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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2020年02月28日
  • リハビリ病院の悩み

臨床研究シリーズ アンケート調査は難しい?実施する前に注意するポイントを解説します

臨床研究は、治療の効果判定をする介入研究や、過去のデータから関連性を見出すケースコントロール研究など、さまざまな研究法があります。
その中でも、アンケート調査は簡便に実施できると思われがちですが、調査前に入念な準備をしておかないと、結果の信憑性に欠けてしまうので注意が必要です。
本記事では、調査をするに当たって注意するべきポイントについてご紹介します。

アンケートのつくり方と集計方法

「調査対象者編」対象者が母集団の特性を表しているか考えよう

「調査対象者編」対象者が母集団の特性を表しているか考えよう

調査を始める際、まず頭を悩ませるのが対象者の選定です。
ここでのミスが結果に大きく影響してくるため、以下の点を意識して選定しましょう。

●同じ職種=母集団の特性ではない

母集団とは、ある分野や職種全体を表すもので、調査の最終目標は母集団の考えや特性を知ることになります
しかし、母集団の人数が多い場合、全員にアンケートを配布することは難しいため、そこから何人かをピックアップして、サンプルとして調査をします。
そのため、ここのサンプリングに偏りができてしまうと、想定していない結果になることがあります。
仮に、リハビリ専門職を対象者に設定するのであれば、勤務している施設や住んでいる地域、年齢や経験年数などが偏らないように注意する必要があります。
極端な例ですが、温熱療法の使用頻度について調査したい場合、寒い地域のセラピストと暖かい地域のセラピストでは、回答の割合に差がでるかもしれません。
寒い地域に住んでいるセラピストが所属県の調査をすると、温熱療法の使用頻度が高くなるため、それをリハビリ職の傾向(母集団)というのはNGになります。
また、「リハビリへのICT活用について」調査しようと考えた際、SNSなどで回答者を選定すると、その時点でサンプルがネットリテラシーの高い群に偏ってしまいます。
サンプリングの際にはこれらの選択バイアス(偏った回答者の選定)がかからないよう、入念な計画を進めていきましょう

●あえて調査対象者を限定するのも効果的

前述した通り、サンプリングの際には対象者の特性が偏らないように工夫することによって、母集団の特性として表すことができます。
しかし、調査内容によってはあえて対象者を限定することで良い結果がでることもあります。
たとえば、「転職を繰り返すか、同じ職場で働き続けるか、どちらが自分にとってメリットがあるか?」という調査をするとしましょう。
この場合、勤務している施設や経験年数によってセラピストの考え方が異なると予想されるため、母集団の特性を表すためには偏りがなく選定したいところです。
しかし、あえて対象を経験3年目までのセラピストに絞ることによって、「若手の仕事に対する考え方」という解釈にたどり着くことができるでしょう。
ベテラン勢が回答すれば、家庭をもっている、施設で顔がきく、今から新しいことにチャレンジしたくないなどの意見があがり、若手と真逆の結果になるかもしれません。
つまり、誰に対して何を調査したいのかという研究デザインをしっかりと作成していれば、あえて対象者を限定するのも効果的であるといえます

「質問内容編」誘導しない質問づくりを心がけよう

「質問内容編」誘導しない質問づくりを心がけよう

対象者の設定を終えた後は、調査の核ともいえる質問項目を作成する段階になります。
しかし、質問づくりの際も注意しなければならない点がいくつかあります。

●質問の仕方によっては回答を誘導することもある

調査者にとって、質問1つひとつには必ず「これを聞きたい」という意図があります。
しかし、あまりその意図を前面に出しすぎると、正確な回答が得られなくなるので注意が必要です。
例として、「若者は、周りのスタッフへの気配りができていない」という仮説をたてて調査をするとします。
その際、以下の2通りの設問を考えてみましょう。

  1. 1)あなたは、自分の休暇でほかのスタッフの業務量が増えると思いますか?
  2. 2)あなたは、自分の休暇で周囲に迷惑がかかると思いますか?

