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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村高弘

    公開日: 2019年02月27日
  • リハビリ病院の悩み

認定理学療法士が教えます!急性期での呼吸・循環の理解を深めるコツ

リハビリ専門職のなかで、「呼吸・循環などの内部障害は苦手」と感じる方もいるでしょう。
しかし、急性期病院で勤務する場合、内部障害をもった患者さんのリハビリに携わる機会も多くなります。
本記事では、呼吸・循環の障害をどうとらえるのか、リスク管理を具体的にどう考えればいいのかについて解説します。

呼吸・循環の障害をどうとらえるのか、リスク管理

急性期において呼吸・循環の評価は必須

急性期において呼吸・循環の評価は必須

急性期病院では、入院直後のためバイタルサインが安定していない患者さんも多いです。
まずはじめに、セラピストが呼吸・循環の評価を行う理由について考えてみます。

●併存症としての呼吸器・循環器疾患

急性期といえども、呼吸器・循環器のリハビリが積極的に取り入れられていない病院もあるでしょう。
しかし、「うちは整形外科や脳神経外科の術後リハビリが中心」と考えていても、呼吸・循環機能の評価は必要になります。
高齢者は複数の病気をかかえていることが多く、特に内部障害(心臓や肺など臓器の障害)がある場合は、リスク管理が重要になります。
以下に併存症として対応することが多い内部障害を挙げてみます。

  • ◯慢性心不全
  • ◯心房細動などの不整脈
  • ◯慢性腎疾患(透析導入も含む)
  • ◯慢性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)
  • ◯肺炎

整形外科疾患や脳血管疾患の患者さんのリハビリを担当する際にも、これらの併存症がある場合は呼吸・循環の評価は必須となります。

●セラピストは内部障害の評価が苦手?

リハビリ専門職の養成校では、最初の学年で解剖学・生理学を学び、その後は運動学や各種治療手技を学ぶのが一般的です。
また、リハビリが運動機能の再獲得を目的として始まったこともあり、セラピストには骨・筋肉・関節に関する知識が要求されます。
現在、養成校には3年制の専門学校もありますが、限られた時間で臨床に必要な知識を得るためには、運動機能に関する知識・技術が優先されます
その一方で、臨床現場においては、呼吸・循環を専門とするセラピストが増えてきましたが、ほかの分野にくらべると指導者数が少ない印象をうけます。

重要なのは酸素の運搬過程!ワッサーマンの歯車を理解しよう

肺や心臓の解剖・生理が苦手な場合、まずは酸素運搬の過程を理解することが大切です。
ここでは、呼吸・循環の評価を3つのSTEPに分けて解説します。

●STEP1「ワッサーマンの歯車で酸素運搬過程を理解する」

STEP1「ワッサーマンの歯車で酸素運搬過程を理解する」

呼吸・循環の生理学を学ぶ上で、「ワッサーマンの歯車」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。
これは、酸素運搬過程を模式図で表したもので、呼吸・循環の生理学を考える上での基本となります。
3つの歯車のうち、一番右は肺、真ん中は心臓、左は骨格筋(末梢の組織)を表しており、酸素は右から左へ、二酸化炭素は左から右へ運ばれます。
これらのどこに障害が起こっても、酸素の運搬に支障をきたすことになります。
つまり、血中の酸素飽和度が低いという結果が出た場合、どこの運搬過程が障害されているかを考えることが重要です。
「酸素の値が低いからリハビリは中止」が呼吸・循環の評価ではなく、その原因を考えることが評価なのです。

●STEP2「酸素不足の原因を明らかにしよう」

STEP1で酸素の運搬過程を理解し、どこが障害されているかを評価したあとは、その原因を考えます。
ここでは、一番右(肺)と真ん中(心臓)の歯車を中心に、それぞれが障害される原因について考えてみます。

◯肺が原因の場合

右の歯車では、肺に空気を吸い込む(換気)、肺胞から毛細血管に酸素が移動する(拡散)過程になります。
呼吸筋の筋力が低下している場合や、胸水(きょうすい)がたまって肺の拡張を妨げている場合は十分な換気ができません
また、肺水腫や間質性肺炎など、肺胞と毛細血管との間で酸素受け渡しにトラブルが生じると酸素の拡散が障害されます

◯心臓が原因の場合

真ん中の歯車では、肺胞から受け取った酸素を心臓が全身に送り出す過程になります。
心筋梗塞や不整脈などで、心臓のポンプ機能が低下している場合などは十分な酸素を末梢に送ることができません

