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リハビリ病院の悩み

  • yukie

    公開日: 2019年02月28日

リハビリの実習指導で「パワハラ」をしていませんか?事例・対応のポイントを解説

理学療法士・作業療法士の養成校からくる実習生の指導も、セラピストにとっては大切な仕事のひとつです。
ただ、「自分はパワハラをしていない」と思っていても、無意識のうちにパワハラと見なされるような指導をしているかもしれません
この記事を読んで、自分の実習指導に対する姿勢を振り返ってみましょう。

無意識のうちにパワハラと見なされるような指導

リハビリ職が知っておくべきパワハラの内容

パワハラをしている人には、ほとんど自覚がないといわれています。
「自分に限ってパワハラなんてするはずがない」と思っていても、油断は禁物です。
具体的にどんな言動がパワハラになるのか、この機会に確認していきましょう。

●パワハラの種類と内容

パワハラの種類と内容

理学療法士や作業療法士として働いている方は、身近なところで「あれってパワハラだよね」と感じた経験があるのではないでしょうか。
ただ、リハビリを含む医療の世界では上下関係や年功序列の風潮もあるため、パワハラと判断する閾値が高くなっているケースも存在します。
一般的にどんな言動がパワハラと見なされるのか種類別に整理します。

1.身体的な攻撃 叩く、蹴るなどの暴行。軽い書類を投げつける場合も含まれる。
2.精神的な攻撃 「もうやめろ」「素人並みだ」などの侮辱、暴言。
3.人間関係からの切り離し 一人だけ別室に席を離す、一人だけイベントに呼ばない。
4.過大な要求 明らかに遂行不可能なことを強制する。
5.過少な要求 能力よりも著しく低い仕事を与える、もしくは仕事を与えない。
6.個の侵害 不必要に私生活や休みの過ごし方について聞く。スマートフォンをのぞき見する。

(参考:厚生労働省 あかるい職場応援団 パワハラの6類型

たとえば、スタッフ同士で忘年会などを催すときに、「実習生を呼ばない」という対応はパワハラとは見なされないでしょう。
しかし、実習生のお疲れ様会をするのに、一人だけ声をかけないとなれば、「人間関係からの切り離し」に該当する可能性はあります。
そうなれば、「ほかの実習生は呼ばれているのに、なぜ自分だけ除外されたのだろう」とショックを受けてしまうためです。
パワハラと見なされるかどうかはケースバイケースですが、「その人が精神的・肉体的に苦痛を感じる行為」=「パワハラ」と認識しておきましょう。

●リハビリ職が実習指導において注意したいこと

リハビリ職が実習指導において注意したいこと

身体的な攻撃は即座に問題として明らかになりやすいですが、それ以外のタイプについては、パワハラ被害者がもんもんとつらい思いを抱えている場合もあります。
理学療法士・作業療法士が実習指導を行う際には、特に「精神的な攻撃」や「過大な要求」に注意すべきといえます。
実習生は経験がないため、与えた課題をスムーズに行えないことは当然ですし、レポートの出来不出来についても個人によって差があります。

  • 「これまでなにを勉強してきたの?」
  • 「あなたには向いていないんじゃない?」
  • 「こんなこともわからず、セラピストになれるわけないよ」

こんな声かけをすると、精神的な苦痛を与えてしまう可能性があります。
そして、理学療法士や作業療法士の実習といえばレポートを書くことが大変ですが、セラピスト側から「これを考察して」「レクリエーションを企画して」と課題を与えることもあります。
デイリーレポートとケースレポートを作成するだけでも大変ですが、翌日のリハビリメニューを考え、さらに追加の課題をこなしていれば、就寝するのが深夜や早朝になってしまう実習生も多いです。
しかし、実習指導者が過剰に課題を与えると「過度な要求」に該当し、パワハラと見なされる可能性もあります。

理学療法士の実習生に対するパワハラ 賠償命令が出た事例も

理学療法士の実習生に対するパワハラ 賠償命令が出た事例も

理学療法士や作業療法士のうち、実習生の指導にあたる人には、ぜひ知っておいてもらいたい事例があります。
2013年、大阪府にある養成校に通っていた男性(当時39歳)が、実習先から行方がわからなくなり、神戸市内にある公園で自殺していました
この男性の実習指導を担当した理学療法士は、次のような対応をしていたといいます。

