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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2020年08月24日
  • リハビリ病院の悩み

災害時の対応は大丈夫?リハビリ専門職として取り組むべきことを考えよう

震災や水害などの天災による被害を目の当たりにするたび、災害時対応や防災の大切さを再認識させられます。
特に医療機関で勤務するスタッフは、被災者の受け入れや入院患者の対応などが必要になるため、災害に対して高い対応能力が必要です。
リハビリ現場での災害時対応や防災の取り組みについて、筆者の経験も踏まえてご紹介します。

リハビリ専門職が「いざ」という時のためにできる備え

リハビリ室の安全管理は大丈夫?普段からチェックすべきポイント

リハビリ室の安全管理は大丈夫?普段からチェックすべきポイント

リハビリ(リハビリ室)と災害はあまり結びつかないイメージがあるかもしれませんが、実は危険が潜んでいます。
ここでは、普段から注意しておくべきチェックポイントについてご紹介します。

●災害発生時の避難ルートは確保されているか

医療機関で地震や火災などが発生した場合、まずは患者さんの安全を確保することが重要になります。
リハビリスタッフの場合、リハビリ室にいる患者さんの安全を確保し、必要に応じて迅速に避難させなければなりません。
そのため、日頃から避難ルートを意識しておく必要がありますが、皆さんの施設はしっかりルートが確保できているでしょうか?
筆者の施設では、リハビリ室の入り口(自動ドア)、屋外へつながる非常階段(リハビリ室は2階)、屋外の広場に続く開戸と3つの経路があります。
リハビリ室が1階にある場合、屋外へのアクセスが比較的簡単かもしれませんが、2階以上や地下にある場合は注意が必要です。
エレベーターが止まる、入り口が使えなくなるなど物理的に経路が閉鎖された場合、職員用の入り口を使用するケースも多いです。
しかし、荷物が散乱している、狭くて車椅子が通れないなどの状況では避難もままならないため、常日頃から避難経路を意識しておくことが大切です。

●リハビリ室でも火災は発生する?消火設備の確認をしよう

リハビリ室でも火災は発生する?消火設備の確認をしよう

2013年の10月に福岡市の診療所で火災が発生し、10人もの方が亡くなるという事故が起きました。
この火災の原因は、ホットパックの電源プラグとコンセントの間にたまった埃が原因でトラッキング現象が起こったためと考えられています。
また、防火設備の点検に不備があったため被害が拡大したと報告されています。
この事故から、火災はどこでも起こる可能性がある、日頃から防災設備を点検するなど意識を高くもつことの重要性が再認識されました。
リハビリ室において、火災防止や火災発生時に備えてチェックしておくべき項目を以下に挙げてみます。

◯コンセント類の安全管理

使用しない場合は抜く、埃がたまらないようにコンセントカバーをつけるなどの対応が必要です。

◯消火設備の種類と使用方法

自動的に放水するスプリンクラー以外にも、消火器や消火用散水栓などの消火設備がありますが、設置場所や使用方法についてスタッフに周知することが大切です。

◯災害発生時の初動対応

地震や火災が発生した際、被害状況を確認する、上司に報告する、患者さんの安全を確保するなど、誰がどの役割を担うか決めておくことが大切です。

◯避難経路の確保

メインとなる出入り口が通れない場合はどうするか、またその避難経路に障害物を置いていないかなどを確認し、いつでも通れるようにしておきましょう。

◯外部への通報手段

内線電話などが使えない場合を想定して、火災報知器や非常ベルの設置場所を確認し、施設の協力が得られるのであれば実際に作動するかなどを確認するとよいでしょう。

ぶっつけ本番では動けない!災害時シミュレーションとマニュアル作成を

ぶっつけ本番では動けない!災害時シミュレーションとマニュアル作成を

ここでは、リハビリスタッフができる具体的な災害対策についてご紹介します。

●災害時シミュレーション(初動訓練)

たとえば、平日の昼間に大規模な地震が発生した場合、リハビリ室には多くの患者さんやスタッフがいるでしょう。
その際、転倒転落によりけがをした場合、外部の救助が必要な場合、安全な場所へ避難する場合など、多くのシチュエーションが考えられます。
そのため、災害発生時にしなければならないことや役割分担をあらかじめ決めておいて、災害発生を想定したトレーニングを行うとよいでしょう。
以下に、災害時シミュレーションを実施する際のポイントを挙げてみます。

