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クリニック・治療院 OGメディック

  • 高木雪絵

    公開日: 2018年12月28日
  • リハビリ病院の悩み

筋ジストロフィーに対する作業療法 ADLや作業活動に対する介入のヒントを解説

筋ジストロフィーの患者さんのリハビリは、どんな観点で進めていくのでしょうか?
今回は、筋ジストロフィーの中でも発生頻度が高い「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」に焦点を当て、リハビリの介入に役立つヒントをお伝えしていきます。
特に、作業療法士の立場でできるADLの訓練や心理面のフォローについて解説します。

筋ジストロフィーに対する作業療法

筋ジストロフィーとは?経過やリハビリの注意点を確認

どの疾患に対するリハビリを行うときでも、まずはその病気の特徴について理解しておくことが大切になります。
次にご紹介する疾患の特性をふまえながら、リハビリのプランや目標を検討してみてください。

●デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とは?

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とは?

筋ジストロフィーは、筋肉の壊死・変性を主体とする病気です。
特に発生率が高いDMDは、X連鎖の劣性遺伝によって生じる病気であり、男児に発症します。
通常、ジストロフィンというタンパク質が筋繊維を補強していますが、遺伝子の異常によって、このタンパク質がほぼ作られない状態になります。
筋肉は再生もしますが、破壊が上回ってしまうため、次第に筋力低下や関節拘縮が進んでいきます

●DMDの経過

幼児期に起立・歩行障害が生じ、就学中には座位で過ごす時間が増え、上肢を空間で保持することが難しくなります
筋ジストロフィーでは、基本的に大きな筋肉から小さな筋肉へ筋障害が進行していきます。
たとえば、下肢であれば大腿二頭筋や大腿四頭筋から、ハムストリングス、薄筋や縫工筋といった順番になります。
上肢でも同様ですが、手内筋の機能は比較的残存する傾向にあり、工夫次第で作業活動につながります。
呼吸筋群や心筋の破壊が進むと、呼吸不全や心不全につながり、それが死因となるケースが多いです。
かつては20歳を迎える前に死亡するケースが多かったですが、近年は医学の進歩によって寿命が伸び、なかには40代や50代まで存命する方もいます。

●DMDのリハビリにおける注意点

DMDのリハビリにおける注意点

筋肉の破壊や変形拘縮を悪化させるような無理な動作を避けることが基本であり、過用に注意する必要があります
特に、筋力が低下している場合に負荷を加えると、筋を損傷するリスクがあることは理解しておきましょう。
日常生活での運動量も考慮しながら、作業療法などの場面では、軽い負荷の作業活動を中心に用いていきます。
残存機能を生かすことで取り組めるADLや作業活動も増え、それが患者さんの自尊心を守ることにもつながります。
また、筋力低下が進行していくことに対する不安や落胆を伴う患者さんやご家族が多いため、心理面でのフォローも大切になります。

筋ジストロフィーに対する作業療法〜ADL・作業活動の支援〜

どのADL・作業活動でも、まずは実際の動作を観察して、作業分析を行うことで、患者さんが抱えるニーズが浮かび上がってきます。
どんな機能が残されているのか、どんな代償動作をしているか、よく観察した上で、次にご紹介する支援のポイントを参考にしてみてください。

●ADLの支援

●ADLの支援

作業療法でADLにアプローチするときは、「どんな工夫をすれば自分でできることが増えるのか」を考えながら、環境調整や動作指導に当たります。
次にADL支援の一例をご紹介するので、参考にしてみてください。

ADL アプローチの例
食事 ●机の高さを調整する。
●ターンテーブルに食器をのせて自分で回す。
●前腕の回内外が難しければ、浅い食器に。
●柄の長いスプーンで肘の屈曲を代償。
●非利き手で利き手を支えて高さを出す。
●BFOなどの上肢把持用装具を検討(肩のMMTが2以上)。
歯磨き ●非利き手で利き手を補助。
●頭部回旋で上肢の動きを代償。
●電動歯ブラシで負担を軽減。
移動 ●ジョイスティックコントローラでの車椅子操作。
●車椅子では手関節部に支持台を設置。

