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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2019年05月30日
  • リハビリ病院の悩み

急性期での予後予測はどうすればいい?まずは臨床と研究をつなげることからはじめよう

医療や介護現場において、リハビリ専門職には身体機能や日常生活動作能力を向上させることが望まれます。
しかし、目の前の患者さんがどこまで改善するか、自信をもって言えるリハビリ職は少ないのではないでしょうか。
急性期病院においてなぜ予後予測が必要なのか、そのために臨床研究を活用する重要性についてご紹介します。

急性期での予後予測

急性期では早期退院にむけた予後予測が重要

急性期では早期退院にむけた予後予測が重要

予後予測と聞くと、回復期病院でのゴール設定などをイメージする方も多いでしょう。
しかし、急性期の短い期間こそ、今後の見通しを多職種で共有することが重要です。

●今後の転院先を決めるのはリハビリ職?

急性期病院では、在院日数短縮が求められるため、長期間のリハビリを実施することが困難です。
そのため、日常生活活動(ADL)が自立しないまま退院となるケースも多く、その後のリハビリ継続が必須となります。
しかし、ADLが入院期間中にどこまで改善するのか、入院前の状態に戻るためにはどのくらいの期間が必要かなどを判断しなければなりません
その判断にもとづいて、早期から回復期病院への転院を打診したり、自宅退院にむけて介護保険の申請なども検討されます。
最終的には主治医が家族と相談して判断しますが、ADLに関する予後判断をリハビリ職に求められることもあります
リハビリ職の判断1つで、患者さんの今後の生活が大きく変わることもあるため、根拠をもって予後を述べることが重要です。

●どの段階で決定するか

回復期病院への転院などを考えた場合、打診から転院まで数週間を要することもありますが、急性期病院は在院日数を極力短くしなければなりません。
そのため、リハビリを開始して早々に予後予測をすることが必要になります。
「数日でわかるわけない」と思う方もいるでしょうが、実際の臨床現場では1週間程度で決めなければいけないこともあります。
特に、整形外科手術後の場合、「術後の経過がよければ抜糸後に退院可能」となる場合もあり、その場合はおおよそ2週間ほどです。
つまり、術後1週間の時点で今後のリハビリを含めた計画を決定しておく必要があります。
治療計画が月単位ではなく、週単位で進行するのが急性期の特徴ともいえるでしょう。

経験論ではダメ!他職種には根拠をもって予後を説明する

経験論ではダメ!他職種には根拠をもって予後を説明する

急性期では早期の予後予測が重要ですが、自身の経験論で判断することは避けるべきです。
ここでは、なぜ根拠をもった予後予測が必要なのか、そのためにはどうすればいいのかについて述べたいと思います。

●経験論では他職種に伝わらない

上司から、「昔はこの治療が主流だった」、「私の経験からいえば」という指導を受けたことはないでしょうか?
上司の経験を参考に治療を進めることはもちろん大切ですが、それを自分の意見として他職種に話すことは難しいでしょう。
たとえば医師の場合、1つの薬を処方するにしても、薬の基本情報に加えて臨床試験のデータなどを根拠にしています。
「上司から言われたのでこの薬を出しました」と説明する医師は絶対にいないでしょう。
科学的な根拠にもとづいた治療を行うのが医療であるならば、リハビリ専門職も然りです。
多職種が集まるカンファレンスで、「あと2週間くらいで歩けるようになると思います」と発言しても、「その根拠は?」と誰もが思うのではないでしょうか。
そのため、誰もが納得できる判断基準を持っておくことが、予後判断する上で重要になります。

●統計データなど客観的な数値を用いることが重要

誰もが共通認識できる、有用なツールの1つに「数字」が挙げられます。
リハビリ分野においても、各士会や関連団体が発行しているガイドラインを参考にする機会が増えてきました。
ガイドラインにおいては、対象の特性を偏らないように設定したランダム化試験(RCT)の信頼性が高く、RCTで高いエビデンスを得ている治療が有効とされます。
そのため、「ガイドラインによると、◯◯の治療が効果的です」や、「◯◯の場合、歩行の獲得は△△%と低くなります」など数値で説明することが大切です。
しかし、目の前の患者さんにすべてを当てはめることは難しく、年齢やもともとのADLをはじめ、地域の特性なども考慮する必要があります
研究対象の特性(年齢やADL)が明らかに違う場合や、回復期など長期的な追跡期間にもとづく結果の場合などは、急性期で当てはめることが難しくなります。
その場合、目の前の疑問を形にすること、つまり自身の臨床研究によって予後予測をすることが有効です。

臨床現場における研究テーマの設定例

臨床現場における研究テーマの設定例

ここでは、実際の臨床場面を想定した調査テーマの例を挙げてみます。

●テーマ1整形外科疾患「この人は歩けるようになるか?」

急性期において、多くのリハビリ職が大腿骨頸部骨折の患者さんを担当した経験があるでしょう。
受傷前の動作能力や認知機能など、患者さん一人ひとりの状態が異なるため、一概にリハビリのゴールを設定することは困難です。
また、糖尿病や慢性腎疾患など併存症も多く、術後のリハビリがスムーズに進行しないこともあります。
しかし、医師やご家族から「歩けるようになりますか?」と尋ねられた場合、根拠をもって答えなければなりません。
これらの問題を解決するためには、「大腿骨頸部骨折後の歩行獲得に関連する因子について」のようなテーマで調査することになります。
このテーマに沿って、以下のような項目との関係性を検証してみるとよいでしょう。

  • ◯年齢
  • ◯合併症
  • ◯認知機能
  • ◯もともとのADL
  • ◯術後のリハビリ経過

●テーマ2脳血管疾患「口から食事がとれるようになるか?」

脳血管疾患では、運動麻痺、感覚障害、動作能力をはじめ、嚥下機能障害などさまざまな症状を呈することが特徴です。
また、これらの機能障害が短期間で改善しない方も多く、長期的に経過をみることが必要になります。
しかし、急性期では在院日数短縮のため、早期からリハビリ病院への転院や自宅退院などの方針決定が求められます
筆者の経験上、介護をされるご家族からは、「トイレが自立できる」、「自分で食事ができる」ことを望まれることが多い印象を受けます。
意識障害や認知機能低下によりリハビリが進まず、最終的なゴールをどう設定すればいいか悩むリハビリ職も多いのではないでしょうか。
これらの問題に直面した場合、「脳血管疾患後の食事動作獲得に関連する因子について」というテーマで調査をすることが有用です。
食事動作の獲得に関連する項目としては、以下の項目を挙げてみます。

  • ◯年齢
  • ◯入院前のADL
  • ◯発症時における機能障害の程度
  • ◯意識障害の有無
  • ◯ある時点(発症から2週間後など)における改善度合い

これら2つのテーマはあくまで一例ですが、自身の疑問を解決するために臨床研究は非常に有用です。
単独施設における限られた調査結果であっても、経験論で語るよりも信頼性があることは間違いないでしょう。

関連記事:リハビリ専門職が臨床研究を始める前におさえておきたい8つの研究プロセス!(前編)

参考書や論文だけでなく、自分で検証することが大切

めには臨床研究が有用です。
「著名な先生の論文やガイドラインに書いてあるから」という考えは間違ってはいませんが、その内容がすべて当てはまるわけではありません。
「ほかの地域よりも高齢化が進んでいる」、「農業が盛んで元気な人が多い」など、地域によって患者さんの特性も異なります
根拠をもって予後予測をするためにも、まずは自身の疑問をかたちにすることから始めてみてはいかがでしょうか。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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