整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2019年08月30日
  • リハビリ病院の悩み

臨床研究シリーズ ケース・コントロール研究で因果関係を調べよう

臨床研究では、介入研究や観察研究、前向きや後ろ向きなどさまざまなワードが出てくるため難しい印象を受けることがあるでしょう。
しかし、学会発表や論文執筆などを目標とする場合、研究デザイン作成に関する基本知識は必須となります。
本記事では、リハビリ専門職が取り組みやすいケース・コントロール研究について、その特徴や具体的な活用法をご紹介します。

関連記事:
臨床研究シリーズ 横断研究で各データの関連性を明らかにしてみよう

リハビリ専門職が取り組みやすいケース・コントロール研究

ケース・コントロール研究の特徴を理解しよう

ケース・コントロール研究

まずは、ケース・コントロール研究の特徴や、実施する際の注意点などについて解説します。

●ケース・コントロール研究は後ろ向きの観察研究

ケース・コントロール研究では、ケースは病気になった群、コントロール群は病気になっていない群と考えます。
2つの群において、過去の要因が病気の有無にどう関係しているのかを明らかにすることが目的になります。
この研究では過去の情報収集とデータ分析が中心になるため、研究デザインの分類としては後ろ向きの観察研究になります。

●ケース・コントロール研究の難易度は低い?

ケース・コントロール研究では、ある有害事象の有無を結果として、過去のデータとの牽連性を見つける作業が中心です。
対象者の割り付けが終われば、あとは自分たちのペースで研究を進めることができるため、時間的な制約は少ないといえるでしょう。
また、データ収集の途中で「やっぱり別の項目を見てみよう」など、あとから軌道修正しやすいことも特徴です。
これらの点から、ケース・コントロール研究の難易度は低めであり、初めての臨床研究でも取り組みやすいといえます

●バイアスの発生に注意しよう!

過去のデータを比較する作業をする際に、注意しなければいけない点もあります。
たとえば、ある関連因子を比較したい場合、過去のカルテ記事から情報収集する必要があります。
その際、「認知機能検査の結果で◯◯点以下を認知症有りとする」という明確な判断基準があるとよいですが、「確か◯◯だったはず」など調査者の記憶を頼りにしてはいけません。
調査者は、自分の仮説をもとに研究デザインを考えているため、「こうあってほしい」という私的な考えが入る可能性があります
また、コントロール群(病気をしていない群)を選ぶ場合に、ケース群(病気をしている群)と明らかに特性が違う集団から選択すると結果に大きく影響します。
調査におけるこれらの偏りはバイアスと呼ばれるもので、特にケース・コントロール研究では発生しやすいため注意が必要です。

ケース・コントロール研究では因果関係を明らかにできる

ここでは、ケース・コントロール研究でどのように因果関係を明らかにするかについて解説します。

●病気とその要因の関連性を見つける

多くの場合、ケース・コントロール研究では、「◯◯の発生には何が関係しているのか?」という疑問からスタートします。
そのため、実際に目星をつけた項目について関連性を確認することや、関連性が不明な項目を分析することになります。
既存のデータから分析する手法の1つに横断研究が挙げられますが、この研究デザインでは「どちらが原因なのか」についてはわかりません。
ケース・コントロールの場合、結果と要因の時間軸が異なるため、「◯◯があったから病気になった」と因果関係を明らかにすることができます

●ロジスティック回帰分析とオッズ比で関連の強さが明らかになる

ロジスティック回帰分析とオッズ比で関連性を見極めよう

統計処理において、ある2つ以上の関連性を明らかにしたい場合は相関関係(相関係数)が簡便に用いられます。
しかし、因果関係を調べる場合、単なる関連性だけでは不十分であり、どの程度影響しているのかを調べることが重要です。
また、比較したい要因同士が影響し合っている(交絡因子)ことも考えられるため、1対1の関連ではなく、複数の要因があるなかでの分析が必要です。
ケース・コントロール研究で用いられる統計手法にロジスティック回帰分析という手法があります。
この手法を用いると、有害事象の発生に対して、どの要因がどの程度関係しているかを明らかにすることができます。
その関係性の程度はオッズ比とよばれる数字で表すことができ、オッズ比の高い要因の関連性が強いといえます。

あなたの疑問がカタチになる!具体的な活用例をご紹介します

ケース・コントロール研究をどう進めていくか、筆者が実際に調査した内容を例に挙げてみます。

●臨床的な疑問「心大血管術後の抑うつ発症に関連する因子は?」

心疾患は抑うつ発症のリスクが高いといわれていますが、筆者も日々の臨床のなかで実際に感じていました。
抑うつ発症により、自宅へ帰る意欲がなくなる、リハビリが進まなくなる、食事が取れなくなるなどさまざまな障害が出てくることが問題になっていました。
そこで筆者らは、「抑うつ発症に関係している因子はなにか?」、「その因子を明らかにすれば、事前に対策ができるのではないか?」と考えました。
患者さんと接するなかで、「家に帰ってもしたいことがない」、「どうせテレビの番をするだけだから」など、楽しみを見出せない方が多い印象を受けました。
そのため筆者らは、「入院前の社会的役割や趣味がない方は、術後に抑うつ状態を発症しやすい」と仮説を立てました。

●研究デザインと結果の解釈

研究デザインと結果の解釈

筆者らが作成したおおまかな研究デザインや分析方法は以下のとおりです。

◯対象

心臓外科で手術を受けた患者さん

◯方法

退院時にHADS(不安や抑うつのスクリーニング検査)を評価し、抑うつ項目で7点以上を抑うつ有り群、6点以下を抑うつ無し群と設定した。
関連要因には、年齢、術後合併症の有無、社会的役割の有無、趣味の有無などを設定した。

◯統計解析

抑うつの有り無しを目的変数、上記の関連要因を説明変数とし、ロジスティック回帰分析を実施した。

◯結果

各説明変数のオッズ比は、趣味の有無9.79 、術後合併症の有無8.62、社会的役割2.59の順であった。

これらの結果をもとに、筆者らは術後の抑うつ発症を防ぐ方法について多職種で考えました。
合併症に関しては、万全の体制で手術に臨んでも起こることがあるため、趣味の有無や社会的な役割について介入することにしました。
入院時の問診の際に、趣味や今後の抱負を患者さんと医療スタッフでしっかりと共有し、術前から「元気になったら◯◯をしましょうね」と目標設定を明確にするよう心がけました。
この例からわかるように、ケース・コントロール研究は臨床の疑問を解決する一助となります。
「多分こうだろう」と推定していることを、客観的な数値をもって証明できることが臨床研究の醍醐味ではないでしょうか。

臨床研究の目的は、より良い医療サービスを提供すること

日々の業務が忙しいから時間が取れない、統計が難しいから自分にはできないと臨床研究を諦めてはいないでしょうか?
研究デザインの作成や倫理委員会の審査、データ分析など慣れないことが多くて尻込みするかもしれませんが、その努力は患者さんの生活に結び付くものです。
そのなかでも、ケース・コントロール研究は比較的取り組みやすい領域です。
臨床で生じたあなたの疑問はまさにダイヤの原石です。
少しの勇気を出して磨き上げてみませんか?

あわせて読みたい:
リハビリ専門職が臨床研究を始める前におさえておきたい8つの研究プロセス!(前編)
臨床研究シリーズ 横断研究で各データの関連性を明らかにしてみよう

参考:
奥村高弘,他:趣味や社会的役割の喪失は心大血管術後の抑うつ発症に関与する.心臓リハビリテーション 23(suppl):176,2017.

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)