この場合、質問者の意図は同じでも、「迷惑がかかる」というフレーズによって回答者の答え方が変わってきます。
「休む権利はあるのだから迷惑ではない」と考える方の場合、「いいえ」の選択をするかもしれません。
いっぽう、「業務量が増える」のは事実ですので、「はい」と答える方は多いと予想できるでしょう。
マイナスイメージの「迷惑」というワードを使うことによって、選択する=悪いことをしていると思わせ、「はい」を選択しにくいように誘導する可能性があります。
質問づくりの際には、答えにくい回答ではないか、回答者に偏った感情を持たせていないかなどに留意して進めていく必要があります。

●択一式だけでなく、フリーコメント式の回答も重要

アンケートの回答は択一式であることが多く、集計結果をグラフ化したりと、傾向を読み取りやすいです。
そのため、調査者が予想していなかった回答や、新たな気づきを見出すことはあまりないかもしれません。
対象者の生の意見を吸い上げたい場合、フリーコメント式の質問をすることも効果的です。
多くの場合、アンケートの最後に「その他ご意見」というかたちで自由記載する欄が設けられています。
しかし、回答を終えた後熱心にフリーコメントを記載してくれる方は少ないのではないでしょうか。
対象者の生の意見、考え方を知りたいのであれば、設問の途中にフリーコメント欄を設けてみるのも有効です。
その場合、「◯◯の△△について意見を聞かせてください」と具体的に記載しておかないと、回答者がどう答えていいかわからなくなるので注意が必要です。
また、あまりにもフリーコメント欄が多すぎると、回答に時間がかかって面倒くさく思われるため、アンケート1つにつき1〜2問程度にするとよいでしょう。

「集計編」結果を記載するときの注意点と統計学的分析を知ろう

「集計編」結果を記載するときの注意点と統計学的分析を知ろう

ここまでは調査を実施する際の注意点についてご紹介しましたが、最後はアンケート回収後の流れについてご紹介します。

●パーセンテージの記載には要注意!母数を明らかにすること

アンケート結果を開示する場合、その多くは棒グラフや円グラフで表されることが多いでしょう。
特に、円グラフではある回答をした群のパーセンテージを表すこともできるため、非常に便利です。
しかし、ここで注意したいのが、パーセンテージを記載する際には、必ず母数を確認するということです。
以下は極端な例ですが、仕事が楽しいかという問いについて、「はい」と回答した群が40%、「いいえ」と答えた群が60%だとします。
また、「毎日が楽しい」という質問に「はい」と答えたのは全体の40%だとします。
しかし、「仕事が楽しいと感じる」と答えた方の中では、「毎日が楽しい」と答えた割合が85%だとしましょう。
「毎日が楽しい=やりがいを感じる」という図式が成立する可能性が高く、この85%という値は全体の傾向を表していません。
結果を公表する際は、なにが母数になっているのかをしっかりと意識して、見る側にも誤解をあたえないように注意しましょう。
また、自身がアンケート調査結果を参考にする場合も、そのパーセンテージの母数が何かを確認するクセをつけるとよいでしょう。

●統計学的処理にはクロス集計が効果的

アンケートを集計すると、「◯◯なのは全体の何%」、「◯◯の2割はこう思っている」などの結果がでてくるでしょう。
知りたいことが明らかになったのでこれで満足しがちですが、せっかく貴重なデータを得ることができたので、もう一段階進めてみるのもありです。
アンケート調査で簡単にできる統計学的分析手法として、クロス集計という手法があります
クロス集計の代表例としてカイの2乗検定が挙げられますが、これは2×2以上のマスに群を分類することなります。
前述した例をもとに、以下にクロス表を挙げてみます。

毎日が楽しい(40人) 毎日が楽しくない(60人)
仕事にやりがいを感じる 35人 10人
仕事にやりがいを感じない 5人 50人

この表を見ると、毎日が楽しいと思う気持ちと仕事のやりがいの間に関連性があるような印象を受けます。
クロス集計では、この割合が統計的に有意な差があるのかを検証することができるため、気になった回答同士の関連性を見てみるのもいいかもしれません。

アンケート調査は実施しやすいが故に注意が必要

アンケート調査は、おおまかな行程としては質問用紙を作成して回答してもらうだけと、難易度が低く見積もられがちです。
しかし、サンプリングや質問の仕方などに問題があると、調査者の予期していない結果がでることもあります。
臨床研究においては、調査結果が母集団を反映しているかが重要になるため、準備を怠ることによって研究の質が落ちてしまいます。
アンケート調査は決して簡単なものではなく、実は研究デザインを作成する段階から勝負は始まっています。
対象者の選定、質問内容、集計結果の解釈などを研究チームでよく吟味することによって、質の高いアンケート調査が行えるでしょう。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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