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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2019年03月29日
  • リハビリ病院の悩み

苦手意識を克服しよう!ICUでのリハビリでは病態の評価と多職種連携がカギ

急性期では、集中治療室でのリハビリを行っている病院も多く、早期離床の重要性が注目されています。
しかし、点滴ルートの管理や患者さんの状態が不安定などの理由で、ICUでのリハビリに苦手意識をもつ方も多いでしょう。
ICU専従セラピストである筆者の経験から、セラピストに必要な能力やリハビリの進め方についてご紹介します。

ICUでのリハビリでは病態の評価と多職種連携がカギ

まずは治療方針を理解することが大切

まずは治療方針を理解することが大切

ここでは、ICUと一般病棟でのリハビリで大きく異なる点について解説します。

●ICUでは全身状態の管理が最優先

一般的にリハビリといえば、関節可動域や筋力の改善をはじめ、日常生活動作能力の獲得を目標にします。
急性期においても例外ではなく、術後早期からリハビリを開始することが多いでしょう。
しかし、ICUにおいては、全身状態の管理(バイタルや治療に対する効果)が最優先であり、廃用症候群が進まないように可能な範囲でリハビリを行います。
そのため、全身状態の変化に応じてリハビリのメニューを変更することが重要になります。
「昨日は座位練習ができたから今日は立位練習」というように、日々ステップアップできるとは限りません。
その日の状態と可能なリハビリを見極めることが評価の第一歩であるといえるでしょう。

●なぜ鎮静剤を使用しているかを考えよう

ICUでは、人工呼吸器や持続透析などが必要となることも多く、患者さんは長時間の治療に苦痛を感じることもあります。
気管チューブが刺激となってムセかえったり、鼠径部(そけいぶ)にルートが接続されているため脚を動かせない状態はつらいものです。
鎮静剤を使用していない場合、不快感や興奮状態によって血圧や心拍が変動することもあり、治療がうまく進まないこともあります。
そのため、鎮静剤を使用して本人の苦痛をとることも重要な治療方法になります
そんな状態で離床を進めようとすると、医師や看護師から「今やっと穏やかに休んでいるのに、なにするの!」とお叱りを受けることになるでしょう。

知っておきたい病態、「敗血症」とは?

ここでは、ICUにおいて頻回に遭遇する敗血症の病態とリハビリの効果についてご紹介します。

●敗血症とは、感染症による全身の臓器障害

過去において敗血症や菌血症は「微生物が局所から侵入した状態」という概念が広まっていました。
しかし、1992年に米国集中治療医学会と米国胸部疾患学会により、「感染症にともなう全身炎症症候群(SIRS)」として定義されました。
その後、敗血症の病態に臓器障害の概念を含むべきであるという流れのなか、現在では敗血症は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされた状態」と認識されています。
つまり、敗血症は呼吸・循環機能の障害をはじめ、腎機能障害や肝機能障害をともなう病気であり、ICUでの全身管理が重要になります。

●敗血症に対するリハビリの効果は?

日本救急医学会が作成した日本版敗血症診療ガイドライン2016によると、「敗血症あるいは、集中治療患者においてPICS(集中治療後症候群)の予防に早期リハビリテーションを行うことを弱く推奨する(2C 効果は限定的であり推奨度は弱い)」とされています。
ただ、現実的な問題として敗血症では呼吸・循環動態が不安定のため、臥床期間が長くなりがちです。
また、高齢者の場合はサルコペニアなど加齢による身体機能の低下をはじめ、もともとのADLが低下している場合が多いです。
そのため、適切なリスク管理のもと早期からリハビリを行い、今後のエビデンスを構築していくことが望まれるでしょう。

