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クリニック・治療院 OGメディック

  • 高木雪絵

    公開日: 2020年03月31日
  • リハビリ病院の悩み

統合失調症の患者さんに運動は重要?身体活動の必要性と期待できる効果

精神科でよく遭遇する疾患のひとつに「統合失調症」があります。
精神科作業療法では、体力づくりなどの目的でよく運動を取り入れます。
もちろん体力づくりも重要な観点のひとつですが、統合失調症の患者さんが運動することによって、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。
普段、何気なく患者さんに運動プログラムを提供している作業療法士や看護師の方は、ぜひ参考にしてみてください。

統合失調症患者の運動に関する研究論文・レビュー

統合失調症の患者さんにおける身体活動の必要性

統合失調症の患者さんを対象に、運動のプログラムを提供することはしばしばありますが、なぜ身体活動が必要なのでしょうか。
統合失調症の患者さんに特有の症状から、身体活動の必要性について考えていきます。

●統合失調症の陽性症状と陰性症状

統合失調症の患者さんでは、急性期の段階では幻覚や妄想などの陽性症状が目立ちます
自分の悪口が聞こえてきたり、誰かに命令されていると感じたりといった幻聴、そこにないものが見える幻覚などが見受けられます。
また、思考が混乱して会話に脈絡がなくなることも特徴的です。
休息期や回復期と呼ばれる慢性期に入っていくと、陽性症状がなくなっていきますが、その一方で意欲減退や無関心、集中困難などの陰性症状が出現します。
陰性症状が強まると、無為に過ごしてしまうことになります。

●統合失調症の患者さんにおける身体活動

陰性症状が強まると、結果的に身体活動量は減少してしまいます。
そして、身体活動量が減ると、体力が落ちてますます活動しなくなっていくうえに、睡眠の質も低下していきます。
日中に身体を動かさないと、夜に熟睡できず、睡眠不足に陥る可能性も高まります。
そして、睡眠不足や睡眠リズムの乱れが続くと、生活の質(QOL)にも影響を及ぼすと考えられています。
すべての人にとって、生活習慣病の予防という観点からも運動は大切になります。
ただ、意欲減退などの陰性症状を示す統合失調症の患者さんの場合、身体活動や運動に関しては特に着目すべきポイントといえるのです。
統合失調症患者の症状や機能と運動には密接な関係があることがわかってきており、精神科の作業療法でもエビデンスを意識しながら介入していきたいところです。

統合失調症患者の運動に関する研究論文・レビュー

統合失調症患者の運動に関する研究論文・レビュー

統合失調症のある人を対象に運動介入を行った研究はいくつもあります。
研究論文そのものもあれば、複数の論文をレビューした結果をまとめた報告も存在します。
ここでは、研究論文とレビューのうち、いくつかピックアップしてご紹介します。

●統合失調症患者に対する運動の効果

泉水ら(2011)は、統合失調症患者と気分障害患者を対象に運動プログラムを実施し、気分に生じる変化を調査しています。
この研究で用いた運動には、ピラティス、ダンス、フットサル、バレーボール、ウォーキングが含まれ、実施期間は6カ月としました。
結果、どのような種類の運動でも、統合失調症や気分障害の患者さんの感情状態の改善に有効であることが示されています。
また、ヒップホップダンスの実施前後における感情が、気分障害群では快感情が、統合失調群においては快感情、リラックス感、不安感が有意に改善したとしています。
この研究では、統合失調症患者の感情状態が、もともと気分障害患者よりも低いという特徴がありました。
しかし、感情が低調な統合失調症の患者さんにも、運動によって感情状態の改善が期待できることを示しています。
統合失調症の患者さんでは感情が平板化する特徴がありますが、そういった特性のある方々にも運動による感情状態の改善が期待できるでしょう。

●統合失調症患者に対するヨガと身体運動の比較

精神科作業療法、精神科デイケアなどでは、よくプログラムとしてヨガを採用します。
外部から講師を招いてヨガを行うこともあるほど、広く取り入れられていますが、その効果について調べたレビューがあります。
精神疾患のうち、特に統合失調症に関しては、ヨガをプラスして実施することが効果的であると示している報告は多数あります。
Gangadhar Bangaloreら(2012)らは、それらの報告を集めてレビューを行っています。
他の身体運動と比較したとき、ヨガを行ったグループでは症状が改善したこと、生活の質(QOL)が向上したこと、感情に関する写真を正確に認知できたことなどが示されています。
ただ、生理学的にどのような変化があるのか、すべてが明らかになっているわけではありません。
ウエイトリフトとヨガを比較した研究では、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」の濃度が上昇することが影響しているのではないかと考える立場もあります。

