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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2019年12月26日
  • リハビリ病院の悩み

循環器に強いセラピストを育てよう!クリアすべき3つのSTEPとは

わが国において高齢化が進むなか、リハビリの対象患者さんに関しても合併症や既往歴を複数持つ方が増えています。
しかし、呼吸器や循環器など内部障害に関しては、従事するセラピストの数や指導者の不足などもあり、苦手意識を持つセラピストも多いのではないでしょうか。
筆者自身の経験や指導経験の中から、循環器疾患を理解するために超えなければならない3つのSTEPをご紹介します。
これから循環器のリハビリを学ぶ若手や指導者の方にとって参考になれば幸いです。

循環器に強いセラピストになるステップ

STEP1 知らないことに対する「不安」を乗り越える

不安を乗り越えよう

まず第1のSTEPは、循環器疾患に対する知識を深めて自身の不安を解消することから始まります。

●循環器疾患=急変というのは誤解!

循環器疾患のリハビリを経験したことがない方にとっては、循環器=急変リスクが高いと先入観を持ってしまいがちです。
しかし、誰もがいつ急変するかもしれないというハイリスク状態であるわけではありません。
たとえば、冠動脈を治療済みの狭心症患者さんにおいては、心臓のダメージもほぼなく、冠動脈が開通したことによってある程度の運動負荷がかけられます。
逆に、循環器科にかかっていない患者さんは、もしかすると未治療の不整脈や冠動脈疾患を持っているかもしれません。
循環器科で適切な検査と治療をしてリハビリ処方されている方のほうが安心と考えることもできます
その一方で、未治療(または保存療法を選択)の弁膜症を抱えている患者さんの場合、運動強度を適切に設定しないと心不全が増悪する可能性があります。
つまり、循環器疾患と一括りにするのではなく、目の前の患者さんがどのような状態か、治療の進捗状況はどうかなど、さまざまな情報を基に病態を評価することが大切です。

●STEP1の処方箋は、治療の進捗とリハビリ内容を考えること

循環器疾患のリハビリに慣れないうちは、以下の内容をしっかり理解することをおすすめします。

◯治療の進捗状況

整形外科や脳血管疾患では、手術後にリハビリ指示がでることが多いですが、循環器では必ずしもそうとは限りません。
その理由は、内科的治療が優先される場合、薬物療法とカテーテル治療などが並行して行われるからです。
つまり、薬で症状をコントロールしつつ、状態が安定すればカテーテル治療を行う方針となることがあります。
この場合、根本的な原因(冠動脈の狭窄など)は解決していないため、息切れなどが起こる運動は避けるべきです。
また、投薬量の調整などで、血圧や心拍数が変動することも多いため、使用している薬剤の効果や投与量の変化は必ず調べておきましょう

◯運動前後でのバイタル変化

運動前に血圧や脈拍のチェックをする方は多いと思いますが、循環器疾患での運動負荷量を考える場合、運動後のバイタルもチェックしておくことが重要です
たとえば、運動後の血圧や心拍上昇が著しい場合は、その方にとって過負荷になっている可能性があります。
また、実際の臨床場面では、息切れの有無を負荷量の目安にすることも多いです。
単に室内歩行をするだけで息切れをしている場合、まだ歩行練習は早いという判断ができるでしょう。

STEP2 知ったことで生まれる「慣れ」に注意する

慣れに注意しよう

「循環器疾患のリハビリがわかってきた」と思えると、自身の成長を実感するのではないでしょうか。
しかし、次のSTEPにおいて注意しなければならない点がいくつかあります。

●注意していれば急変は起こらない?慢心からくる危険

循環器疾患の患者さんを担当するなかで、最初のうちはバイタル測定や各検査結果の確認など、慎重に慎重を重ねて行うことでしょう。
筆者も最初の頃は、「循環器疾患って怖い、リスクが高い」と常に緊張した状態で臨床業務を行っていました。
そのため、患者さんが息切れを訴えたり、少し血圧が低下するだけで運動を一旦止めてバイタルチェックをしていました。
そのかいあってか、これまで7年以上循環器を専門に臨床をしてきたなかで、リハビリ中に大きな事故が起こったことはありません。
しかし、気をつけなければいけないのは、「注意していれば急変は起こらない」という思い込みに至ってはいけないということです
特に、不整脈疾患に関しては薬の投与量や精神的ストレスなどでも不整脈の出現頻度が変わってくるため、常に医学的情報をアップデートする癖をつけるべきです。
また、「少しくらい血圧が下がっても大丈夫だろう」、「たぶん脱水症だろう」などと浅い経験を基に病態を推測することほど危険なものはありません。
この慣れてきた時期こそが一番危険であり、気を引き締めるべき時期だといえるでしょう