◯被害状況は具体的に想定する

地震の場合、震度や火災の有無、患者さんの数と負傷者の数など、被害は具体的に想定したほうが訓練を進めやすいです。

地震の規模 時間 患者さんの人数 負傷者の人数と状況 火災 その他の被害
震度7 午後1時30分 10人 4人(うち2人は緊急で処置が必要) ほかのフロアで発生 棚が倒れて物品が散乱
入り口の窓ガラスが割れている

◯責任者、現場リーダーなど具体的に役割を決める

災害発生時は、すべての部門の状況を災害対策本部が把握し、施設長に全体の被害状況を報告する必要があります。
リハビリ部門においても被害状況を確認するスタッフ、情報を集約するスタッフ、上層部に報告するスタッフなど役割分担が必要になります。

●災害時マニュアルの作成とスタッフへの周知

災害が発生した際は多くの人がパニックになり、最初にしなければいけない対応(初動)が遅れると被害が拡大します。
災害時シミュレーションを行う場合においても、必ず災害時対応マニュアルに沿って訓練しましょう。
以下に、筆者の施設で使用している火災時の対応マニュアルをご紹介します。

◯第一発見者 役割は初期消火

  1. 1)火事ですと大きな声で叫ぶ
  2. 2)火元の患者さんを避難させる
  3. 3)自らの安全確保をして、消火器や散水栓での消火をはじめる
  4. 4)防災担当職員が到着するまで消火活動を継続

◯周囲のスタッフ 患者さんの避難誘導

  1. 1)避難経路を確認する
  2. 2)患者さんに避難を指示する(まずは歩行可能な患者さんから)
  3. 3)避難経路の安全確保と避難誘導
  4. 4)自らの安全確保(マスク装着、口鼻を覆う、低い姿勢になる)

消火活動を行う際、火の勢いによっては消火を断念して避難するなどの切り替えが必要になるので、色々なパターンを想定してトレーニングするとよいでしょう。

災害時、リハビリ専門職ができる行動とは?

災害時、リハビリ専門職ができる行動とは?

リハビリ専門職は、医師や看護師とは違って負傷した患者さんに対して医療処置が行えませんが、災害時の現場において重要な役割があります。

●自力で動けない患者さんの避難援助

リハビリ室にいる患者さんを避難誘導した後は、各病棟において避難誘導のサポートにまわることも必要になります。
病棟によっては、看護師さんが医療機器の管理や処置に手一杯になっているかもしれないので、避難経路や避難方法の確認をすることが求められます。
限られた時間の中で、この患者さんは安全に歩行可能か、歩けない場合車椅子かストレッチャーのどちらがよいかなどの判断が必要です。
また、誘導の際には避難経路の安全を確保したり、歩行介助などの役割を担うとよいでしょう。
誰がどの病棟を担当するか、必要とされる業務をピックアップするなど、マニュアル作成やシミュレーションの際に確認しておくことが大切です。

●災害対策本部のサポート

大規模な病院の場合、リハビリ室の面積も広くとってあることが多いため、このスペースをいかに活用するかが重要になります。
施設によっては、大規模災害発生時の対策本部をリハビリ室に設置するケースもあるため、その場合はスピード感のある対応が求められます。
患者さんの避難と並行して、リハビリ室のレイアウト変更や必要物品の設置などが必要になるため、物品の保管場所などについても熟知しておく必要があります。
その他としては、災害対策本部に集まってきた情報を整理する、または被害が大きい部署の状況確認を行うなどのサポートが必要です。
また、2020年7月に熊本県を中心に発生した水害では、病院のリハビリ室が救護スタッフや災害派遣チームの待機場所として活用されました。
施設によって災害時対応はさまざまであり、自身の勤務する施設でのマニュアルや対応を確認し、求められる役割について理解しておきましょう。

医療者として、防災に対する高い意識をもっておこう

災害はいつどのタイミングで発生するかわからないため、発生時にはいかに被害を最小限にするかが重要になります。
また、災害発生時の迅速な対応は重要ですが、日頃からの防災に対する取り組みも同じくらい重要といえるでしょう。
災害時の避難訓練や消火技術の習得など直接的な訓練も大切ですが、整理整頓や機器類の点検など、日頃の小さなことが大きな成果につながることもあります。
医療職として自分たちに何ができるか、防災と災害時対応に対する高い意識をもって日常業務にあたることが大切です。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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