整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2020年07月22日
  • リハビリ病院の悩み

心音の聴診ってどうすればいいの?その目的と臨床での活用方法を解説します

身体機能の改善を目的とするリハビリ専門職にとって、聴診はあまり馴染みのない評価項目ではないでしょうか。
また、「呼吸音は聞いたことがあるけど心音は自信がない」、「学生時代に習っていない」というかたも多いでしょう。
リハビリ専門職にとっていかに聴診が重要か、具体的な聴診方法と臨床での活用方法をご紹介します。

心音の聴診をする意義を理解し利用者のリハビリに活かす

今さら聞けない、心音を聴診する目的とは?

今さら聞けない、心音を聴診する目的とは?

まず最初に、心音を聴診する目的について解説したいと思います。

●心拍=脈拍ではない、聴診で心拍数の確認をしよう

バイタルサインを評価する際に血圧や脈拍は必須項目ですが、脈拍=心拍と考えていないでしょうか?
脈拍は、心臓から出た血液が血管壁を押し上げるため体表で触れることができます。
そのため、心臓が1回収縮すると1回脈が触れると考えがちですが、必ずしもそうではありません
例えば、心房細動や心室性期外収縮などの不整脈があると、心室に血液が充満していない状態で血液を送り出すことになります。
そのため、橈骨動脈などの末梢血管まで十分な血液が供給されない場合、体表(手首)で触れることができないこともあります。
電動血圧計で計測した脈拍が60回だとしても、実際に心臓が90回動いていて、30回ぶんは末梢に届いていないかもしれません。
検脈で運動の強さを設定している場合、正しい心拍数が計測できないと事故が起こる可能性もあります。
そうならないためにも、心拍数は検脈ではなく心電図や聴診で評価することを癖づけることが大切です。

●既往に心疾患はない?心雑音を確認してリスクの早期発見をしよう

心音の聴診をする際、前述したリズムは重要なポイントですが、心雑音の有無を確認しておくことも重要です。
詳しくは後述しますが、心音を聴診した際に血液の流れに異常があると心雑音が聞こえます
急性期病院などでは診察やさまざまな検査で既往歴の有無やその程度を確認できますが、必ずしも全てが確認されているわけではありません。
僧帽弁閉鎖不全症や大動脈弁狭窄症などいわゆる弁膜症を既往にもっているかたは多く、循環器系のリスクを把握できているか否かは、安全性の観点から大きな差になります。
心音を聴診した際に心雑音がないか、新たな心雑音が出現していないかを確認しておくことは重要です
また、心雑音を確認できた際は、労作時呼吸苦がないか、足がむくんでいないかなど心不全の評価につなげることができます。
心音の聴診から他のフィジカルアセスメントに結びつけることによって、より高いレベルでのリスク管理ができるようになるでしょう。

まずは覚えたい、心音を聴診する方法と心雑音の種類

まずは覚えたい、心音を聴診する方法と心雑音の種類

ここでは、具体的な聴診方法について、また心雑音の種類と聞こえ方について解説していきます。

●正常な心音ではⅠ音とⅡ音が聞こえる

心音というと、よく漫画などで「ドクン」という表現がされることが多いですが、実際の心音は2つの音が発生しています。
この2つの音はⅠ音とⅡ音と呼ばれており、実際の聴診では「ドッドッ(Ⅰ音Ⅱ音)」と聞こえます
「2つ聞こえるけどどっちがⅠ音かわからない」と悩むかもしれませんが、Ⅱ音のほうが気持ち短く聞こえる(早く途切れる)ことが特徴です。
また、聴診部位によってどちらが大きく聞こえるかも変わってくるため、複数箇所で聴診することで2つの音を理解しやすくなると思います。

●最低限おさえておきたい2つの聴診部位

最低限おさえておきたい2つの聴診部位

心音の聴診では、聴診部位によって音の聞こえ方が異なるため、必ず複数箇所で聴診する必要があります。
ここでは、おさえておきたい2つの聴診部位について解説します。

第2肋間胸骨右縁(2RSB)

この部位は大動脈弁に近い場所になるので、大動脈弁の狭窄や閉鎖不全がある場合に心雑音を聴取することができます。
また、この部位ではⅠ音よりⅡ音のほうが大きく聞こえることも特徴です。

左第5肋間と鎖骨中線の交点(5LMCL)

この部位は左心室や心尖部に近い領域のため、僧帽弁に異常がある場合に心雑音を聴取しやすくなります。
2RSBとは異なり、Ⅱ音よりⅠ音のほうが大きく聞こえることが特徴です。

