放課後等児童デイサービスにおける作業療法士の仕事・役割とは
作業療法士は、放課後等児童デイサービスでも活躍できます。
小児の分野で働きたいと思っている作業療法士にとっては、働ける場が広がるといえます。
今回は、作業療法士の仕事や役割、心がまえなどについてお伝えしていきます。
放課後等児童デイサービスとは?
放課後等児童デイサービスとは、障害のある子どもが放課後や休日、夏休みや冬休みなどの長期休暇に通う場所であり、福祉サービスの一種となります。
「児童デイ」「放デイ」などと略されることがあります。
学齢期の児童で、身体障害、発達障害、精神障害などの障害があれば、障害の種類を問わず利用可能です。
児童福祉法では、次のようなものを提供する場だと定義されています。
- ●生活能力の向上のために必要な訓練
- ●社会との交流促進
- ●その他便宜
大まかに目的が掲げられていますが、この考え方から外れていなければ、アプローチの仕方は多様となります。
放課後等児童デイサービスは、障害のある子どもを、家や学校とは違う場所や人の中で、さまざまな体験を通じて育成できる場です。
区切り方は施設によって異なりますが、たとえば、午前中が0〜3歳、13:00〜16:00が幼稚園児〜小学生、16:00〜18:00が小学生〜高校生、のような形にしていることもあります。
放課後等児童デイサービスにおける作業療法士の役割
作業療法士は、身体障害・高齢期・精神障害・発達障害といった分野で働くことが主流ですが、このうち主に発達障害領域の働き口として「放課後等児童デイサービス」があります。
具体的にどのような仕事内容であり、どんな役割を担うのかお伝えしていきます。
●運動・感覚機能へのアプローチ
発達障害領域の子どもでは、運動機能や感覚機能の面で課題を抱えていることも少なくありません。
放課後等児童デイサービスでは、保育士なども働いていますが、運動や感覚の機能に精通した作業療法士が参画することによるメリットもあります。
運動面や感覚面での課題が、学校生活での「困り感」に結び付くケースも多いため、作業療法士が評価・介入していくことも大切な役割といえます。
小児や発達障害関連の医療機関で、作業療法士が働いている所は少なく、セラピー自体も予約が取りにくい場合があります。
放課後等児童デイサービスという場を活用しながら、子どもの発達をフォローしていきましょう。
●学習面のフォロー
学習面の遅れについてはチェックし、必要であればできるフォローをしていきたいところです。
学校の勉強にはついていけない、医療機関のリハビリには低い頻度でしか通えない、学習塾では障害の特性について理解してもらえない、といったことも珍しくありません。
通知表や学校のノートを見せてもらったり、本人や保護者から学習状況についてヒアリングを行ったりして、支援していく役割もあります。
●イベント・行事の企画や実施
放課後等児童デイサービスでは、季節に応じたイベントや誕生会など、何かしらの催しものをするケースも少なくありません。
たとえば、運動会や学芸会などを催す場合、作業療法士が活躍できることがあります。
一人ひとり、障害の程度や内容、発達段階には違いがありますが、それを評価して、子どもたちができる活動を提案することができます。
筆者の経験では、独歩の獲得まであと一息という子どもが、どのようにしたら自立して運動会を行うプレイルームに入場できるか検討し、保護者と決定したこともありました。
イベントや行事の際にも、「どうしたら子どもの能力を引き出せるか」という観点で、工夫したり、提案したりする役割を担えます。
●保護者のフォロー
放課後等児童デイサービスでは、日々子どもたちと関わるなかで、保護者との信頼関係も構築していきます。
送迎などの際には子どもの様子を伝えたり、成長できた点を共有したり、保護者の方とコミュニケーションを取る機会は少なくありません。
保護者が、子どもの発達や様子について気兼ねなく相談できる相手としても、作業療法士をはじめとするスタッフが活躍できます。
作業療法士ならではの観点で、運動機能・感覚機能・行動・情緒面・学業面などについて、子どもの発達に関する相談にのることができるでしょう。
家庭内での子育てについて相談にのり、ペアレント・トレーニングなどを活用することもできます。
結果的に保護者が気持ちにゆとりを持ち、子育てに自信を持てるようになると、子どもの発達にも良い影響があることが期待されます。
●他スタッフとの連携
放課後等児童デイサービスでは、作業療法士など、リハビリのスタッフだけが働いているわけではありません。
保育士や介護士、看護師、幼稚園教諭や教員免許を持つ人など、実にさまざまな人が働いています。
リハビリのスタッフとは違った観点で子どもを見てくれるため、多職種で協働しながら、より良い療育を提供するという意識が欠かせません。
リハビリ業界の基準や考え方を押し付けず、周囲と協調しながら子どもの発達を支援していくことも役割といえます。
放課後等児童デイサービスで働くときの心がまえ
放課後等児童デイサービスで働くことを検討している作業療法士は、次のような心がまえが必要になることも理解しておきたいところです。
地域で障害のある子どもの生活をフォローしていける魅力はありますが、次の点も考慮して職場選びをしてみてはいかがでしょうか。
●車での送迎業務がある
放課後等児童デイサービスでは、施設側で子どもの送迎を行うこともあります。
求人情報などを見ても、「要普通免許」などと記載されていることは少なくありません。
高齢者の通所施設でもそうですが、放課後等児童デイサービスでも、送迎も役割に含まれることがある点は理解しておきましょう。
●職場に相談できる相手がいない
放課後等児童デイサービスは、多くの場合、少ない人数で療育を展開しています。
特に、作業療法士として働くことを希望する場合は、相談できる先輩作業療法士がいない可能性が高いです。
作業療法士を複数名雇用している施設はそれほど多くありませんし、基本的には自分で考えたり、調べたりして対応していく必要があるでしょう。
●施設によって療育内容に違いがある
放課後等児童デイサービスの数は増えていますが、施設によって「感覚運動のリハビリに特化した…」「学習面のフォローに特化した…」といった具合で、特色には違いがあります。
ひと言でデイサービスといっても、支援内容は施設によって大きく異なることがあるのです。
経営者がリハビリ職なのか、教育関係者なのか、医療や福祉の資格を持たない民間企業の代表なのかによっても、施設の特色には違いが出てくるものです。
ホームページなどで、運営元や経営者、その施設の取り組みなどを確認しておくと、どのような役割を担えそうな施設かイメージしやすいです。
放課後等児童デイサービスで知識や経験を生かそう
小児や発達障害領域の作業療法士はそれほど数が多くありません。
そして、療育を行っている病院も少ないため、働き口も限られています。
放課後等児童デイサービスであれば、病院での作業療法よりも、比較的高い頻度で介入でき、さらに地域に密着したアプローチを展開できる利点もあります。
ぜひ、作業療法士としての役割を発揮してみてください。
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執筆者
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作業療法士の資格取得後、介護老人保健施設で脳卒中や認知症の方のリハビリに従事。その後、病院にて外来リハビリを経験し、特に発達障害の子どもの療育に携わる。
勉強会や学会等に足を運び、新しい知見を吸収しながら臨床業務に当たっていた。現在はフリーライターに転身し、医療や介護に関わる記事の執筆や取材等を中心に活動しています。
保有資格:作業療法士、作業療法学修士