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クリニック・治療院 OGメディック

  • 桑原

    公開日: 2020年04月30日
  • リハビリ病院の悩み

日本集中治療医学会が推奨する急性期病院における新型コロナウイルス感染患者(COVID-19)の理学療法管理

現在流行している新型コロナウイルスの患者さんに対して、理学療法を行う上でどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
日本集中治療医学会が示した急性期病院におけるCOVID-19に対する理学療法管理のコンセンサスについて解説しましょう。

新型コロナウイルスの理学療法気をつける点は?

COVID-19の患者さんに対する理学療法の目的と主な症状

COVID-19患者さんの理学療法の目的、どのような症状が理学療法の治療対象となるのか、またどのような症状に対してどのように介入すべきなのでしょうか。

●コンセンサスが示すCOVID-19患者さんの理学療法の目的は?

今回のこのコンセンサスは急性期を対象にしており、ICUや隔離病棟内での新型コロナウイルス感染が陽性と診断された患者さんに対していかに関わるべきか、関わる際に気をつけるべきことは何か、また関わる上で必要な知識や教育について書かれています。
COVID-19患者さんの理学療法の目的は、呼吸理学療法と身体的リハビリテーションを通して、重篤な疾患の生存者である患者さんに自宅復帰を促すことです。

●COVID-19の症状の中でも理学療法の治療対象になるものは?

  1. 1)喀痰はCOVID-19の主な症状には含まれていないが、基礎疾患などさまざまな状況により喀痰が困難となり、呼吸理学療法が効果的と思われる場合。
  2. 2)人工呼吸器などを使用する上で鎮静が必要な場合や発熱には、長期臥床が必要となることもあり、廃用症候群の予防や全身運動などの運動療法が必要な場合。

では理学療法の介入が必要となることもあります。
しかし、感染防護具の不足を助長しないためにも安易に隔離室内への入室をするべきではなく、事前にスクリーニングを行い、対象患者を絞り込むことが必要です。
以下はコンセンサスが示す患者さんのスクリーニングです。

呼吸理学療法 呼吸器症状軽症:
自己排痰可
O2≦5L , SpO2≦90%
気道クリアランスや喀痰採取のための理学療法介入なし
患者さんとの接触なし
呼吸器症状中等度:
呼吸器疾患や神経筋疾患の既往
排痰が困難または予測される
気道クリアランスのための呼吸理学療法の介入
リハビリスタッフは空気感染予防策
人工呼吸器をしていない患者さんにはサージカルマスクの装着を依頼する
呼吸器症状中等度:
滲出液を伴うコンソリデーションがあり、自己排痰が困難
(例:ラ音、弱い湿性咳嗽)
肺炎や上気道感染による重篤な症状
(例:呼吸困難、頻度の高いまたは重度な湿性咳嗽、コンソリデーション所見)
気道クリアランスのための呼吸理学療法導入を考慮
(咳嗽が弱い、痰が多い場合、肺炎や分泌物の貯留などの所見が画像上で見られた場合には介入を考慮)
リハビリスタッフは空気感染予防策
人工呼吸器をしていない患者さんにはサージカルマスクの装着を依頼する
運動療法 臥床により機能低下を引き起こす可能性が高い、もしくはすでに著しい機能低下を有している場合
例:機能低下を引き起こす多数の合併症や既往歴を持っている場合、フレイルなどの患者
理学療法を依頼

スタッフは飛沫感染予防
(密接な接触がある場合やエアロゾルを発生させる可能性がある場合には空気感染対策)
人工呼吸器をしていない患者さんにはサージカルマスクの装着を依頼する

空気感染予防:N95/P2マスク・耐流体性長袖ガウン・ゴーグル/顔面シールド・手袋
飛沫感染予防:サージカルマスク・耐流体性長袖ガウン・ゴーグル/顔面シールド・手袋

ほかにも、隔離室内に入室せずに医師やナースに電話での質問などにより判断し、直接介入でなくてもアドバイスによって試みることも大切です。

COVID-19患者さんに対する理学療法を行う上で学んでおきたいこと、避けるべき行為

急性期の理学療法を行う上で必要であるリスク管理の知識のほかに、日頃あまり行わないガウンテクニックやさまざまな機器の管理などの知識を得ることも重要です。
また患者さんを担当する上で気をつけるべきことは一体どのようなことなのでしょうか。

●e-ラーニングやビデオの視聴などでCOVID-19ケアに必要な知識を得よう!

