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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2019年08月28日
  • リハビリ病院の悩み

循環器病に関する新たな法案が成立!今後リハビリ職に求められる役割とは?

循環器を専門にしていないセラピストでも、心臓リハビリというワードを聞いたことのある方は多いでしょう。
昨年2018年12月に、脳卒中・循環器病対策基本法が成立し、今後は国を挙げて循環器病への対策を行っていくことになりました。
本記事では、新たな法に関する概要と、今後の高齢社会においてリハビリ職に求められる役割について考えてみます。

スキルアップと相談できる仲間づくりを

新たな法律、循環器病対策基本法とは?

ここではまず、循環器対策基本法の概要について解説します。

●設立の背景と目的は?

この新法律が成立した背景は、心疾患や脳卒中などのいわゆる循環器系に関する疾患が日本人の死亡原因や介護を要する原因として重要視されてきたことです。
これらの疾患は、高血圧や糖尿病などをはじめ、喫煙や運動不足などいわゆる生活習慣病が基盤になることが多く、一次予防や二次予防が重要になります。
そのためにも、国や地方公共団体が各地域にあった方針をたて、急性期から在宅まで切れ目なく質の高いサービスを提供できる体制をつくらなければいけません
条文には、国および地方自治体が果たす役割や、医療・福祉に従事するスタッフが果たすべき役割などが明記されています。
以下にその要点をご紹介します。

  • ◯循環器病を発症した人の迅速な受け入れや、リハビリテーションを含む医療を、居住する地域にかかわらず行われなければいけない
  • ◯地方公共団体は、その地域の特性に応じた施策を策定し実施する
  • ◯保険、医療または福祉に従事するものは、循環器病の予防等に寄与するように努め、良質なサービスを提供しなければいけない

国や地方公共団体が大まかな方針を決定し、医療や福祉に従事するものは循環器病の治療や予防にむけた良質なサービスを提供することが求められます

●医療スタッフに課せられた使命

医療スタッフに課せられた使命

具体的には、以下のような取り組みが必要となるでしょう。

  • ◯循環器病に精通したスタッフの育成
    地域でスタッフを育成できるセラピスト、つまり循環器分野におけるスペシャリストが必要になります
    リハビリ職では、循環器の認定理学療法士や心臓リハビリテーション指導士の資格を有していることが望ましいでしょう。
  • ◯疾病予防にむけた住民への啓発活動
    医療や福祉分野におけるスペシャリストたちは、市民公開講座や健康フォーラムなどを通じて、危険因子の管理方法などについて伝える必要があります。
    また、初期蘇生手技(BLS)およびAEDの使用方法などについて理解を深めていくことも重要です。
  • ◯情報共有
    リハビリサマリーを例に挙げると、急性期病院が記載している専門的な内容が介護分野のスタッフに通じるか、情報を正確に共有できるかどうかが大切です。
    「地域循環器サマリー(または手帳)」などを作成し、多職種が理解できる共通言語をつくること、そしてお互いの顔が見える関係づくりが必要といえるでしょう。
    現在では、地域◯◯ネットなどのように、ICTを活用したツールも有用です。

循環器疾患のリハビリに関係する資格の取得状況

ここでは、循環器に関係する資格の取得状況と、新たな資格についてご紹介したいと思います。

●実はメジャー?認定理学療法士の専門領域で、循環器は第5位!

日本理学療法協会ホームページに公表されているデータでは、2019年7月1日時点で会員数は123,138人、その中で認定理学療法士を取得しているのは8721人(延べ)です。
以下は、認定理学療法士の取得領域別トップ5になります。

第1位 脳卒中 2,203人(25.2%)
第2位 運動器 2,015人(23.1%)
第3位 呼吸器 882人(10.1%)
第4位 地域理学療法 789人(9%)
第5位 循環器 670人(7.6%)

絶対数としては少ないですが、循環器は23領域あるなかでの5位にランクインしているため、決してマイナーな分野ではないといえるでしょう

●着実に増えている心臓リハビリテーション指導士

心臓リハビリテーション指導士は、心臓リハビリのプロフェッショナルであり、近年取得者数は増加傾向にあります。
2019年度の第20回認定試験では、697名の指導士が誕生し、全国での取得者数は5862名になりました。
認定理学療法士と心臓リハビリテーション指導士の両資格を所持している方も多いですが、毎年600名前後の有資格者が誕生しています