上記のように、上肢の小さな動きで実現できるADLは、自力で行えることも多いです。
基本となる考え方としては、水平・垂直方向へのリーチ動作を代償する工夫を検討することが挙げられます。
また、エアコンや照明、テレビなどのオン・オフは、各リモコンの赤外線信号を記録させる装置によって、自力で操作が可能となるケースもあります。
近年はスマートフォンのアプリで環境を制御できる機器(例:Nature Remo)も登場しており、筋ジストロフィーの方にとっては大変便利です。

Nature Remo

●作業活動の支援

筋ジストロフィーの方が、なにか打ち込める作業活動を持つことが、生活の張り合いにつながるケースも少なくありません。
環境調整を行う支援が多いですが、これも作業療法におけるアプローチの一つです。

活動 アプローチの例
読書・学習 ●長い棒でページをめくる。
●軽いボタンや呼吸気で操作できる自動ページめくり器を使う。
●タブレット端末で電子書籍を読む。
工作 ●バネで握力をサポートするハサミを使う。
描画 ●机上で手関節を支えるアームサポートを設置。
●パソコンやタブレット端末を活用する。
パソコン ●長い棒を鉛筆のように持ちキーボード入力を行う。
●ミニキーボードを使う。
●1つのスイッチでも複数操作ができるマウスの導入。
意思疎通 ●ハンズフリーの拡声器を使う。
●残存筋からスイッチを押しやすい方向を検討。
●スキャン走査を用いた文字入力を導入。

作業活動では上肢機能が求められますが、こうした工夫によって、できる作業活動の幅は広がっていきます。
上肢の負担や疲労が減るような環境調整を行っていきましょう。

筋ジストロフィーのリハビリでは心理面のフォローも大切

筋ジストロフィーのリハビリでは心理面のフォローも大切

進行性の疾患であるDMDなどの筋ジストロフィーに対する作業療法では、心理面へのフォローも欠かせません。
そして、フォローの一環として、なにか役割を持ってもらうことで、自己有能感を高めるという視点も重要となります。

●不安な気持ちに寄り添う姿勢を

患者さん・ご家族ともに、徐々に筋力が低下していくことに対して戸惑いを持っているため、心理面でのフォローも重要なポイントとなります。
できないことが増えていくと、どうしても機能や能力の喪失に対する不安も強くなっていくので、作業療法士などのリハビリ職は「共に解決する」という姿勢を持ちましょう
特に、ライフステージや機能が変わればニーズも変わるので、細やかにコミュニケーションをとりながら、ラポールを形成してください。

●残存機能を生かした「役割」を持ってもらう

喪失する能力が増えていくと、自尊心や自己有能感が低下してしまいがちです。
しかし、残存機能を使って「自分でできた」「うまくいった」という成功体験を得ることは、心の健康のためにも非常に大切です。
パソコンやタブレットでイラストを描き、周囲から賞賛された成功体験が、その後の希望につながる方もいます。
あるいは、作業所においてハサミなどの道具をつかった軽作業が仕事となり、毎日の生活に張り合いが生まれる方もいます。
心身の機能もそうですが、興味関心も十人十色なので、その方が役割を発揮できる活動を探していきましょう

作業療法士が知恵やアイデアをしぼろう!

筋ジストロフィーの根本治療には至っておらず、作業療法士などのリハビリ職がライフステージに応じたアプローチをすることは非常に重要となります。
環境調整などの工夫を行うことで、仕事や余暇活動を含め、毎日の暮らしを前向きに過ごせる方も少なくありません
どうすれば患者さんが生き生きと暮らせるのか、作業療法士が知恵やアイデアをしぼりながら介入していきましょう。

参考:
日本筋ジストロフィー協会 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy: DMD).(2018年12月26日引用)

  • 執筆者

    高木雪絵

  • 作業療法士の資格取得後、介護老人保健施設で脳卒中や認知症の方のリハビリに従事。その後、病院にて外来リハビリを経験し、特に発達障害の子どもの療育に携わる。
    勉強会や学会等に足を運び、新しい知見を吸収しながら臨床業務に当たっていた。現在はフリーライターに転身し、医療や介護に関わる記事の執筆や取材等を中心に活動しています。
    保有資格:作業療法士、作業療法学修士

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