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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2019年01月29日
  • リハビリ病院の悩み

専門職大学制度とは?臨床現場での指導はここが変わる!

2019年4月から新たな大学制度である専門職大学が開設されますが、その概要を知っているセラピストは少ないのではないでしょうか。
高度な専門職として教育される学生や若手セラピストに対して、臨床現場も時代の流れに沿った指導を展開していく必要があります。
本記事では、専門職大学についての概要と、今後求められる臨床現場での人材育成についてご紹介します。

専門職大学についての概要と、今後求められる臨床現場での人材育成について

専門職大学制度とは?

まずはじめに、専門職大学とはどういうものかについて解説します。

●専門学校と4年制大学のメリットを取り入れた大学

専門学校と4年制大学のメリットを取り入れた大学

専門職大学とは、専門知識や資格取得など専門学校の強みに加えて、一般教養や研究など4年制大学の強みを融合したものです。
設立の背景として、少子高齢化による労働生産性の低下や、変化の激しい社会に対応しなければならないことなどが挙げられます。
そのため、専門スキルに裏付けされた実践力に加え、新たなモノやサービスを生み出す豊かな想像力をもった人材を育成することが求められています。
教育課程は一般大学と同じ4年制(専門職短期大学は2または3年制)であり、卒業後は学士の資格が与えられます。

●設立条件は厳しい?リハビリ分野ではわずか1校のみ認可!

専門知識と豊かな創造性を育むことが重要であるため、設立までの条件は非常に厳しいものとなっています。
以下に設立条件の例を簡略化して挙げてみます。

  • ◯教員の4割以上は実務家(その専門職として5年程度の実践経験・研究業績がある)
  • ◯講師が教授・准教授となれる資格(博士・修士課程やそれに相当する研究実績)を有している
  • ◯臨床(現場)実習が20単位以上必要

文部科学大臣に開設の申請があった場合、大学設置・学校法人審議会にて認定基準に適合しているか審査が行われます。
条件を満たしていない場合は保留または不可となりますが、2019年4月開設の認可が得られたのは申請のあった17校のうちわずか3校(1校は専門職短期大学)です。
そのなかの1校に高知リハビリテーション専門職大学が挙げられ、リハビリ専門職の養成校としては第1号となりました。

各分野に特化した人材育成が目的

ここでは、専門職大学でどのような人材が育成されるのかについて解説します。

●専門知識・技術をもとに、新たな価値を創造できる人材

専門職大学制度設立の背景には、各専門職と社会ニーズのミスマッチが課題として挙げられます。
これまでの専門職は、一つの分野に特化した仕事を求められましたが、少子高齢化や労働人口の減少をはじめ、今後は社会問題に関係した対策が望まれます。
今後の社会において、異なる2つのものを組み合わせて新しい価値を創造する能力を持った人材が重要視されるでしょう。
そのためには、学生時代から専門分野に関する知識・技術に加え、ほかの産業界における情報について学ぶ必要があります。
専門職大学では、「自分の能力をほかの分野に生かすためには」、「社会のニーズに応えるためになにができるのか」など、新たな気づき・創造をできる人材が育成されます

●リハビリ専門職における育成例

従来の養成校と専門職大学における教育プログラムについての違いを以下に挙げてみます。

教育方針 臨床実習の目的 学ぶ内容 卒業後の進路
従来の養成校 専門知識や技術の獲得 検査・測定技術を習得 医学的知識や 治療技術 医療・介護施設
専門職大学 専門知識をもとに、新たな価値を創造する 多様性のある働き方を学ぶ 医学的知識・治療技術 ICT関係 予防医学 就労支援など 医療・介護施設一般企業・行政機関 研究機関など

今後の社会のニーズに応えるためには、専門知識・技術を直接提供するだけではなく、リハビリテーションの視点から他職種に指導するなど間接的な介入が必要です。
また、患者さんの情報伝達に用いられているサマリーや情報提供書をはじめ、リハビリメニューの共有などにICTを活用する地域も増えてきました。
専門学校では、基礎医学や治療技術を中心に国家試験合格まで最短距離で学ぶことができますが、上記のような多職種連携やICT関連に関して十分な教育がなされていません。
専門職大学では、知識・技術だけでなく、さまざまな職種や領域に関する理解を深め、今までとは異なる視点で医療・介護・福祉などさまざまな領域を切り開くセラピストが育成されるでしょう。

臨床現場では、若手の視野を広げるような指導が必要

新しい視点をもった人材が臨床に出てきた際の具体的な指導内容と、指導する際の注意点をご紹介します。

●自分の知識・技術を指導することが目的ではない

自分の知識・技術を指導することが目的ではない

従来の臨床実習では、検査・測定が正確にできること、臨床的推論にもとづいた評価ができることが望まれていました。
しかし、これらの実習形態は、専門的技術・知識を身に付けることに終始し、指導者たちが学んできたことを伝授することが目的になっています。
普段の臨床業務以外で、指導者が押さえておきたい指導内容を以下に挙げてみます。

  • ◯地域での会議等に参加する
  • ◯他職種と交流できる機会をつくる
  • ◯時事問題など社会の現状について理解しておく
  • ◯学生に答えを求めてみる

上記項目の要点は、学生に広い視野をもたせるためのフィールドが準備できているかということです。
「実習はつらくて当たり前」、「今の若者は忍耐が足りない」など、根性論を振りかざすだけの指導では、将来有望な若手が魅力を感じることはないでしょう。
少子高齢化で働き手が不足するなか、指導者としても優秀な人材を獲得するためには現場が変わる必要があることを肝に命じておきましょう

●社会のニーズに関して情報共有する場をつくる

視野を広げたいが、具体的にどうすればいいかわからないと悩む方もいるでしょう。
そのための1つの方法として、地域アセスメントについてご紹介します。

◯地域アセスメントとは

地域アセスメントとは、地域における社会資源の把握や、地域の生活ニーズを把握することです。
社会資源としては、医療・介護・福祉・教育・交通・産業・情報・娯楽など、生活に関係する項目が挙げられます。
これらのデータは、行政が公開している資料から把握できますが、実際の現場へ足を運ぶことも有用です。
地域の生活ニーズに関しては、臨床場面で患者さん(利用者さん)やご家族からの意見を参考にしたり、介護サービスの利用状況を調査することもよいでしょう。

◯情報収集した結果をもとに問題点を考える

情報収集した結果をもとに問題点を考える

地域アセスメントでは、前述したデータを集めて情報を得ることが目的ではありません。
たとえば、「少子高齢化が地域の健康に及ぼす影響」という大きなテーマをたてて、収集した情報をもとに課題を抽出することが重要です。
「◯◯地域は交通の便が悪く、医療機関がない」、「娯楽がないため、若い世帯が集まらない」という考察をしたとしましょう。
その場合、どうすればリハビリ専門職として在宅医療を推進できるのか、地域を活性化するためになにをするべきかを考えます。
そして、既存の枠組みにとらわれない介入方法や、ほかの産業との連携について具体案を考えていくことが重要です。

リハビリ職として新たな可能性を見いだすために

専門職大学制度は、専門職の知識・技術をもとに、幅広い分野で活躍できる人材を育成することを目的としています。
しかし、広い視野をもった学生が育っていくなか、臨床現場のスタッフも社会のニーズを理解し指導に臨まなければなりません。
治療技術はもちろん重要ですが、幅広く活躍できる人材を育成するためにも、まずは自分たちの価値観を変えることから始めてみてはいかがでしょうか。

参考:
文部科学省ホームページ.(2019年1月9日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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