●心不全ケアのスペシャリスト、「心不全療養指導士」が誕生

心不全療養指導士とは、日本循環器学会が新設した資格制度であり、2020年度に第1回認定試験が行われます。
受験資格は、日本循環器学会の会員または準会員であり、看護師、保健師、理学療法士など、対面での指導に携わるスタッフとされています
この新資格は、急性期から回復期、維持期までシームレスな診療体制が構築され、開業医、訪問看護、訪問リハビリなど在宅医療に関わる職種の連携強化が望まれています。
学会に入会してからの年数、現職の経験年数など募集要項は明らかになっていませんが、気になる方は学会ホームページをチェックしておくとよいでしょう。

循環器疾患を地域全体でケアするために解決すべき課題

循環器疾患を受け入れる体制が不十分

地域で循環器疾患のスペシャリストを育成することは重要ですが、医療機関以外のセラピストや、介護分野の職種における理解度はどうなっているのでしょうか。

●地域リハならぬ「地域心臓リハ」、その認知度は低い?

筆者が実施した循環器疾患に関するアンケート調査の結果を以下にご紹介します。

  • ◯概要

    滋賀県内における循環器疾患患者のリハビリに関する実態調査

  • ◯対象
    1. 1)滋賀県内で心臓リハビリテーションを実施している8施設
    2. 2)滋賀県内の老人保健施設、通所リハビリ、訪問リハビリ(訪問看護)事業所131施設
    3. 3)滋賀県内の居宅介護支援事業所456施設
  • ◯結果

    回収率 54.7%
    以下にいくつかの回答内容をご紹介します。

    1. 1)医療機関(心臓リハビリ実施者)
      院外を対象に、心臓リハビリの普及にむけた活動を実施しているかの問いに対して、50%が「いいえ」と回答した。
      その理由で最も多かったのが、「臨床業務が多忙である」という回答内容であった。
    2. 2)リハビリ事業所(セラピスト)
      循環器疾患のリハビリに関して疑問をもっているかという問いに対して、79%が「はい」と回答した。
      また、経験6年以下の若手セラピストと7年以上の中堅セラピストの間で、その割合に差がみられなかった。
    3. 3)居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)
      循環器疾患利用者のケアマネジメントに十分な理解が得られているかという問いに対して、81%が「いいえ」と回答した。
      「はい」と回答したケアマネジャーにおける元職の内訳は、看護師、管理栄養士、薬剤師など医療職で多く、介護福祉士や社会福祉士などでは低い傾向にあった。

医療機関の在院日数短縮と高齢化率上昇により、今後は地域で循環器疾患の方を支えていくことが求められます。
本調査は滋賀県に限局したものですが、この調査結果からは、地域での受け入れ体制が十分に整っていないと解釈できるでしょう。

●住民や介護職の方への啓発活動が重要

医療機関のスタッフで、研修会や情報交換を

筆者は循環器疾患のリハビリを専門としているため、他院のセラピストや介護職の方からリスク管理についての相談を受けることがあります。
たとえば、「訪問に行ったときにどういう点を評価すればいいか」や、「同居している家族にどう指導すればいいかわからない」などが挙げられます。
地域で働くセラピストをはじめ、介護分野のスタッフが循環器疾患について重点的に学ぶ機会は少ないでしょう。
そのため、まずは地域の中心となる医療機関のスタッフなどが研修会や情報交換会などを開催し、知識の共有や顔の見える関係づくりが大切です。
「地域包括ケアシステム」の図が示すように、循環器疾患も地域全体でケアできるような基盤づくりが求められています。

地域包括ケアシステム

自身のスキルアップと地域でのつながりが大切!

循環器病対策基本法の成立により、各都道府県において循環器疾患の予防や人材育成に焦点が当てられるでしょう。
しかし、地域の実情としては、循環器疾患に対する理解度も不十分であり、まずは多職種が連携できる体制づくりが必要になります。
特に、急性期病院における治療状況やリスク管理に関する情報は重要であり、まずは連携の中心となるスペシャリストの育成が望まれます。
循環器関連資格の取得や地域での研修会などを通じて、まずは自身のスキルアップや相談できる仲間づくりから取り組んでみてはいかがでしょうか。

あわせて読みたい:
心リハ指導士取得の難易度は高い?合格にむけた勉強法をご紹介します

参考:
特定非営利活動法人 日本心臓リハビリテーション学会ホームページ.
http://www.jacr.jp/web/jacrreha/system/(2019年8月26日引用)
公益社団法人 日本理学療法士協会ホームページ.
http://www.japanpt.or.jp/about/enterprise/lifelonglearning/about/(2019年8月26日引用)
滋賀県ホームページ.
https://www.pref.shiga.lg.jp/rehabili/jyouhou/tyousa/103858.html(2019年8月27日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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