整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

  • 高木雪絵

    公開日: 2019年02月26日
  • リハビリ病院の悩み

協調運動障害とは?リハビリ職が知っておきたい運動失調の評価方法

協調運動障害の患者さんに遭遇したとき、どの評価から行えば良いか迷ってしまう理学療法士・作業療法士もいることでしょう。
今回は、協調運動障害のなかでも、特に運動失調に焦点を当てて評価方法を解説していきます。
特別な機器を要さずに実施できる評価が多いため、ぜひ実践してみてください。

リハビリ職が知っておきたい運動失調の評価方法

リハビリ職が知っておきたい協調運動障害の基本情報

協調運動障害の評価を行うまえに、まずはどんな症状が生じるのか、基本的な事項を理解しておきましょう。

●協調運動障害とは?

協調運動障害とは?

「協調」とは、身体を構成する部位が相互に調整することであり、日常生活においてはさまざまな場面で協調運動を行っています。
協調運動障害としては、運動失調(ataxia)がよく知られており、運動麻痺や筋力低下が認められないにもかかわらず、円滑な動作ができなくなる状態を指します。
運動失調の症状には、次のようなものが挙げられます。

測定異常 目標まで手足を到達させようとすると、目標よりも手前で止まる(測定過小)。あるいは、目標を過ぎてしまう(測定過大)。
反復拮抗運動障害 前腕の回内外など、拮抗する運動の切り替えを円滑に行えない。
企図振戦 目標地点に近くなると振戦が生じ、手足が動く軌跡が増大する。
運動分解 関節の複合的な動きが行えず、関節運動が複数に分解される(例:肘屈曲→肩屈曲の順で動く)。
失調性歩行 歩行時や起立時にふらつく。身体が動揺するが、両足を開いてバランスを取りながら歩行する。

これらの症状によって、コップを持つ手が震えたり、文字がうまく書けなくなったりと、日常生活への影響も生じるようになります。

●協調運動障害を呈する疾患とは?

ひとことで協調運動といっても幅は広く、運動の不器用さを主体とする「発達性協調運動障害」という名称の障害も存在します。
ここでは、一般的にリハビリ病院で遭遇する機会の多い協調運動障害(運動失調)を呈する疾患を挙げます。

小脳性 小脳出血・梗塞、脊髄小脳変性症、小脳腫瘍
脊髄性 脊髄癆、脊髄腫瘍・脊椎症性脊髄症
前庭迷路性 メニエール病、前庭神経炎
大脳性 前頭葉・側頭葉・頭頂葉の障害
末梢神経性 ギランバレー症候群、アルコール性ニューロパチー、糖尿病性ニューロパチー

小脳性であれば深部感覚は障害されていませんが、眼球運動障害、構音障害(爆発性言語)などが見受けられ、大脳皮質の障害と鑑別が必要になります。
脊髄性の場合は脊髄後索が障害されるため、固有感覚など深部感覚のフィードバックが障害されることで失調症の症状が生じます。
また、前庭迷路性ならば運動失調はなく、起立時・歩行時の平衡機能障害が特徴となり、末梢神経性の場合には腱反射の低下、感覚障害がサインとなります。
このように、同じ協調運動障害や運動失調でも、どの部位で障害が起きるかによってメカニズムや症状、サインは変わってきます

リハビリで役立つ協調運動障害(運動失調)の評価方法

協調運動障害の評価では、問診・観察から得られる情報も多数あります。
ここでは、あわせて実施したい協調運動障害(運動失調)の評価方法をいくつかご紹介します。

●運動検査

まずは基本となる運動検査を上肢・下肢に対して行います。
運動失調の症状としてみられる測定障害、企図振戦、反復拮抗運動障害などが、どの運動でどれくらい生じるのか確認してみてください。

1.上肢編

指鼻試験 上肢を外転させ、示指で鼻に触れてもらう。開眼・閉眼条件で行い、差を比較。測定障害・企図振戦の程度を評価。
鼻指鼻試験 示指で自分の鼻と検査者の示指に交互に触れる。検査者の示指は顔の前に提示するが、位置やスピードを変えて追従の仕方を検査することも可。
指耳試験 示指で同側の耳に触れる。運動分解の状態を評価するため、肩・肘関節の動きが協調しているか確認。
膝打ち試験 座位をとり、膝上で回内・回外を行う。運動の切り替えがスムーズにできるか評価。

