リハビリ職の勉強会を充実させよう!ネタ探しのヒントもお伝えします
理学療法士、作業療法士などのリハビリ職には、常に学び続ける姿勢が欠かせません。
勤務先や所属している研究会などでは、勉強会を開催することも多いものです。
しかし、勉強会の内容が充実していないと「時間のムダ」に感じられてしまう場合もあります。
今回は、勉強会を充実したものにするヒントやネタ探しについてお伝えしていきます。
目次
勉強会のあり方は「ラーニングピラミッド」で整理
リハビリ職が行う勉強会のあり方は、「ラーニングピラミッド」というモデルを使うとわかりやすく整理できます。
ラーニングピラミッドとは、どんな学習が最も定着しやすいのか、その定着率を示した図のことです。
講義を受ける、本を読むなど、受身的な学習であればあるほど定着率は低くなります。
逆に、人に説明する、自ら体験する、グループ討論をするなど、能動的な要素が含まれれば学びを吸収しやすくなるのです。
学生時代に講義で聞いたことはあまり頭に残っていないけれど、実習や臨床で体験したり、自ら考えたりしたことは、定着しやすいという実感はあるでしょう。
これは、理学療法士や作業療法士の勉強会にも応用できます。
ラーニングピラミッドの概念を覚えておき、勉強会のあり方を見直してみてはいかがでしょうか。
リハビリ職にとっての勉強会〜良い勉強会・悪い勉強会を考える〜
全国各地の病院や施設などで、理学療法士や作業療法士の勉強会は行われています。
勉強会の存在が負担となり、「自分は行かない」というセラピストもいますが、具体的にどんな内容であれば参加したくなるような勉強会になるのでしょうか?
まずは、良い勉強会と悪い勉強会の特徴について、ラーニングピラミッドに当てはめながら考えていきましょう。
●悪い勉強会の特徴
勉強会でよくあるパターンは、担当スタッフが読んだ文献の情報をまとめ、ほかのスタッフに共有して終わるというものです。
情報をまとめるスタッフにとっては、人に伝える過程で少し勉強できる部分もありますが、一方的にまとめを聞くだけでは参加者は「ためになる」とは感じられません。
また、筆者が過去に参加した勉強会の中で、最も意義がないと感じられたのは、「本の読み合わせ」です。
数名で順番に本を音読していくというものでしたが、これは一人でもできることです。
この勉強会のスタイルを、ラーニングピラミッドに当てはめて整理すると、次のようになります。
勉強会の内容 | ラーニングピラミッド |
---|---|
文献情報の共有 | 「講義(5%)」 |
本の読み合わせ | 「読書(10%)」 |
話を聞くだけ、本を読むだけという受身的な学習では、なかなか知識が定着していかないことは想像に難くありません。
せっかく時間を割いて参加したのに、今後のリハビリ業務に生かせるヒントが得られなければ、勉強会に参加する意欲も薄れてしまいます。
もちろん、文献や本の内容について多角的に議論ができれば、該当するピラミッドの位置づけも変わってくるので、工夫が大切になります。
●良い勉強会の特徴
良い勉強会の定義は人によって違う部分もあるかもしれません。
しかし、「自分のスキルアップにつながった」「臨床の視点がプラスされた」など、収穫がある勉強会は「良い勉強会」といえます。
参加者が学びを得られる勉強会の内容について整理してみましょう。
勉強会の内容 | ラーニングピラミッド |
---|---|
動画を含めた症例報告 | 視聴覚(20%) |
実技・手技の実演を見る | デモンストレーション(30%) |
症例検討におけるディスカッション | グループ討議(50%) |
実技・手技の体験・練習 | 自ら体験する(75%) |
テーマに沿った講義の開催 | ほかの人に教える(90%) |
リハビリ職にとっては、症例報告を聞く機会は多いですが、患者さんやご家族の許可をとって、実際の様子がわかるように動画を用意してくれる方がいます。
スライドだけで羅列された情報よりも、視聴覚の面から情報を得て検討するほうが、学びにつながります。
また、実技や手技を見るのはとても勉強になることですが、実際にそれを体験・練習する機会があると、より学習の効果は高まります。
2人1組でペアになって練習する、教えてもらったことを自ら臨床でやってみるなど、体験が伴うとスキルを自分のものにしやすいです。