●覚えておきたい心雑音の種類

心臓の中でなにか循環トラブルが発生した場合に聞こえる雑音を心雑音といいます。
心雑音にはいくつかの種類がありますが、ここでは臨床で遭遇しやすい2つの心雑音について解説します。

◯収縮期駆出性雑音

読んで字のごとく、心臓の収縮期に血液が駆出することで発生する雑音であり、多くの場合、心臓の弁が狭くなっているときに聞こえます。
この雑音が聞こえる代表的な疾患として大動脈弁狭窄症が挙げられ、臨床でも聴取する機会が多いです。
実際に聴診した際は、「ドブォーッドッ、ドブォーッ(Ⅰ音)ドッ(Ⅱ音)」とⅠ音の始めが部分的に聞こえることが多く、狭窄が高度になるほど音が高くなる傾向にあります
聴診部位としては、大動脈領域の音が聞きやすい2RSBがいいでしょう。

◯収縮期逆流性雑音

同じ収縮期でも駆出性雑音とは異なり、血液が逆流する際に生じる雑音を収縮期逆流性雑音と呼びます
代表的な疾患は僧帽弁閉鎖不全症や大動脈閉鎖不全症が挙げられ、こちらも臨床で聴取する機会が多いです。
一概にいえませんが、閉鎖不全による雑音は「ブォーッドッ、ブォーッドッ」と聴取されることが多く、Ⅰ音がまるまるかき消されているような聞こえ方をします。

循環器疾患だけじゃない、臨床で聴診を活用しよう

循環器疾患だけじゃない、臨床で聴診を活用しよう

心音の聴診は循環器疾患患者さんのアセスメントと思っているかたも多いですが、必ずしもそうではありません。
ここでは、臨床でどのように聴診を活用するかについてご紹介します。

●新規の患者さんに潜む循環器疾患のリスク

急性期や回復期で勤務するセラピストは、定期的に新規の患者さんを担当することになりますが、その際に十分な情報収集がおこなえているでしょうか。
例えば、大腿骨頸部骨折の患者さんを担当した場合、荷重の量や疼痛、筋力や関節可動域などを確認するでしょう。
また、カルテやサマリーなどから既往歴を確認して、他の併存症がないかをチェックすることも重要です。
しかし、心不全という既往歴を確認したとしても、なにが原因で心不全をおこしているが、現在は症状がなく落ち着いているのかなどはわかりません。
その際、心音を聴診することによって不整脈の有無や心臓弁膜症の有無を確認できると、見えていなかった循環器的なリスクに気づくことができます
また、「心拍のリズムが乱れているけど、既往に心房細動はないのかな」、「抗凝固薬を飲んでいるはずだから出血には注意しよう」など、別の評価につなげることができます。
循環器疾患だから心音の聴診なのではなく、循環器疾患以外だから心音でリスクの評価をすることが大切です。

●医師がいないけど大丈夫?訪問やデイサービスなどでは必須の評価

急性期では聴診や各種検査などの所見は医師が把握しているため、セラピストはリハビリのリスク管理として聴診をおこなうことになります。
しかし、訪問リハビリやデイサービスにおいては、セラピストが身体所見のチェックをして、運動が可能かを判断する場面が多いです。
新規利用者さんの場合はもちろんですが、毎回のフィジカルアセスメントにおいて心音を聴診しておくことは大切です。
「先週は大丈夫だったのに、今日は心拍のリズムが乱れている」、「5LMCLで雑音がするし、肺では水泡音(呼吸音)が聞こえる」などの気付きにつながります。
この場合では、心不全が悪化しているもしくは悪化する可能性が高く、運動中の自覚症状の有無だけでなく、ケアマネやかかりつけ医に報告したほうがよいでしょう。
心音の聴診ができるかできないかで、リハビリ中の急変や再入院を回避することにつながるため、心音の聴診は地域で働くセラピストにとって必須の評価といえるでしょう。

フィジカルアセスメントはセラピストの武器!

侵襲的な検査ができないリハビリ専門職にとって、視診や触診、聴診などのフィジカルアセスメントは非常に重要な評価項目です。
心音の聴診はリハビリ実施の有無だけでなく、ときには診察の必要性についても判断することにつながります。
特に、循環器疾患を担当しないセラピストこそ、聴診技術は身に付けておきたい必須の評価項目です。
本記事で紹介した以外にも様々な心雑音があり、実際の聞こえ方は人それぞれです。
そのため、まずはしっかりと自分の耳を鍛えることが大切であり、苦手意識を克服するためにも、毎日聴く習慣をつけるところから始めてみてはいかがでしょうか。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)