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クリニック・治療院 OGメディック

  • 蔵本雄二

    公開日: 2019年07月31日
  • リハビリ病院の悩み

認知症のリハビリが苦⼿な理学療法⼠は必⾒!評価のポイントや介入方法を紹介します

理学療法士は認知症に関する教育を学校で学ぶ機会がそれほど多くありません。
しかし、臨床では認知症の患者さんと関わる機会は多く、新卒や経験の浅いスタッフは対応方法に困惑することが少なくありません。
そこで、認知症の患者さんへ介入する上で、知っておきたい評価のポイントや具体的な介入方法について紹介します。

認知症の患者さんへ介入する上で、知っておきたい評価のポイントや具体的な介入方法

認知症の患者さんと信頼関係を作ろう!具体的な方法を紹介

認知症の患者さんは病識が欠如していることが少なくなく、理学療法士が評価や運動療法などをしようとしても、意欲が低かったり、拒否したりすることが少なくありません。
認知症が重度でも、「快」・「不快」といった情動に関わる部分は残りやすいため、リハ職の関わりが不快になってしまうと、うまく介入をすることができなくなってしまいます。
そのため、認知症の患者さんと関わる場合は、初めに以下のようなポイントを押さえて、信頼関係を構築することが重要です。

●パーソン・センタード・ケアを理解する

認知症のケアで基本とされている「パーソン・センタード・ケア」は、認知症の患者さんを一人の人間として尊重し、気持ちや視点に寄り添ってケアをするという考え方です。
意欲低下や拒否を問題行動として、一方的に説得したり、抑え込もうとしたりせずに、「なぜ、そのような行動に至っているのか」と、患者さんの世界に入っていこうとする視点で関わることが必要です。
筆者も新人の頃、リハビリ拒否のある患者さんに、「リハビリしないと良くなりませんよ」などと無理にリハビリをさせようとして、患者さんの思いや気持ちに寄り添わない対応をして失敗したことがあります。
しかし、介入の前に、なぜリハビリを拒否をするのか、思いを傾聴したり、気持ちに寄り添うことで信頼関係の構築につながり、スムーズな介入につながります。

●疾患別の特徴を把握する

認知症は脳の損傷部位による疾患が原因で起こる症状の総称です。
そのため、アルツハイマー病や脳血管障害、レビー小体や前頭側頭葉の障害といった損傷部位によって、大きく症状が異なります。
そのような知識を踏まえることで、経験が浅くても、症状の理解を客観的にすることができ、その後の介入がしやすくなります。
細かい疾患別の特徴は別記事(一括りは危険!認知症の「病名」を確認し、対応方法を導きだそう)で紹介していますので、参考にしてみましょう。

●非言語コミュニケーションを意識する

理学療法士は専門的な視点から、患者さんに病状や障害について解説することが得意です。
そして、新人の頃は先輩に「専門知識がない場合でもわかりやすく説明するように」と指導を受けます。
しかし、認知症の患者さんは、自分が病気や障害であること自体を認識しにくいため、いくら言葉で論理的に説明したとしても、理解できなかったり、不快感を覚えてしまいます。
そこで、非言語コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)が重要になります。
パーソン・センタード・ケアの視点から、患者さんの気持ちに寄り添い、思いを傾聴しながら、表情や目線、距離などに注意することで患者さんの安心できる環境を作り出すことが大切です。
非言語コミュニケーションの具体的な活用例については、別記事(ケアの中のノンバーバルコミュニケーション~良い関係を築くための活用法)で詳しく紹介しています。

評価をする際の注意点と工夫

理学療法士は身体機能の低下に対して、MMTによる筋力評価やROMの測定による関節可動域の評価を実施します。
しかし、評価が何を意味するのか理解できなかったり、指示が伝わりにくかったりする患者さんに対しては、評価の信頼性は低く、患者さんを混乱させる場合もあります。
そこで、評価をする際に配慮するポイントや工夫を紹介します。

●動作の中で身体機能を把握しよう

積極的に生活現場に携わっていき、動作の中で身体機能を評価することが重要です。
たとえば、リハビリに対する意欲が低く、声をかけても離床してもらえなくては、どこまで動ける筋力があるのかわかりません。
しかし、食事やトイレなど生活の現場で、さりげなく声をかけて、動きを観察すれば、実際に動作を行うために必要な身体機能があるかどうか評価できます。
徘徊していても、それに一緒に寄り添いながら歩くことで、歩行の評価ができます。
そのように、生活の一面に積極的に介入することは、認知症の患者さんに近い距離で接することができ、評価だけでなく信頼関係の構築にもつながります。

