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クリニック・治療院 OGメディック

  • 蔵重雄基

    公開日: 2019年11月29日
  • リハビリ病院の悩み

産業理学療法に興味のある理学療法士必見!産業分野の求人の有無や参入方法について解説

企業で働く労働者に対して理学療法士の視点から健康改善を実施する産業理学療法。
興味があったり、名前は聞いたことがあったりしても、詳しい働き方や求人の有無については知らない人が多いのではないでしょうか。
そこで、産業理学療法について、具体的な実践例やこれからの働き方について紹介します。

需要が伸びる産業理学療法士

産業理学療法とは?ニーズや役割を紹介

産業理学療法とは?ニーズや役割を紹介

産業理学療法と聞いてもどのような分野なのか知らない理学療法士も少なくないでしょう。
そこで、ニーズや役割、活躍する場所を紹介します。

●今後のニーズが高まる分野「産業理学療法」

企業で働く従業員の健康に対する意識が高まる昨今、産業保健分野の充実は国を挙げて進められています。
具体的には以下のような施策が挙げられます。

  • ○2013年に19年ぶりに厚労省が「職場における腰痛予防対策指針」を改定
  • ○2015年に50人以上の従業員を抱える事業所のストレスチェックを義務化
  • ○2019年労働基準法の改定による「働き方改革」

また、「Presenteeism(プレゼンティーイズム)」の考えが広まり、従業員の不調による生産性の低下が企業に大きな損失を招くため、いかに心身の健康を保つ取り組みができるかが企業経営に必要になっています。
以上のような観点から、理学療法による身体面の健康に関する介入が期待されています。
実際、アメリカやオーストラリアでは、理学療法士が企業と契約して、産業分野に積極的に介入して産業理学療法士が活躍している現状があり、日本においても同じような役割を求められる可能性があります。

Presenteeism(プレゼンティーイズム)

●産業理学療法士の役割

前述のように従業員の健康の保持、増進、障害の予防に関わる理学療法士を「産業理学療法士」と呼びます。
具体的な役割としては以下のようなものが挙げられます。

  • ○労働災害(腰痛や腱鞘炎、転倒によるけがなど)の予防として運動指導
  • ○適切な作業姿勢や労働環境の評価や調整
  • ○高齢労働者に対する運動機能の改善や指導

とりわけ、日本の雇用形態が変化して、高齢者雇用が推進されている現状から、高齢労働者に対するアプローチは今後の産業理学療法士の役割として重要になります。

●産業理学療法が実践できる場所

産業理学療法を実践する場所は多岐に及びます。

  • ○医療や介護分野
  • ○工場
  • ○運送業
  • ○事務作業の多い職種

など

作業内容や分野の大きく違う職種ですが、それぞれに健康を阻害するリスクが潜んでおり、理学療法の視点で介入できる可能性があります。
たとえば、一見動きが少なく怪我のリスクが少なそうな事務作業が多い職種でも、長時間の座位姿勢保持や不良姿勢でのパソコン使用により、腰痛や頚椎症を発症するリスクが高まります。
そこで、業務間のストレッチや運動、作業環境の改善などの介入をすることで、従業員の障害を予防することができます。

●産業理学療法士は経営的な視点も重要

産業理学療法士の介入をするためには、介入の結果が企業にどのようなメリットをもたらすのかを提示する必要があります。
そのため、前述の従業員の健康と労働生産性の関連や改善の具体例を学び、雇用主や経営者などに経営的な視点で産業理学療法の必要性をプレゼンする役割も必要です。

産業理学療法の具体的な実践例3選

産業理学療法の実践例を具体的に3つ紹介します。

●医療・介護現場に対する産業理学療法

医療・介護現場に対する産業理学療法

最も産業理学療法を実践しやすいケースが、医療・介護現場への介入です。
産業理学療法を実践するには、介入する職場(従業員の働き方や職場環境)を知る必要があります。
その点で、医療・介護現場はほかの現場にくらべて、理学療法士が知っている情報が多く、介入しやすいといえます。
具体的には以下のような介入を実践できます。

  • ○介助方法への助言
  • ○介助する環境(ベッドの高さを)改善
  • ○腰痛予防のストレッチや体操

など

※具体的な腰痛対策の実践方法については、「介護職の腰痛予防のために理学療法士ができることとは?職場の同僚の腰痛を改善しよう」で詳しく紹介しています。

●工場分野での労働災害に対する産業理学療法

工場分野での労働災害に対する産業理学療法

工場によってもさまざまな作業があり、理学療法の視点で介入できる部分が多くあります。
たとえば、ラインを使用した作業が必要な工場では、ラインの高さは一定に決められています。
一方、従業員の身長はバラバラですので、人によって前傾姿勢が続いたり、反り腰姿勢が続いたりということになり、腰痛を引き起こす要因となります。
そこで、ラインの高さを調整したり、人に合わせて足台を活用したりすれば、不良姿勢の改善につながり、腰痛軽減を図れます。
また、作業間の体操を指導して腰への負担を減らす指導もできます。

●運転手に対する産業理学療法

運転手に対する産業理学療法

運送業務は腰痛の発生率が高い職業とされ、舟越らの報告では重量物の持ち上げなどがないタクシー運転手でも45.8%の腰痛有訴者率があるとしています。
そのため、自動車運転に関して以下のような視点で産業理学療法の介入が実践できます。

  • ○座面やバックシートの調整による運転姿勢の改善
  • ○休憩時の運動やストレッチ
  • ○適切な休憩時間の提案

など

重量物を運ぶようなドライバーに関しては、介護現場同様に持ち上げ動作に関する助言をすることで、障害の予防を図ることができます。

求人は少ないのが現状だが企業契約や独立開業など将来性はある

日本では産業理学療法の認知度は低く、直接的な求人は少ないのが現状です。
しかし、全国の労災病院では産業理学療法に関するエビデンスの構築を含めて、積極的に企業へ介入しています。
また、個人で開業して企業と連携を図っていたり、アプリを活用した労働者への健康管理をしたりといった例もあります。
もし、今働いている職場外への働きかけが難しくても、まずは自分が働いている職場に介入することも、立派な産業理学療法です。

2019年に行われた産業理学療法部門研究会でも、産業医より理学療法士の産業分野への介入に関する期待の高さが伺われました。
このように、新しく将来性があるので、これから自分でできる範囲で専門性を高めて、活躍を目指すことができる分野であるといえます。

興味がある人は身近で実践していこう!人脈次第で企業への介入も可能

現状、産業理学療法士として独立して活躍する場は多くありませんが、実践する場所は少なくありません。
実績や人脈を作ることで、企業と契約して介入をしたり、独立したりしている理学療法士も増えてきています。
日本理学療法士協会でも産業理学療法部門が設立され、産業分野に従事する理学療法士の育成を図っています。
そのため、興味のある人はまずは産業分野の知識を深めながら、身近な場所から実践して経験を積み、人脈を広げて産業理学療法士としての活躍の場を広げていきましょう。

参考:
舟越光彦, 田村昭彦, 他: タクシー運転手の腰痛に関連する要因の研究.産業衛生学雑誌45: 235-247, 2003.

  • 執筆者

    蔵重雄基

  • 整形外科クリニックや介護保険施設、訪問リハビリなどで理学療法士として従事してきました。
    現在は地域包括ケアシステムを実践している法人で施設内のリハビリだけでなく、介護予防事業など地域活動にも積極的に参加しています。
    医療と介護の垣根を超えて、誰にでもわかりやすい記事をお届けできればと思います。
    保有資格:理学療法士、介護支援専門員、3学会合同呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、介護福祉経営士2級

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