携わるリハビリスタッフ向けに、ソーシャルスキルトレーニングの方法と実際についてお伝えしていきます。

ソーシャルスキル・トレーニング(SST)

ソーシャルスキルトレーニングって?

ソーシャルスキル・トレーニングとは

ソーシャルスキルトレーニングとは、社会で必要となる認知や行動のスキルを磨く訓練のことで、社会生活技能訓練と呼ばれています。
英語では「Social Skill Training」というため、その英語の頭文字をとって「SST」と略すこともあります。
ソーシャルスキルトレーニングは、社会で生活するための技能の習得を目指す方が受けることになりますが、うつ病などの精神科領域で使うケースもあれば、発達障害児に使うケースもあります。
たとえば、学校で友達を作りたいときに、初めて話す人にどう声をかければ良いのかなどは、自然とわかる人もいます。
しかし、発達障害の子どもをはじめ、一部の人は「どう対応するべきかわからない」と感じることがあります。
心の理論の障害などによって、「他者の感情や意図を読み取ることができない」「他者のジェスチャーや表情が意味することがわからない」という方も多いのです。
そんなときにはシチュエーションに応じてどんな言動をとるべきか知識を与えたり、実際に練習したりします。
実際のトレーニングは、次のような流れで進めていきます。

  1. 1.ウォーミングアップ
  2. 2.練習する課題を決定する
  3. 3.うまくできたことを褒める
  4. 4.改善点を探す
  5. 5.改善できたことを褒める
  6. 6.実際に生活の中でやってみる
  7. 7.次のトレーニングで報告する

このように、ある課題を適応的に遂行できたときに「褒める」という手段を使って、その行動を強化していきます。
実際の生活場面に近づけ、参加者間でうまれる相互作用を活用するために、ソーシャルスキルトレーニングは複数名が参加するグループで実施することが多いです。

発達障害の小学生・中学生に対するソーシャルトレーニングの方法

発達障害の小・中学生が対象のソーシャルスキルトレーニングでは、ゲームや遊びの要素を訓練に活用していくことも多くなります。
小学生や中学生のソーシャルスキルトレーニングでは、次のような方法が用いられています。

●集団でのゲームや遊び

小学生や中学生のソーシャルスキルトレーニング

発達障害の子どもが集団活動から学べることは数多くあります。
まず、ルールを守るという基本的なことから始まり、友達と順番を決める・作戦を立てるなどのやりとりを学ぶこともできます。
たとえば、「2人で順番を決めてください」と言われて、どうして良いかわからない子どもも、スタッフの支援を得ながらじゃんけんで決める・友達に先に決めてもらうなどのパターンを学習していけます。
その学習を生かして、次の機会に率先してアクションを起こすことができたときは、褒める作業を忘れないように注意しましょう。

●共同作業(物作りなど)

物作りなどの共同作業では、友達との役割分担や助け合いを学ぶことができます。
道具が足りずに困っている友達がいても、知らん顔をしていた子どもが、率先して「自分の分を使っていいよ」と言えるようになるなど、行動が変わっていくこともあります。
望ましい行動がとれたときは褒め、その行動を強化していくことで、学習を積み重ねることができます。
スタッフが「みんな道具を全部持っているか見てごらん」と声掛けするなど、気づきを促すような支援は必要となりますが、共同作業から学べることも多いのです。
グループ活動は司会進行だけでも大変なのですが、どうすれば気づきを促せるのか、常にスタッフが考えながら対応することがポイントです。

●ディベート

小学生や中学生のソーシャルスキル・トレーニング:ディベート

自分の意見を言語化して伝えたり、相手の意見を聞いたりする力も、大切なソーシャルスキルの一つです。
集団のレベルにもよりますが、「ペットを飼うなら犬か猫か」など簡単なお題を設定し、ディベートの練習をしてもらうことができます。
言いたいことが言えない場合は、考えを紙にメモして準備をしてから発言するだけでも良い練習になります。
そもそも人の前で緊張してしまう子どももいるので、人前で話すということ自体が練習になるケースもあります。
人によってディベートの練習を通して目指すことは変わるので、その子に合わせた課題設定となるように、難易度を調整しましょう。
自分の考えを言語化する練習を通して、人に意見や気持ちを伝える経験を積んでいくことができます。