●STEP2の処方箋は、いつでも急変時に対応できる体制を整えること

循環器疾患のリハビリに慣れてきたということは、臨床に余裕がでてきたと捉えることもできます。
この時期に押さえておきたいポイントは、急変時対応をいかに行うかを想定しておくことです
たとえば、患者さんが運動を行っている際、もし意識を失ったらどこで処置を行うか、救急セットは準備できているかなどが挙げられます。
「もしかしたら」という気持ちを持っているだけで、急変時の初動対応に大きな差がでてきます。
循環器のリハビリにおけるリスク管理は、バイタルなどのフィジカル面だけでなく、これら環境面での管理も重要な評価項目です
STEP2では、業務に慣れて怠慢になるのではなく、視野を広げてさまざまな角度から安全管理ができるようにすることが大切です。

STEP3 「不安」を乗り越え、リスクを「予測」できると一人前

リスクを予測できて一人前

STEP1〜2を乗り越えた後、また「恐怖」や「不安」などの感情が現れます。
STEP3ではその理由と対策について考えていきたいと思います。

●ベテランの境地では、多くを知るからこそ怖くなる

STEP1〜2を乗り越えた後、循環器のリハビリを学ぶセラピストにとっては、2度目の不安を感じる時期がやってきます。
たとえば、心筋梗塞の患者さんを担当した場合、まずは情報収集やバイタル測定をして、運動の強度を設定するでしょう。
ただ、病態や薬に関する知識が積み重なってくると、起こり得るリスクを想定することができるようになります
例として、以下のような内容が挙げられます。

  • ◯右冠動脈の病変だから、急に徐脈が出現するかもしれない
  • ◯今日は利尿薬の投与量が増えたから血圧が下がっているかもしれない
  • ◯不整脈の薬が入っているため、別の不整脈が起こるかもしれない(催不整脈作用)

実際の臨床場面では、バイタルや自覚症状など、目の前の数値だけ評価して異常がないのであれば問題はありません。
しかし、知識や経験が増えることによって、いろいろな可能性を考えてしまう時期がやってきます(たいてい杞憂に終わるのですが)。
最初の不安は知らないことに対する不安ですが、2度目は多くを知ることによる、つまりあらゆる可能性を想定できるゆえに感じる不安になります

●STEP3の処方箋は、あらゆる可能性に対して対策を練っておくこと

STEP3では、リスク一つひとつに対しての対策を考え、他職種や患者さんへの対応ができるように準備することが大切です
たとえば、抗不整脈薬を使用している患者さんにおいて、薬の投与量が増えた場合では、以下のような考察と対策が考えられます。

  • ◯心拍数が上がりにくいため、自覚強度での運動処方に切り替える
  • ◯運動強度は少し低めに設定し、息切れや倦怠感がなければ徐々にアップする
  • ◯心電図ではQT延長やR on Tがないかをチェックしておく
  • ◯不整脈が発生した場合を想定して、休憩できるスペース(ベッド)を確保しておく
  • ◯起こり得るリスクについて患者さんに説明し、説明内容をカルテに記載しておく

また、このSTEPまで到達すると、医師やベテラン看護師とも同じレベルで情報共有ができるようになります。
STEP1では「心拍数が上がらないですが運動は大丈夫ですか?」という質問が、STEP3では「現在の投薬量で日常生活動作は問題なさそうです」という報告に変わるでしょう。
また、患者さんに対しても起こり得るリスクと対策をあらかじめ伝えておくことによって、医療事故による訴訟を防ぐこともできます
ここまで到達したセラピストであれば、循環器リハビリのエキスパートといっても過言ではないでしょう。

循環器疾患のリハビリに特化した人材育成へ

循環器疾患のリハビリを学ぶ際、多くのセラピストが本記事で紹介した3つのSTEPを経験することになるでしょう。
今現在、自分または部下がどのSTEPにいるのか、今後専門性を高めるためにはどうすればいいのかを考えることが大切です。
循環器のスペシャリストになるためには、教科書や文献の知識だけでは不十分であり、自身の経験とリスク想定スキルが必要になります。
呼吸器や循環器疾患におけるリスク管理能力は、回復期や訪問リハにおいても重要なスキルとなるため、1人でも多くのセラピストに習得していただけることを願っています。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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