整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2019年07月31日
  • リハビリ病院の悩み

臨床研究シリーズ 横断研究で各データの関連性を明らかにしてみよう

リハビリ専門職として臨床業務を中心としている方でも、学会発表や臨床研究に関わる機会があります。
「研究って難しい」「興味はあるけど、どうすればいいかわからない」と最初の一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
まずは研究の基礎となる研究デザインの種類と、その中の1つである横断研究についてご紹介します。

横断研究で各データの関連性を明らかにしてみよう

「前向き、後ろ向きってなに?」研究デザインの分類を理解しよう

専門書や論文などを読んでいて、前向き研究や後ろ向き研究などのワードを一度は見たことがあるでしょう。
まずは、研究デザインの分類について理解することから始めてみましょう。

●研究デザインは介入研究と観察研究に分類される

ここでは、研究デザインを大きく2つにわけて、その特徴を解説します。

◯治療効果の判定などに用いる「介入研究」

介入研究とは、その名のとおり介入したことによる影響を客観的に示すことを目的としています。
治療薬の効果判定やトレーニング効果の判定などに用いられることが多いです。
リハビリの分野で考えると、「この徒手的な治療手技を行うことで疼痛が改善するか」などが挙げられるでしょう。
医療の分野では、これら介入研究の結果が蓄積されてエビデンスが構築されていくことになります。
しかし、治療をするしないで患者さんをわけることは、提供サービスが不平等であるという観点から、倫理的にNGとなるため注意が必要です。
介入研究においては、介入内容を誰が知っているかによって、ブラインド試験、ダブルブラインド試験などに分類されます。
また、群間の振り分けをランダムに行う場合は、ランダム化試験(RCT)と呼ばれます。

●観察研究は「過去」「現在」「未来」のどこを見るかで種類が異なる

介入研究は、その効果の信憑性を高めるためには綿密な研究デザインが不可欠であり、研究に対する準備期間も長くなります。
いっぽうの観察研究とは、ある特定の時期を対象として、結果と要因の関係性を明らかにするために実施されることが多いです。
以下にわかりやすく表にまとめてみました。

見る時期 難易度 研究の質
ケース・コントロール研究 現在の結果と過去の要因 (後ろ向き) 普通 普通
横断研究 現在の結果と要因 低い 低い
コホート研究 現在の要因と未来の結果 (前向き) 高い やや高い

研究の質に関しては、あくまでも出てきた結果の有用性として差異を記載しているため、どの研究も大切なことに変わりはありません。

関連記事:急性期での予後予測はどうすればいい?まずは臨床と研究をつなげることからはじめよう

初心者でもできる?横断研究で臨床の課題を見つけよう

前項でまとめたとおり、横断研究の研究デザインは比較的作成しやすいです。
ここでは、横断研究におけるデザイン作成までの流れや、メリットやデメリットについて考えてみます。

●臨床で疑問を感じることは、研究の入り口に立つということ

「上司からの指示」、「業績を残したい」など、研究をはじめる動機は人それぞれですが、一番大切なのは「疑問を解決したい」という探究心ではないでしょうか。
「もしかして◯◯と△△は関係しているんじゃないか?」というような、臨床場面で感じた疑問を形にするのが臨床研究のはじまりです。
横断研究では、現在あるデータをもとに関連性を調査することができるため、研究デザイン作成から研究結果までの期間が比較的短くなります
例として、カルテ上にある年齢、採血データや手術様式などと、現在評価したADLの関連性などをすぐに調べることができるでしょう。
ただし、興味本位で患者さんのカルテを閲覧するのではなく、事前に倫理委員会の承認を受けるなどの手続きを忘れないように注意しましょう。

●横断研究には因果関係が不明という弱点がある

横断研究は手軽に始めることができますが、この研究デザインには弱点もあります。
それは、データを時系列で見られないため、各項目ごとの因果関係がわかりにくいという点です。
たとえば、歩行能力と膝の筋力に正の相関関係があったとしても、よく歩くから筋力が強いのか、筋力が強いからよく歩けるのかはわかりません。
この場合、「歩行能力が高い群は膝の筋力が強い」という関連性までしか結論づけることはできません。
そのため、ある母集団の有病率を把握するなど、いわゆる実態調査として用いられることがほとんどです。