●STEP3「リハビリで改善できるかを判断しよう」

STEP1〜2で酸素不足の原因が明らかになったあとは、リハビリで改善可能かを判断する必要があります。
肺が拡張できない状態であれば、体を起こして下葉(肺の下方)に空気が入るようにすれば、低酸素状態を改善できるかもしれません。
しかし、心不全や肺炎によって肺がうっ血している場合などでは、たまった水分を取り除かないと酸素の受け渡しができません。
前者の場合は、リハビリによって改善が可能、後者はリハビリより内科的治療が優先される状態と判断できます。
よって、内科的治療が優先される段階であれば、軽めのリハビリ(ベッド上での運動など)にして、心臓や肺の状態が良くなれば離床を進めるとよいでしょう。

リスク管理=血圧測定ではない!原因を考えることが大切

リスク管理=血圧測定ではない!原因を考えることが大切

低酸素と同様に、「血圧が低いからリハビリは中止」と安易に判断するのではなく、その原因を知ることが重要になります。
ここでは、血圧測定の結果をどう考察するかについて解説します。

●なぜ血圧が低いのかを考える

血圧とは血管の壁にかかる圧力を数値化したものであり、「心拍出量×末梢血管抵抗」で規定されます
そのため、心拍出量と末梢血管抵抗に影響をあたえる因子を理解することが重要になります。

◯心拍出量に影響をあたえる因子

心拍出量は、心臓の1回拍出量×心拍数によって決定されるため、これらのいずれかが障害されても拍出量が低下します。
心臓の収縮力が低下すると1回拍出量も低下するため、既往に心筋梗塞がある方では血圧は低い傾向にあります。
不整脈に関しては、徐脈(脈が遅い)の場合だけでなく頻脈(脈が速い)の場合でも心拍出量が低下します。
心房細動などで140〜160拍/分の頻脈となっている場合、心臓に十分な血液がたまっていないのに送り出す、いわば空うちの状態になります。

◯末梢血管抵抗に影響をあたえる因子

末梢血管抵抗とは、流れてくる血液に対して血管が抵抗する力を意味します。
交感神経の緊張(興奮状態など)や昇圧剤(血圧を上げる薬)の作用で血管抵抗が強くなることは一般的にも知られています。
その一方で、敗血症など重症な感染症の場合、末梢血管が拡張することによって血管抵抗が弱くなり、血圧が低下します

◯循環血液量の低下

脱水症などで体内の水分量が不足している場合、循環血液量も減少するため、血圧は低下します

●血圧が低いときにリハビリをどう進めるか

ここでは、低血圧の原因別にリハビリの進め方を考えてみます。

◯心機能低下や不整脈の場合

循環器疾患が原因の場合、まずは原疾患の治療が優先されるため、治療状況の確認が必要です。
治療によって不整脈がコントロールされているか、昇圧剤の流量が増えていないかなどを確認し、慎重に進めていくとよいでしょう。

◯臥床による起立性低血圧の場合

血圧反射の機能が低下しているため、ベッドアップや座位練習などから開始します。
座位で血圧が低下した場合でも、臥床すれば再度上昇するため、数回に分けて徐々にリハビリを進めます

◯重症感染症によって血管抵抗が減少している場合

感染症によって血圧低下をきたしている場合は、ノルアドレナリンなど強い昇圧剤が使用されます。
起立性低血圧とは違い、リハビリで血圧が改善することはないため、まずはベッドアップから開始します。
半日後または翌日に昇圧剤の容量が増えていなければ、下垂座位などへ進めるとよいでしょう。

◯脱水により循環血液量が減少している場合

血管内の水分量が少ないため、リハビリで血圧が改善することは期待できません。
脱水の場合は輸液により速やかに血圧が上昇するため、点滴が終了するのを待つとよいでしょう。

呼吸・循環の評価を習得して安心・安全なリハビリを

呼吸・循環機能を評価することは、急性期で働くセラピストにとって必須のスキルです。
また、これらを理解するためには、解剖学・生理学・薬理学など基礎医学に関する知識が重要になります。
「血圧が80mmHg以下だから中止」などの中止基準も大切ですが、「なぜ?」と考える習慣をつけることが自身のレベルアップにつながります。
リスク管理=起こり得る事象を予測するという考えをもって、安全なリハビリを提供できるよう心がけたいものです。

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