●統合失調症患者の認知機能と有酸素運動の関係

統合失調症では、認知機能に障害が生じることも珍しくありません。
記憶、理解、思考、判断、注意集中、問題解決能力など、さまざまな機能が低下し、日常生活にも支障をきたすことがあります。
Firthらのレビュー(2016)では、統合失調症患者を対象として、運動と認知機能の関連を調べた研究を調査しています。
その多くの研究では有酸素運動を用いており、運動群ではコントロール群よりも認知機能が大幅に改善したことが示されています。
特に、社会的認知、作業記憶、注意の機能において運動が効果的である可能性が提示されました。
また、インストラクターの指示や監督によって、良い結果がもたらされる可能性についても触れられているため、指導者の役割の重要性についてもうかがえます。

精神科作業療法やデイケアで取り入れたい運動機器

精神科作業療法や精神科デイケアでは、すでに多くの施設で運動プログラムを取り入れています。
通常のウエイトトレーニングよりもヨガが症状の改善に効果的だという報告もあれば、有酸素運動が認知機能を大きく改善すると示唆する報告もあります。
実際には指導者の関与も大切になるため、声かけをしながら使用することが望ましいですが、施設に運動機器を設置しておくと患者さんが気軽に利用できるでしょう
集団での活動に抵抗がある状態の患者さんでも、こうした機器を使えば自分のペースで運動できる利点もあります。

●ニューステップ T4r

ニューステップ T4r

座った状態で使用できるため、転倒のリスクも少なく、安全に全身運動を行うことができます。
全身運動はもちろんのこと、上肢だけ、下肢だけ低負荷から高負荷まで調整できる点も使い勝手が良いです。
また、心拍数、歩行速度、消費カロリー、歩数、運動時間などがパネルに表示されます。
自身で日々の運動量に関して記録をつけてもらっても、モチベーションを引き出すことにつながる可能性があります。
反復的に身体を動かすことで有酸素運動になるため、一定期間の介入前後で認知機能評価をしてみても効果検証できるでしょう。
https://www.og-wellness.jp/product/rehabilitation/bg9nst4r

●ラボードNEXT

ラボードNEXT

ワイヤレス脈拍計で「定脈拍トレーニング」もできるトレッドミルです。
トレッドミルの傾斜と速度に関しては、設定した脈拍に応じて、自動的にコントロールされる画期的な仕様になっています。
液晶タッチパネルは見やすく、速度、時間、消費カロリーなどの情報を表示してくれます。
走りやすさ、関節への負担減少を考えて作られた製品であることも魅力です。
散歩やウォーキングなどのレクを好む患者さんもいますが、トレッドミルがあれば、天気や季節にかかわらず歩くことができます。
https://www.og-wellness.jp/product/rehabilitation/bg2810-2910

統合失調症の患者さんの身体活動に介入を

統合失調症の患者さんと、スポーツなどのプログラムを通して身体を動かしている医療従事者もいることでしょう。
単純に「体力をつける」という目的だけではなく、その先にある生活習慣病予防、睡眠リズム、認知機能の改善も視野に入れることが望ましいです。
特に慢性期の患者さんでは身体活動量が著しく減少していることもしばしばなので、必要性を認識してもらったり、やる気の出る活動をともに探したりしながら介入していきましょう。

参考:
泉水宏臣,他:精神疾患患者への運動療法−デイケア施設における実践からの提言−. 体力研究109, 2011.(2020年2月27日引用)
N Gangadhar Bangalore, Shivarama Varambally:Yoga therapy for Schizophrenia. Int J Yoga5, 2012.(2020年2月27日引用)
Joseph Firth, Brendon Stubbs, et al.:Aerobic Exercise Improves Cognitive Functioning in People With Schizophrenia: A Systematic Review and Meta-Analysis .Schizophrenia Bulletin43, 2016.

  • 執筆者

    高木雪絵

  • 作業療法士の資格取得後、介護老人保健施設で脳卒中や認知症の方のリハビリに従事。その後、病院にて外来リハビリを経験し、特に発達障害の子どもの療育に携わる。
    勉強会や学会等に足を運び、新しい知見を吸収しながら臨床業務に当たっていた。現在はフリーライターに転身し、医療や介護に関わる記事の執筆や取材等を中心に活動しています。
    保有資格:作業療法士、作業療法学修士

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