●主観的障害体験を評価する

理学療法士はエビデンスに基づいて、客観的な視点で障害や動作を評価することが得意です。
もちろん、認知症の患者さんにとっても重要で、健康状態や心身機能、活動だけでなく、ICFの理念のもとで、参加や環境、個人因子を含めた全人的評価をする必要があります。
しかし、認知症の患者さんには、個々人で異なる、主観的な障害体験を理解しようとする視点が重要になります。
とりわけ、BPSDの出現には、この主観的障害体験と関連があるとされています。
自分自身の変化や周囲との関係性や環境の変化など感じ、そこから漠然と不安や情けなさといった感情が湧き出します。
そのような気持ちをリハ職がしっかりと把握することで、介入の際に考慮しながら接するヒントを得ることができます。

●介護者からの聞き取りも重要

認知症の患者さんは環境によって、出現するBPSDやできるADLが異なる場合が少なくありません。
理学療法士が介入する場面では、取り繕ったり、集中したりして、普段している以上の能力を発揮する場合もあります。
しかし、実際の生活場面で実施できていなければ、正確な評価ができているとは言えません。
そこで、家族や他職種など理学療法士が見られない場面を把握できる介護者と連携して、必要な動作を観察してもらい、詳しく状況を聞きとることが重要です。

運動を実施する上での具体的な対応方法

認知症の患者さんに運動を実施する場合は、指示が伝わりにくかったり、BPSDが出現したりするため、対応に以下のような工夫が必要です。

●成功体験で「リハビリ=快い」という感情を引き出す

運動を実施する場合、理学療法の効果を追い求めるがあまり、少し難しい課題を設定しがちです。
しかし、日頃から多くのことを喪失する体験をしている認知症の患者さんにとって、介入時の失敗体験は、想像以上に不快な体験として心に残ります。
結果として、「リハビリ=不快」といった感情になり、リハビリ意欲の低下や拒否につながります。
そこで、出来るだけ成功体験を繰り返すことができるよう工夫をして、「リハビリ=快い」といった感情を引き出せるようにすることが重要です。
具体的な介入の工夫は別記事(リハビリのやる気を引き出すために PT・OT が気をつけたいポイント)で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

●生活リズムへの介入も心がける

理学療法士が認知症患者さんに関わるのは、生活に必要な動作の改善はもちろん、有酸素運動を中心とした認知機能の維持向上といった目的があげられます。
しかし、それらに匹敵するくらい重要なことは、生活リズムを整えて、生活を活性化させることです。
認知症の患者さんが、昼夜逆転をしていてなかなか理学療法士として介入ができない経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
そのような場合は、体内時計を整え、生活リズムを戻すことが非常に重要になります。
理学療法士として、以下のようなポイントを考慮して関わるようにしましょう。

1.日光の当たる明るい場所で運動をする

太陽光にしっかりと当たることで、体内時計がリセットされ、睡眠に入りやすくなります。

2.午後から夕方に運動をする

夕方前に運動して体温を上昇させることで、就寝前の体温低下を促して入眠しやすくします。

3.痛みを緩和する対応をする(過度な運動をしない)

痛みは睡眠を妨げる1つの要因です。
しっかりストレッチをしたり、痛みを引き起こすような過度の運動をしないようにしたりするなど、痛みに注意して運動をしましょう。

これらの工夫とともに、多職種で連携して、規則正しい食事や就寝環境の調整、刺激物を避けるなどの対応を行いましょう。

認知症の患者さんと積極的に関わって経験を積もう

理学療法の介入時に、拒否をされたり、大きな声で怒られたりすると、認知症の患者さんに対して苦手意識を持つこともあるかもしれません。
しかし、認知症の患者さんにとって、そのような態度をとるのには理由があり、理学療法士として介入をする前に、一人の支援者としてその気持ちを把握することが必要です。
一人ひとり丁寧に対応していくうちに、認知症の患者さんに対する意識も変わってきます。
まずは、今回ご紹介したポイントを参考にしながら、積極的に認知症の患者さんと関わりを持ってみましょう。
もし、不安な場合は理学療法士の先輩や認知症に対する対応に慣れている介護福祉士などの他職種の指導を仰ぐことも1つの方法です。

  • 執筆者

    蔵本雄二

  • 整形外科クリニックや介護保険施設などで理学療法として従事してきました。
    現在は県下でも有名な地域包括ケアシステムを実践している法人で理学療法士として勤務しています。
    そのため、施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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