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クリニック・治療院 OGメディック

  • 桑原

    公開日: 2020年06月28日
  • リハビリ病院の悩み

アメリカ医療のコロナショックは医療崩壊だけではなかった。医療経営危機と日本にも忍び寄る影

新型コロナウイルスが猛威を振るい、感染者数が爆発的に増えたパンデミックでは医療崩壊、コロナショックなどという言葉がよく聞かれました。
新型コロナウイルスによるパンデミック下で、筆者の住むアメリカではもうひとつのコロナショック、医療経営危機が深刻な問題となっています。
第2波、3波の到来が心配される日本や全世界において、想定すべき課題の一つといえる医療経営危機の問題についてお話ししましょう。

もうひとつのコロナショック、医療経営危機

新型コロナウイルスが猛威を振るったアメリカで、病院やクリニックは患者の激減により大幅減収

新型コロナウイルスの影響で病院やクリニックは患者が激減

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスにより、アメリカの医療現場で起こっている経営危機の原因の一つ、それは患者数の減少です。

●新型コロナウイルス感染への恐怖により、診療控えが急増

新型コロナウイルスの世界的流行により、人との接触や外出を控える人たちが多く出現しました。
筆者の住むアメリカでは州によりその制限や期間はさまざまでしたが、一時期は全州で外出禁止令が発令され、必要不可欠な仕事をしている人以外は自宅での勤務を推奨され、そして全ての学校は休校となりました。
病院においては診療をしているけれど、新型コロナウイルス感染を恐れ受診しない、または予約を延期するといった人が増え、新型コロナウイルスに関連した部門以外は患者数が激減しました。
そのため大幅に患者数が減少し、病院の収益は大きく落ち込みました。

●予定手術は緊急性がなければ先送り。集中治療室(ICU)、医師や看護師も不足

また本来なら行われるべき予定手術などは、回復室であるICUが新型ウイルス感染症(COVID-19)の治療室として運営されているため行えません。
緊急の場合には手術も行われますが、手術に必要な人工呼吸器、人工心肺装置などの機材だけでなく、手術室で働く医師や看護師もCOVID−19患者の対応に追われ人手不足となりました。
そのため外科手術での収益も減り、多くの病院が減収となりました。

新型コロナウイルスはアメリカの医療のスタイルも変えた!オンライン診療やPPEにもコストがかかる

テレメディスンの導入により人員過剰

アメリカの医療経営危機には医療スタイルの変遷も大いに関係しています。

●新型コロナウイルスにより、再診患者はオンライン診療も可能になり、外来看護師や受付などの人員が過剰に

新型コロナウイルスの流行により、新たな診療の手段として導入されたのが、テレメディスン(オンライン診療)です。
初診の場合には、専門科の診断に必要な兆候を見逃してしまう可能性もあるため勧められていませんが、症状が安定している再診患者はビデオ通話などを利用しての診療、処方が可能となりました。
しかしここで問題となるのが、これまで患者の診療補助のために雇用されていた病院やクリニックの事務、看護師などが必要とされなくなることです。
テレメディスンにより人員が過剰となり、次章でお話しする一時解雇を引き起こしました。

●医療者、患者の双方を守るための個人防護具(PPE)やオンライン診療のソフトウェアにもコストが

病院における診療には感染予防が必須です。
そのため患者と医療者の双方を守るPPEが重要になります。
それにも当然ながらコストがかかります。
たとえば病院内で患者を診療する際には、高額なN95マスクの着用が義務付けられています。
またオンライン診療のソフトウェアの導入、アプリのダウンロードにも経費がかかり、病院がその費用を負担しています。

アメリカでの実話:新型コロナウイルスの経営危機に、大量の一時解雇、病院の閉鎖も

アメリカにおける医療経営危機の末に起こった、医療現場での実際を現地在住の筆者がお伝えします。

●患者の激減により減収の病院は不採算部門の職員の一時解雇(Lay-off)

新型コロナウイルスの影響による減収で、アメリカの病院ではLayoffと呼ばれる一時解雇がスタッフに対して行われました。
一時解雇の例は、4月初旬に6月または7月まで休んでくれといった事例があります。
一時解雇中は失業保険の申請はでき、医療保険などは引き続き使用可能です。
この一時解雇に至った数は全米で約15億人となり、新型コロナウイルスによる経営危機の大きさがうかがえます。

●新型コロナウイルスにより医療グループは診療を集約。小規模病院を一時閉鎖するところも

小規模のクリニックなどではオンライン診療などへの移行もあり、外来診療のために開院する必要が一時的になくなったところもあります。
筆者の住む都市では、医療グループのひとつが200床ほどの小規模病院を一時閉鎖し、雇用している病院職員のすべてを一時解雇したところもあります。
突然の病院の一時閉鎖などは日本では考えられない事態ですが、この未曽有のウイルスがもたらす影響は計り知れないものがあります。

新型コロナウイルスはアメリカで医療経営危機を招いた。今後、日本にも同様の影響が起こらないか考えておこう

アメリカでの新型コロナウイルス感染拡大がもたらした影響は、医療崩壊だけではなく医療の経営危機にも及びました。
それは医療従事者の一時解雇や病院の一時閉鎖などを招き、個人の経済活動にも大きな影響を与えます。
今後も第2波、第3波と長期的な影響が懸念されます。
日本でも新型コロナウイルスによる経営危機は起こり得る問題といえるため、対策を考えておく必要があるのではないでしょうか。

参考:
World Socialist Web Site Nearly 1.5 million health care workers laid off in pandemic-fueled jobs massacre (2020年6月21日引用)

  • 執筆者

    桑原

  • 1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
    その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。

    保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士

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