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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2020年05月29日
  • リハビリ病院の悩み

新人セラピスト必見!透析患者さんのリハビリで押さえておきたい3つのポイントをご紹介します

4月から働き始めた新人セラピストにとって、臨床はわからないことだらけで悩むことが多いでしょう。
特に、心疾患や腎疾患は学生時代に学ぶ機会が少ないですが、実臨床ではこれらを合併している患者さんを担当するケースもあります。
今回は、透析患者さんを担当したときどのような点に注意するか、どうリハビリを進めていくかについてご紹介します。

人工透析患者へのリハビリ3つのポイント

まずはおさらい、血液透析の基本的な流れ

まずはおさらい、血液透析の基本的な流れ

まずはじめに、血液透析とはどういうものか、またどのように実施されるのかについておさらいしてみたいと思います。

●透析の目的は、体の老廃物を除去して余分な水分を排泄する

慢性腎臓病(CKD)などにより腎臓の濾過機能が低下すると、尿の生成が少なくなり、体内の老廃物や水分が排泄されにくくなります。
腎障害が重度になると、水分過多による呼吸苦や倦怠感などの症状が出現するため、人工的に腎臓の機能を代替しなければなりません。
この腎代替療法の1つが透析治療であり、その中でも腹膜透析と血液透析の2つに分類されます。

血液透析は、専用の機器を用いて行う必要があること、血圧低下などのリスクがあることから、医療機関でのみ実施されます。
そのため、透析治療を行っている医療機関で働くセラピストにとって、透析の基本的な知識とリスク管理能力は必須といえるでしょう。

●血液透析は週2〜3日、1回当たり約4時間ほどで行われる

血液透析は、多くの場合3日/週のペースで行われますが、老廃物や水分貯留が軽度の場合は2日/週になることもあります。
実施時間に関しては、準備や終了後の処置などもあわせると、1回当たり4時間前後かかります。
透析が午前コースの方ではリハビリ実施は夕方からになるため、時間的な制限ができることに注意が必要です。
また、血液透析は血管シャント(動脈と静脈を吻合した部分)から血液が出入りするため、基本的にベッド臥床で行われます。
水分を減らす量に関しては、目標となるドライウェイト(透析後の体重)が設定されており、2000〜4000mlなど透析前の体重などを参考に調整されます。
除水量が多い場合、血管内の水分不足によって血圧が下がったり、倦怠感が出現したりなどの症状が出現します。

腎機能障害だけではない?併存症のリスク管理が重要

腎臓病や透析治療は、診療報酬の算定上ではリハビリの対象疾患にはならず、骨折や廃用症候群などの疾患名が対象になります。
しかし、これらの患者さんが合併しているのは腎障害だけではなく、以下のような併存症に注意する必要があります。

●糖尿病や心疾患に対するリスク管理が重要!

透析治療が必要となる原疾患において一番多いのは糖尿病性腎症ですが、近年急増しているのは腎硬化症という疾患です。
これらの疾患は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に起因するため、インスリン治療や降圧剤の内服をされている方も多いでしょう。
また、これらの生活習慣病は脳梗塞や心筋梗塞のリスクファクターになるため、血管関連の疾患に対するリスク管理が必須です。
以下に、リスク管理のために評価しておきたい項目例を挙げてみます。

  • ◯不整脈がないか心電図を確認
  • ◯既往に冠動脈の狭窄(狭心症)がないか確認
  • ◯インスリン使用後に低血糖がないか確認
  • ◯降圧剤を内服されている場合、透析後の血圧低下がないか確認

上記のように、透析をされている患者さんでは、骨折などの主病名だけでなく、併存症に対する評価が重要になります。

●フレイルやサルコペニアによって体力も低下しているケースが多い

透析患者さんは、透析液の中にタンパク質やアミノ酸が漏出するため、体内のタンパク質が不足する傾向にあります。
腎臓病の栄養指導において、タンパク制限は重要なポイントになりますが、透析治療開始後は逆にタンパク摂取量が多く設定されます。
体内のタンパク質が少なくなると、筋肉の合成能力も低下するため(同化<異化)、骨格筋量の低下や運動機能低下などにつながります。
つまり、透析患者さんではサルコペニアやフレイルなど、運動機能に関する問題を抱えることも多くなり、適切な身体機能評価とリハビリプログラム作成が重要になります。
これらの運動機能低下に関して、原疾患(骨折など)に対する評価も含めてチェックしておきたい項目を挙げてみます。