  • ●「帰れ」などと強い口調で叱責を繰り返していた
  • ●1週間の学習時間が平均約70時間に及んでいた
    (※厚生労働省の指導要領では45時間以内)

この学習時間は、実習先で過ごした時間だけでなく、自宅で書類作成などを行った時間も含まれています。
裁判官は、実習生に恐怖を与えるような発言をしたこと、学習時間が過剰であったのに睡眠時間の確認もしなかったことに言及し、「安全配慮義務違反」と見なしました。
2018年に男性の妻が養成校・クリニックの母体である医療法人に対して約6,100万円の損害賠償を求めた判決があり、全額の支払いが命じられました。
実習指導におけるパワハラによって養成校だけでなく、受け入れ機関にも損害賠償が命じられたことは珍しいケースです。
このケースでは一人の尊い命が失われてしまいましたが、悲しい思いをする人が増えないように、実習指導にあたる人は十分に配慮する必要があります。

実習指導でパワハラをしないための3つの心得

理学療法士や作業療法士が正しい知識を身につけ、実習生の安全に配慮できなければ、訴訟に発展するケースもあります。
無自覚のうちにパワハラをしてしまうことのないよう、リハビリ分野の実習指導者が心得ておきたいポイントをお伝えします。

1.「皆が通る道」という考えを捨てる

スポーツ業界では、相次いでパワハラ問題が浮上していますが、古くからの慣習としてやっていたことが、現在の基準ではパワハラと認定されるケースも多いです。
リハビリ業界でも同様に、「皆が通る道だから」「寝れないのは当たり前」という感覚でいるのは非常に危険です。
当たり前だと思っていることが、実はそうではないのだと気づくことが大切です。

2.睡眠時間が確保できているか確認を

実習生によって、課題をこなす能力には開きがあります。
もともと持っている知識量も違えば、レポートを書く速さにも違いがあるのです。
同じ課題をこなすのに、1時間かかる人もいれば、5時間かかる人もいるので、睡眠がほとんどとれていない実習生もいます。
いまの課題量で、睡眠がきちんと確保できているかを定期的に確認することも、実習生の安全に配慮するための義務といえます。

3.実習生を限界まで追い詰めない

筆者が実習生だった頃は、昼休みに考察内容を書き出し、移動中にレポートの構成を考え、夕食をとりながらレポートを書いていたため、21時には就寝できる状態になっていました。
実習をやり通す上では、心身の健康を保つことも大切な仕事と考えていたのです。
しかし、あるときスーパーバイザーから就寝時間を聞かれて正直に答えたところ、「じゃあ、まだ余裕があるよね」といってさらに多くの課題が与えられました。
いま振り返ると「過大な要求」に該当するパワハラだったと感じますが、実習指導者と実習生という力関係がある以上、当時は従うしかありませんでした。
実習生を限界まで追い詰めることで「レベルの高い指導をしている」と勘違いしてしまうのは危険です。
実習指導では、実習生の心身に関して安全を確保するように配慮する必要があるのです。

実習生の能力を引き出し、導くことを忘れずに!

リハビリ業界では、所定の経験年数があれば実習指導者になることができます。
しかし、どんな対応がパワハラになるのか理解しておらず、無意識のうちに苦痛を与えてしまっているようでは、良い指導者とはいえません。
叱責したり、やみくもに課題を与えるのではなく、「どうすればその人の能力を引き出せるのか」という視点で実習指導にあたってみてはいかがでしょうか。
これは患者さんに関わるときの視点とかけ離れていないはずで、理学療法士や作業療法士が得意とすることなので、ぜひ実習指導にも応用してみましょう!

ちなみに、2020年から実習指導者になるための要件が変更になるため、ご興味のある方はこちらの記事(2020年に臨床実習が変わる…!?PT・OTのバイザーが知っておくべき変更点とは)もご覧ください。

参考:
産経新聞 学習45時間→70時間…実習先でパワハラ自殺、学校側に全額6100万円賠償を命令 大阪地裁.(2019年2月22日引用)

  • yukie

    公開日: 2019年02月28日

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