●敗血症患者さんのリハビリを行う上での注意点

前述したように、敗血症では呼吸・循環動態だけではなく、腎臓や肝臓の機能も障害されます。
腎機能低下により透析治療が行われると、安静時でも血圧の低下をきたしやすくなります。
透析が開始になった直後は循環動態が安定しないことも多く、30分〜1時間様子をみてからリハビリ実施の可否を考えるようにしましょう。
また、臓器へのダメージが大きいときに過度な筋力トレーニングを行うと、臓器への血流低下を助長する可能性があります。
病態を評価する1つの指標として、敗血症の診断に用いられるSOFAスコアという評価法があります。
呼吸・循環・肝臓・腎臓・凝固系・中枢神経の6項目からなり、各項目0〜4点で点数をつけます。
SOFAスコアを日々の評価に取り入れることで、各臓器の状態を把握することができるでしょう。

ICUでは多職種間でのコミュニケーションが重要

ICUでは多職種でリハビリを行うことが重要ですが、ここではその理由について解説します。

●セラピスト一人では安全管理ができない

疾患別・個別リハビリという制度のためか、リハビリはセラピストと患者さんがマンツーマンで行うと認識している方もいるでしょう。
しかし、ICUにおいては多職種で共同することが安全で効果的なリハビリを行うことにつながります。
その理由は、ICUでは身体的なリスク管理をはじめ、周辺環境のリスク管理が重要になるからです。
以下に想定されるリスクをいくつか挙げてみます。

  • 離床時にバイタルが崩れる
  • 気管チューブの刺激によりバッキング(咳)が誘発される
  • ルート類が引っ張られて抜けそうになる

これらはセラピスト一人では対応できないことも多く、担当看護師さんなどと二人以上で管理することが望ましいです。

●担当看護師さんからホットな情報を得よう

ICUでは患者さんの全身状態が不安定であることが多く、薬剤の投与量や人工呼吸器の設定が適宜変更されます。
事前にカルテで確認していても、処置からカルテ記載までにはラグが生まれるため、最新情報が得られないことがあります。
その際は、担当看護師さんに現時点までの治療経過を確認するとよいでしょう。
安全管理のためだけでなく、情報交換を通じてコミュニケーションをとる機会にもなります。
「なにを聞いていいかわからない」、「話している内容がわからない」と思ったままでは、いつまでたっても苦手意識を克服できません。
また、看護師さんもリハビリの進め方について疑問を持っていることも多く、コミュニケーションをとることがお互いの専門性を認め合うことにもつながります

●セラピストの視点で伝えられること

一般病棟でのリハビリにも共通することですが、セラピストが訪室する時間は限られており、リハビリの効果を高めるには看護師さんの協力が不可欠です。
ICUにおいては、拘縮を予防するための関節可動域訓練や、呼吸機能改善にむけた座位練習が行われます。
その際、セラピストから担当看護師さんへ以下のポイントを伝えておくとよいでしょう。

  • 可動域制限がおこりやすい関節
  • 可動域訓練における注意点
  • ベッド上でのポジショニング
  • 適切な座位保持姿勢
  • ベッド上でできるトレーニング

また、これらの項目を口頭だけで伝えるのではなく、リハビリ場面において実際に見てもらうことが重要です。

関連記事:ICUで行うリハビリ!今注目を集める早期介入するべき3つの理由

急性期医療に特化したセラピストになろう

ICUにおけるリハビリでは、治療方針や全身状態を理解して、可能な限り廃用予防に努めることが重要です。
そのためには、養成校で学んだ知識量では圧倒的に不足しており、実際の臨床現場で習得していくことになるでしょう。
疾患の各論や各種ガイドライン、血液データの解釈や人工呼吸器のモニタリングなど学ぶべき内容は多いです。
今や、各セラピストにも専門性が求められる時代ですが、なかなか見つからないと悩む方もいるでしょう。
「集中治療はよくわからない」という苦手意識から、「習得すれば自分の武器になる」という気持ちで一歩踏み込んでみてはいかがでしょうか。

参考:
日本救急医学会:日本版敗血症診療ガイドライン2016.(2019年3月22日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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