  • ◯歩行能力(6分間歩行やTUGなど)
  • ◯下肢筋力(HHDなど定量的な評価)
  • ◯ADL(FIMやBIなど)
  • ◯普段の活動範囲(問診でOK)

透析による時間的な拘束と活動量低下によって退院後に機能低下やADL低下が進行する可能性があります。
そのため、入院中のリハビリだけでなく、退院後の運動継続も視野に入れてプログラムを考えていく必要があります。

透析患者さんのリハビリで注意したい3つのポイント

ここでは、透析患者さんのリハビリを実施する上で押さえておきたい評価ポイントについてご紹介します。

●透析後は循環動態の変化に注意しよう

透析後は循環動態の変化に注意しよう

血液透析では、約4時間の間で2000ml以上の除水が行われるため、血管内の水分量がかなり少なくなります。
患者さんによっては、透析中に血圧が低下するため、昇圧剤を服用しながら透析治療を行う方もおられます。
そのため、「透析後は血圧低下や倦怠感がでていないか」を必ずチェックするようにし、極端な低血圧や倦怠感の訴えがある場合は中止することも考慮しましょう。
腎臓リハビリテーションガイドラインでは、リハビリは透析開始から1時間経ったあたりか、もしくは非透析日に実施するほうがよいとされています。
しかし、透析中にリハビリ(ベッド上の筋トレなど)をしている施設は少ないと思いますので、非透析日に限定して実施するのも1つの方法でしょう。
特に、骨折など運動器的な問題点のある方では、疼痛に加えてめまいや倦怠感などで転倒リスクも高くなるため注意が必要です。

●血圧測定時は要注意!シャントの位置を確認しよう

血圧測定時は要注意!シャントの位置を確認しよう

血液透析患者さんでは、血液の入れ替えをする部分(シャント)が必ず作成されていますが、患者さんによってその部位は異なります。
多くの場合、上腕や前腕部分に作成されますが、シャントではなく長期留置カテーテルというものが鎖骨下に入っていることもあります。
シャントの場合、血圧測定時に左右を誤ってマンシェットで加圧してしまうと、シャントを損傷する可能性があるので絶対に避けなければなりません。
透析歴が長い方の場合、シャントが発達して外見的にわかりやすく(血管部分が隆起している)なっていますが、作成間もない方ではわかりにくいでしょう。
そのため、透析患者さんを担当した場合、ご本人か担当看護師さんに必ずシャント位置を確認するようにしましょう。

●心臓や血管は大丈夫?既往歴をしっかりと確認しよう

心臓や血管は大丈夫?既往歴をしっかりと確認しよう

前述しましたが、透析患者さんは心血管系の併存症を持っていることも多く、循環器系のリスク管理が重要になります。
しかし、診療科が異なる場合や他院での治療歴がある場合、正確な情報が十分に伝わってこない可能性があります。
カルテに記載がないからといって循環器系は大丈夫だと安心せず、ご本人やご家族からの情報収集はかかさないようにしましょう。
また、服用している薬を調べることによってもある程度既往歴が推測できるため、お薬手帳やカルテの投薬情報などにも目を通しておくとよいでしょう。

今後、リハビリ専門職は内部障害に関する知識が求められる

リハビリ専門職の養成校においては、運動器系や脳血管系疾患に対する運動療法に主眼が置かれており、内部障害を深く学ぶことは少ないでしょう。
しかし、高齢化に伴い、心不全や腎不全の罹患率は上昇しており、リハビリ対象者が併存症としてこれらの疾患を抱えていることも多くなります。
特に、介護施設や訪問など、ほかの医療職がいないフィールドにおいては、担当セラピストが全身状態の管理をしなければなりません。
内部障害のリハビリに関しては、心臓リハビリや腎臓リハビリという分野が確立されてきたので、自身のスキルアップのためにも学んでみてはいかがでしょうか。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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