●横断研究の結果から次の研究デザインを考える

前述したように、横断研究で有病率やある種の傾向などが判明した場合、次のステップにつなげることが重要です。
有病率の場合であれば、その先に起こるイベントの有無を調査したり(コホート研究)、過去にさかのぼって2群間の違いを探したり(ケース・コントロール研究)することができます。
そのため、横断研究の目的は、疑問を客観的データ(数値)として明確化することであるといえるでしょう。

横断研究の具体例をご紹介

ここでは、横断研究における具体的な研究デザインについてご紹介します。
既存のデータから分析する方法や、アンケートなど実際に調査を行う例などが挙げられます。

●具体例1「心筋梗塞患者における閉塞性動脈硬化症の合併率について」

本調査の研究デザインを以下にまとめてみます。

◯研究目的

心筋梗塞は動脈硬化を主因とする疾患であり、動脈硬化による影響はほかの血管にも影響をあたえている。
本調査では、心筋梗塞患者における閉塞性動脈硬化症の合併率や、その他の患者特性を明らかにし、より効果的な運動指導について検討することを目的とする。

◯対象

当院の外来心臓リハビリに通院している心筋梗塞患者15名を対象とする。

◯方法

対象患者の診療録から合併症の有無、年齢、6分間歩行距離などの項目を調査する。

◯結果

閉塞性動脈硬化症を合併している心筋梗塞患者は全体の40%であり、合併していない群とくらべると平均年齢が有意に高かった。
しかし、合併の有無と6分間歩行距離には有意差が見られなかった。

この調査では、高齢の心筋梗塞患者さんでは閉塞性動脈硬化症を合併する割合が高いが、両群の6分間歩行距離に有意差はないという結果がわかりました。
この結果をうけて、この2群における今後のイベント(脳梗塞や心筋梗塞)の発症率を調査(コホート研究)することもできます。
また、6分間歩行に代わるほかの評価法で活動量を評価するなど、運用の変更につなげることもできるでしょう。

●具体例2「リハビリ科スタッフのストレスに関するアンケート調査」

本調査に関するデザインを簡単にまとめると以下のようになります。

◯研究目的

スタッフの健康管理を考える上で、普段の業務におけるストレスマネジメントは重要である。
本調査では、スタッフの有休取得率やストレスの有無などについてアンケートを行い、その実態を調査することを目的とする。

◯対象

リハビリ科に所属するスタッフ20名を対象とする。

◯方法

スタッフ全員にアンケート用紙を配布し、記入後は回収ボックスへ投函する。
匿名性が保たれるよう、アンケートは無記名かつ、すべての質問項目は選択による回答方法とする。

◯結果

職場でストレスを感じると回答したスタッフは全体の60%であり、その中でも経験年数5年以上のスタッフで有意に高かった。
また、仕事にやりがいを感じると回答したスタッフは、ストレスを感じないと回答している傾向にあった。

この調査では、経験年数が長いスタッフのほうがストレスを感じやすいこと、仕事にやりがいを感じるとストレスを感じにくいであろうという結論となりました。
しかし、回答したスタッフのそれまでの体験や職歴などが反映されておらず、年齢ややりがい以外の関連要因を明らかにすることはできません
そのため、「仕事にストレスを抱えているか否か」という結果をもとに、その要因を分析するためのケース・コントロール研究につなげるといいかもしれません。

研究は臨床の質や患者さんの満足度アップにつながる

研究全般にいえることですが、データを解析して統計学的な証明をすることが目的ではありません。
その目的は、自分自身の疑問を解決することや、今後の課題を発見することです。
「当たり前なこと」と思っていても、実際に客観的な数値として表すことが重要であり、まずは疑問を形にすることが大切です。
臨床研究は、セラピストとしての実績をつくるだけでなく、臨床の質や患者さんの満足度をアップすることにつながります
研究に対する苦手意識を克服するためにも、まずは身の回りの疑問をテーマにして、実態調査などの横断研究デザインを考えてみてはいかがでしょうか。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)