2.下肢編

踵叩打試験 背臥位になり、踵で対側の膝下を一定の速度で叩く。測定障害や企図振戦を評価。
踵膝試験 背臥位になり、踵で対側の膝に触れ、元に戻す動きを繰り返す。開眼・閉眼条件で行う。測定障害や運動の切り替えを評価。
足指−手指試験 背臥位になり、足指で検査者の指に触れる。測定障害、企図振戦を評価。

このような運動検査から、患者さんの運動失調の特徴や程度がみえてきます。
特に上肢の検査を行う場合には、測定障害や振戦の影響によって、顔や目に指が当たらないように配慮しましょう。
リハビリの経過とともに変化を追っていきたければ、患者さんの同意を得てビデオで運動を記録しておくと比較しやすいです。

●机上検査

机上検査では、主に上肢の協調運動障害を評価することになります。

協調性テスト
(上田)
「円の中心を狙って点を打つ」「線の切れ目をぬって曲線を書く」「小さな円の中に点を打ち込む」という3つの課題で構成される。
書字試験 氏名や住所などを書いてもらう。徐々に字の大きさが増す大字症が特徴。
線引きテスト 10cm離れた位置にある縦方向の平行線の間に、左から右に直線を書く。測定障害の状態が反映される。

上田敏氏の協調性テストはよく用いられていますが、検査用紙がない場合には線引きテストや書字試験から始めてみることもできます。
机上検査の結果はあとから変化を追う上でも役立つため、カルテなどに保管しておきましょう。

協調運動障害(運動失調)の方の姿勢分析・評価の視点

上肢と下肢だけでなく、体幹のふらつきやバランス機能の低下が見受けられることもあります。
その場合は観察評価が大切になりますが、次のような視点を持って対応してみてください。

●立位・歩行における姿勢の評価

立位をとると、両脚を広げて支持基底面を広く保ち、ワイドベースとなることが多いです。
両上肢を外転し、バランスをとるようにしながら姿勢を保ちます。
症状が重い患者さんでは全身の動揺が大きくなり、歩行するとよろめいてしまいます。
タンデム歩行のように支持基底面が狭くなる条件で評価を行うと、バランスを崩しやすくなります。
また、立位の状態で後ろにそり返る姿勢をとると、小脳の障害がある場合には膝が屈曲せずに後方にバランスを崩すサインが見受けられます。

●座位における姿勢の評価

座位においても、立位や歩行と同じように、足を広く開いてバランスを保ちながら座る患者さんがいます。
背もたれがある状態ではそれほど反応が見受けられなくても、浅く腰掛けると、手を椅子の肘掛などにつけて安定を保つ反応が生じる傾向にあります。
この時点で不安定になる患者さんもいますが、そうでなければ検査者が両脚を持ち上げ、身体の動揺や平衡機能を評価する方法も視野に入れてみましょう。

いずれの評価でも、患者さんがバランスを崩して転倒してしまうことのないよう、十分に注意してください。

さまざまな評価の結果を集約してリハビリ計画を立てよう

さまざまな評価の結果を集約してリハビリ計画を立てよう

協調運動障害(運動失調)の評価では、上肢や下肢の評価、姿勢の分析などを行うことができます。
基本的なADLの評価も大切ですが、やり方の決まった評価を行うことで、「測定障害が強い」「運動の切り替えが困難」などの特徴をとらえやすくなります
できるだけ用紙・数字・ビデオなどで評価の記録を残し、変化を追っていきましょう。

  • 執筆者

    高木雪絵

  • 作業療法士の資格取得後、介護老人保健施設で脳卒中や認知症の方のリハビリに従事。その後、病院にて外来リハビリを経験し、特に発達障害の子どもの療育に携わる。
    勉強会や学会等に足を運び、新しい知見を吸収しながら臨床業務に当たっていた。現在はフリーライターに転身し、医療や介護に関わる記事の執筆や取材等を中心に活動しています。
    保有資格:作業療法士、作業療法学修士

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)