PTの質を高めよう!PTを取り巻く環境と筆者が考える解決方法
晴れて国家試験に合格し、理学療法士(PT)として働きだしたものの、その後の歩み方は人それぞれです。
勉強やスキルアップ、さらなる資格取得に励む方もいれば、特になにもせずに時間を過ごす方もいます。
PTの質の低下が叫ばれているなか、現場はどう取り組んでいけばいいのでしょうか?
PT現状と筆者が考える解決策を述べていきます。
PTが勉強しない理由!それは実生活と仕事とのバランスにあった
PTのなかに勉強をしない人がいる理由はどこにあるのでしょうか。
その理由を収入や残業など就労のあり方に着目して解説していきます。
●平均年収の低下はPTにも
平均年収があがらない現在、PTの年収もあがりません。
理由は社会保障費の削減により診療報酬がなかなか上昇しないためです。
病院の収入は診療報酬によって左右され、診療報酬が上がらなくなれば、収入アップにもつながりにくくなります。
また現在のPTの卒業数は年間1万人を超えており、需要と供給のバランスが崩れていることも理由のひとつといえるでしょう。
そのためPTの初任給も、徐々に低下傾向になっています。
●常態化している残業!!
PTは1単位20分と決められており、業務時間内は患者さんのリハビリに費やしてしまいます。
しかし、仕事はそれ以外にもカルテの記入や計画書の作成、カンファレンスなどもあり、それらは休憩時間や就業時間外にすることが多くなってしまいます。
また、病院では日常的に勉強会が行われています。
この勉強会への参加のために、資料作成などの時間が必要となりさらなる拘束時間を生んでしまうのです。
残業に関しては詳しく書いてある記事がありますのでこちらを参考にしてください。
詳細はこちら
●休日は研修会!家族との時間がとれない
平日の仕事が終わってやっと休みだ!!と思ってもなかなか休めません。
PTの学会や研修会は週末に行われることが多く、開催地が遠方だったり大きな学会であったりすると2~3日はつぶれてしまいます。
しかも費用がすべて支給されるわけではなく、多くの病院は上限が決められており、それ以上は自費扱いになってきます。
毎週参加しているわけではないですが、休日を減らしてまで勉強ばかりでは休む暇もありません。
筆者も以前にくらべて参加数が少なくなりましたが、それは参加することで妻に負担がかかり、子どもと過ごす時間がどんどんなくなってしまうと感じたからです。
PTの質の低下が及ぼす影響を考えてみよう
ではPTの質が低下するとどういったことが起こってくるでしょうか?実際の体験談を参考に、PTの質の低下によってなにが起こるのか考えていきましょう。
●患者さんの不満が募り患者数の減少に
ここでは1人の患者さんの体験談を紹介します。
美奈さん(仮名、20代)は、手のしびれや肩の痛みが気になって整形外科を受診したところ胸郭出口症候群と診断され、肩や首の筋肉を鍛えた方が良いということで週に一度、20分のリハビリが処方されました。
20分のリハビリのなかで前半の10分くらいは首のストレッチを行いました。
しかし、首の筋肉がストレッチされているという感覚が得られず、本当に効果があるのか疑問に思いました。
しかも、首の筋トレといって取り組んだのが、1人でできる運動だけでした。
自宅から30分もかけて通っているのに、毎週この運動ばかりだったので「これなら自宅でもできる」と思い、リハビリに通うのをやめてしまいました。
美奈さんは「自分でできることはホームプログラムに回すなどして、工夫をしていただきたかった」と述べています。
美奈さんはその後、立地的にもコスト的にもメリットがある整骨院に通うようになったそうです。
美奈さんは、今後も体の不調を感じても同じ病院に来院することはないと思われます。
●自分たちの首を絞めることに?
近年の社会保障費は増加の一途をたどっており、国は社会保障費の削減、縮小を考えていると思われます。
質の低い治療が蔓延すると、リハビリの成果がだせずに寝たきりになったり、障害を抱える方が増加する可能性があります。
国は社会保障費の減少を目指しているのに、必要としている方の人数は増えていくとなると、その先に待っているのは診療報酬の削減です。
またPTの数が飽和状態になってきていることを考えると、これからはふるい落としが始まり、質の高いPTが求められるようになります。
これからPTとして生き残っていくためには、自分自身にどれだけの価値を見いだせるかが重要だと考えています。
筆者が考える現状の解決策とは
現状を変えていくためには待遇面の改善と理学療法士のやる気、モチベーションをアップさせる必要があります。
●若い世代の人はまず基本知識、技術を身につけよう
1)基礎さえ確立すれば応用は効く
たとえば私は整形外科病院で勤務しているため、解剖学、機能解剖、運動学は特に押さえておくべき分野になります。
何度も講習に参加して感じていることですが、講師の方は技術もさることながら基本的な知識の質、量がすごいです。
ここがわからずに技術講習会に参加しても得られるものは少ないでしょう。
逆に基礎を理解していれば講師の話の内容も理解しやすくなってきます。
ある程度、知識の土台を固めてから講習に参加する方が経済的にも時間的にも効率が良いでしょう。
2)病院にある雑誌を読め!
病院には多くの雑誌がありますが、それらを片っ端から読んでいくのが手っ取り早いです。
PTの書物であったり、医師の書物であったりしますが、医療現場は他職種との連携が必要です。
「この手術はどのようにしているのか」、「医師はどう考えているのか」、「現在のトレンドは」など、会話をしていきながら雑誌を読むことで把握できます。
●勉強したいという雰囲気づくり
筆者が新人のころですが、入職した病院は忙しく、スタッフもギリギリで業務を回しているため、講習会や学会に参加してはいけないといった風潮がスタッフ間でありました。
新人に「勉強会には行くな」といった上司に疑問を感じたことは、今でも鮮明に覚えています。
私はその反骨心で今があると思っていますが、後輩には絶対に押さえておいた方がいい、講習会にはどんどん行くようにと伝えてきました。
若いPTだけが勉強をするのではなく、みんなで切磋琢磨できる環境づくりが必要だと感じています。
●資格に価値を
日本理学療法士協会ではPTの質を高めるため専門理学療法士、認定理学療法士の資格制度を設けています。
しかし現場で働いているPTは「取得しても意味がない」という意見が多く取得者もまだ少ない状況です。
理学療法士協会は今後、専門、認定理学療法士に加算をつけたり「医療広告ガイドライン」に準じた「専門性資格認定団体」として認可されるように努力しているところです。
それらを実現するには私たちPT自身が認められるような努力、結果を残すことが必要
となります。
この制度が整えば質の高いPTの待遇が高まることが予想できます。
まとめ
今回は筆者なりの考えを述べてきました。
筆者の意見に肯定的な方もいれば否定的な方もいるでしょう。
しかし、現在のPTを取り巻く環境は決して優遇されたものではありません。
PTという職業はとてもやりがいのある職業ですが、現在のPTを守り、今後のPTの未来を発展させていくのはほかの誰でもない、私たち自身です。
今後のPTの発展のためにも一丸となって今を乗り越えていきましょう。
参考:
日本理学療法士協会 統計情報(2018年1月21日引用)
日本理学療法士協会 生涯学習について(2018年1月21日引用)