COVID-19患者さんの受け入れ施設のなかには、ICU症例に対するリハビリテーションや呼吸理学療法に経験が豊富でないスタッフもいらっしゃるかもしれません。

このコンセンサスでは無料のe –ラーニングコースの紹介がされています。
https://central.csds.qld.edu.au/central/courses/108

呼吸療法認定士の認定機関でもある3学会(日本呼吸療法医学会・日本集中治療医学会・日本救急医学会)が合同で、教育ビデオを作成しています。
http://square.umin.ac.jp/jrcm/news/news20200415.html

ほかにも、東京都福祉保健局などが防護具の着脱方法などをビデオで説明しています。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/smph/iryo/kansen/shingatainflu/cyakudatsu.html

これらのリソースを参考にして、事前に知識を得ておくことも大切です。

●清潔な身なり、シフトの柔軟な対応などCOVID-19の患者さんを担当する上で気をつけたいこと

リハビリスタッフ側にもCOVID−19患者さんを担当する上で心がけたいこともあります。

  1. 1)N95マスクをフィットさせるためにも、リハビリスタッフはひげをそることが望ましい。
  2. 2)液体を通すことがなく、さらに拭き取りが可能な靴を着用する。
  3. 3)私物の着用は最低限にする(アクセサリー、時計、携帯電話、ペンなど)、聴診器はできれば患者さんごとに専用のものにすると良い。
  4. 4)体液暴露が大量となる場合には、ディスポーザルのプラスチックエプロンもあわせて使用する。
  5. 5)髪は後ろで束ね、ヘアキャップなどを使用する。

感染患者さんと関わる際には使用する物品はディスポーザルできるものが好ましいでしょう。
また、感染者ICU・非感染者ICU担当の指導できる立場にある理学療法士2名を各シフトに配備できるようにする、ICU経験のあるパートタイマーなどの労働時間を調整する、または1日当たりの勤務時間を延長するなどの調整も考慮しましょう。
妊娠中、高齢、免疫抑制中、重篤な慢性疾患を持っているリハビリスタッフをCOVID-19の患者さんの居る配置にさせないようにしましょう。

COVID-19患者さんにおける呼吸理学療法の推奨と理学療法士に対する個人防護具の推奨事項

呼吸理学療法が必要となるCOVID-19患者さんにおいては、どのような手技が推奨されているのでしょうか。
現在いわれている最善の方法についてお話ししましょう。

●人工呼吸器装着下でも腹臥位の有用性が示唆されている

COVID-19症例を多く扱っている世界のさまざまな施設の症例報告において、人工呼吸器装着下では腹臥位管理が効果的な方法であることが示唆されています。
しかし腹臥位管理を行う上では、圧迫を受ける部位の管理や管理に必要な人員、専門知識が必要だといわれています。
さまざまな点を考慮し、できる限りで対応しましょう。
また安全に行えるのであれば、早期からの全身調整運動などを行い、早期離床を促しましょう。

●エアロゾルが発生するような呼吸理学療法の手技の際には空気感染対策を!

呼吸理学療法の手技のなかには、エアロゾルと呼ばれる飛沫よりも小さく空気中に浮遊する微小な気体を起こさせるものがあります。

  1. 1)咳の誘発やハフィング
  2. 2)体位ドレナージ、呼気振動やパーカッション、咳嗽介助手技
  3. 3)マニュアルハイパーインフレーション
  4. 4)吸引
  5. 5)吸気筋トレーニング
  6. 6)咳嗽を誘発するような運動療法

などの手技を行う場合には、飛沫感染予防ではなく、空気感染予防を行いましょう。

コンセンサスを理解し、COVID-19感染リスクから自らを守って理学療法業務を行おう!

COVID-19患者さんのケアを行う可能性のある急性期病院では、医療従事者を感染のリスクから守るためにも、理学療法の介入に慎重になる必要があります。
適応や診療内容による防護具の使い分け、リハビリスタッフ自身が気をつけるべきことなどを十分に理解しての介入が重要です。
しかし、まだ未知の部分の多い新型コロナウイルスへの対応は今後も変化する可能性が高く、このガイドラインも修正されていくことでしょう。
新しい知識や情報の収集も引き続き継続して行うことをお勧めいたします。

参考:
日本集中治療医学会
Physiotherapy Management for COVID-19 in the Acute Hospital Setting:
Recommendations to guide clinical practiceの原文、日本語訳掲載のお知らせ.
(2020年4月24日引用)

  • 執筆者

    桑原

  • 1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
    その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。

    保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士

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