また、実技を伴わない場合でも、質問や意見が活発に出てきて討議ができる勉強会では、自分でも能動的に思考しますし、さまざまな人の知識や見解に触れることができます。
一方通行で受身的な勉強会よりも、議論が活発な勉強会では収穫が増えるということがわかります。
理学療法士・作業療法士が勉強会のネタ探しに使えるヒント
理学療法士や作業療法士の勉強会で、自分が発表する順番が近づいてくると、「ネタ探し」や「テーマ探し」に苦慮する方もいます。
勉強会に参加しているスタッフの層や、各勉強会で慣習的に取り入れているスタイルなどもありますが、ここではネタ・テーマ探しのヒントをお伝えします。
●参加した学会・研修会の情報を共有する
学会や研修会に参加する機会があれば、そこで得た知識を共有するという方法もあります。
ネタとしてはとてもわかりやすいですが、講義的な内容になってしまいやすいので、一方的に内容を紹介して終わりということがないようにしましょう。
学会や研修会の内容のシェアを行うだけでは、自分が答えられないこともありますが、質問や議論を活発にできる雰囲気作りを心掛けてみてください。
●臨床に役立つ論文を探す
理学療法士や作業療法士にとって、論文を読むという作業は大切です。
自分の興味があるテーマで論文を探し、勉強会のネタにすることもできます。
研究や論文では、報告によって違う見解が得られている場合もあるので、似たテーマで複数の文献を調査することが望ましいです。
情報を羅列して終わりではなく、そこからなにがいえるのか、臨床にどう生かせると思ったのか、自分なりの見解をまとめることが大切です。
「この論文の結果を参考に、リハビリでこんなプログラムを取り入れたいと考えた」など、具体的に提案して、ディスカッションを行いましょう。
また、同じ関心を持つスタッフで学会発表などを目標に研究を始めると、論文のレビューにおける議論も活発になり、学びが定着しやすくなります。
なお、文献抄読についてはこちらの記事(リハビリ分野で役立つ文献抄読のまとめ方とは?研究・臨床で役立つ基礎知識を解説)でもお伝えしています。実際の検索方法や読み解き方など具体的なノウハウを中心にご紹介しています。
●担当患者さんの症例検討
リハビリでは、評価や治療のエビデンスや方針が決まっていても、実際に行うプログラムについては「正解」がありません。
臨床の業務で「本当にこれが患者さんのためになるのだろうか」「ベテランのスタッフはどう考えるだろうか」といった疑問を抱く瞬間はあるものです。
症例検討では、特に「グループ討議」の要素を盛り込みやすいです。
グループ討議を活発にするためのコツとしては、自分が伝えたいメッセージを明確にすることが挙げられます。
あれもこれも情報を記載するのではなく、なにを討論したいのかを考え、そのために必要な情報に絞って展開してみてください。
●ベテランスタッフによる手技の実演と体験
ベテランのスタッフが何気なく行っている評価や治療にも、実は若手が学びたいエッセンスが多く詰まっているものです。
今さら聞けないような内容、これまで何気なくやってきた内容でも、ベテランに実演してもらうと視点が増えます。
コツを解説してもらいながら実演を見るだけでも勉強にはなりますが、その場で参加者が体験できる勉強会を設定してみましょう。
ラーニングピラミッドにおいても、「自ら体験する」が学習の定着に効果的であることが示されています。
みんなが参加したくなるような勉強会を作ろう!
リハビリ職の勉強会で、エネルギーばかりがとられ、収穫がないのであれば本末転倒です。
今回ご紹介した勉強会を充実させるための考え方や、ネタ探しのヒントを参考に、スタッフが参加したくなるような勉強会を作っていきましょう。
活発なやりとりがある勉強会ほど学びが定着しやすいため、ぜひそのような雰囲気作りをしてみてください。
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執筆者
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作業療法士の資格取得後、介護老人保健施設で脳卒中や認知症の方のリハビリに従事。その後、病院にて外来リハビリを経験し、特に発達障害の子どもの療育に携わる。
勉強会や学会等に足を運び、新しい知見を吸収しながら臨床業務に当たっていた。現在はフリーライターに転身し、医療や介護に関わる記事の執筆や取材等を中心に活動しています。
保有資格:作業療法士、作業療法学修士