●ロールプレイ

小学生や中学生のソーシャルスキルトレーニング:ロールプレイ

練習するシチュエーションを設定し、実際に役割を担って演技をすることで、どんなときにどう振る舞えば良いか学習していきます。
たとえば、「道に迷ったとき、誰かに話しかける」などのシーンを想定し、子どもやスタッフが役割を担います。
ロールプレイの注意点としては、ただ単に演技をして終わりではなく、そのあとの「振り返り」が大切となることが挙げられます。
この様子をビデオで記録して、参加した子どもとスタッフで振り返りの時間を設けると、より客観的に考えることができます。
自分の様子をビデオでみてみると、「こんな態度は変だな」「こうしたほうが良いな」と気がつく子どもも少なくありません。
一度目の試行で改善点があれば、それを意識してもう一度やってみるという流れで進めていくことで、適応的な行動パターンを学んでいけます。

上記のほかにも、ワークシートを使って机上で実施できる活動もあります。
例として、「自分の感情」について学びたいときは、感情の種類を挙げていったり、具体的なエピソードと感情の関係を確認したりすることもできます。
こうした活動を通して、コミュニケーション、他者との協働、感情の理解、問題解決などの力が養われていきます。

発達障害の小学生・中学生が抱える課題の実際と対応

発達障害の子どもに対するソーシャルスキルトレーニングとしてできる活動はいくつもありますが、子どもの年齢によってニーズや対応は変わってきます。
次に小学生・中学生のパターンに分け、特に生じやすい課題や対応を挙げていくので、臨床のヒントとしてみてください。

●小学生

小学生になると、友達とうまくコミュニケーションがとれずに、言いたいことが言えない、嫌だという気持ちを伝えられないなどの課題に直面する子どもがいます。
また、怒りをコントロールできずに手を出してしまう、人の気持ちが理解できないなどの課題がある場合も存在します。
低学年のうちは集団活動や遊びを通して学んでいくウエイトが多くなりますが、学年が上がってきたら、レベルに応じてワークシートやディベートにも取り組んでみてください。

●中学生

中学生以降になると、学校の友達との人間関係はより複雑になっていきます。
スマートフォンやパソコンを使って友達とやりとりを行う子どもも増えてきますが、その際に「どのようにメッセージを送れば良いかわからない」というニーズが生じる場合もあります。
また、学校生活でも口頭で説明されることが増えるのでメモをとる練習をしたり、自分の意見をより明確に発信しなければならなかったり、課題が徐々に高度になっていきます。
中学生のソーシャルスキルトレーニングでは、特に具体的なニーズを把握しながら、共同作業やディベート、ロールプレイ、ワークシートを使い分けていきましょう。

練習の成果が般化されているか評価しよう

発達障害の小・中学生に対するソーシャルスキルトレーニングでは、あるシチュエーションでとるべき行動について、学習や経験から学んでいくことができます。
実際に学んだことが日常生活に般化されたかどうか、定期的に評価を行って確認しながら、アプローチを続けてみてください。
親御さんから、家庭や学校でどのような変化があったか聞いてみることも参考になります。

参考:
内閣府 SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング).(2018年10月19日引用)

  • 執筆者

    高木雪絵

  • 作業療法士の資格取得後、介護老人保健施設で脳卒中や認知症の方のリハビリに従事。その後、病院にて外来リハビリを経験し、特に発達障害の子どもの療育に携わる。
    勉強会や学会等に足を運び、新しい知見を吸収しながら臨床業務に当たっていた。現在はフリーライターに転身し、医療や介護に関わる記事の執筆や取材等を中心に活動しています。
    保有資格:作業療法士、作業療法学修士

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