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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2020年08月31日
  • リハビリ病院の悩み

臨床6年目のセラピストは必見!診療参加型実習の指導についてご紹介します

ひと昔前まで、リハビリ職の臨床実習といえば大量のレポートや課題に追われる、担当患者さんの治療時間以外は見学といった流れが多かったでしょう。
しかし、ここ数年で臨床実習の在り方が変わってきたこと、実習指導者の要件が定められたことなどから、指導方法も変えていかなければいけません。
初めて臨床実習の指導を行うセラピストのために、実習の指導例などをご紹介します。

今 実習指導者に求められている診療参加型実習とは

従来の臨床実習と診療参加型実習の違い

従来の臨床実習と診療参加型実習の違い

「診療参加型」とはいっても、漠然としていてよくわからないと思う方も多いでしょう。
ここでは、従来の実習と具体的に何が違うのかを考えてみたいと思います。

●患者担当制ではなく、診療の補助として実習を行う

従来の臨床実習では、患者さんの基本情報を収集してから評価項目を決定し、評価の後は自身が考えたプログラムを実施するという流れでした。
病態や評価項目などわからないことは文献などで調べたり、指導者に出された課題をこなすことで対応していたでしょう。
これらいわゆる患者担当制では、時間をかけて1つの疾患に対するリハビリテーションを考えることが目的でした。
そのため、動作分析で長い時間悩んだり、うまく考察が書けなくて苦労したセラピストも多いと思います。
いっぽう、診療参加型実習とは、指導者の補助として診療現場で学びつつ、実際に自分がしたことや疑問に思ったことを考えていくことになります。
たとえば、A患者さんの歩行補助をしたとき、B患者さんのADL練習をしたとき、何ができなかったのか、自分に何が必要なのかを考えることが大切です。
そのため、答えにたどり着くために1つの疾患を掘り下げていくというよりかは、自分自身で課題を見つけて解決していくことが重要になります。

●臨床における考え方や役割を学ぶ

従来の実習評価項目であった評価技術や治療技術、学生としての資質などはもちろん大切ですが、診療参加型ではより臨床場面に即した学習が必要です。
たとえば、片麻痺の患者さんに対してはこの治療法がいい、動作介助はこうすればいいといった文献的な考え方だけでは不十分です。
臨床においては、入院からの日数やリハビリの進捗状況、患者さんの生活スタイルなどによって治療の選択肢は無限にあります。
患者さんが直面している問題は何か、解決するにはどうすればいいか、そのために理学療法士として何ができるかを考えていくことが大切です。
機能訓練とADL訓練だけがリハビリ専門職の仕事ではなく、多職種と協力して日常のケアを行う、必要な福祉用具の選定をするなども重要な役割です。
医療という枠組みの中で、リハビリ専門職として何が求められているか、指導者の補助として診療を行うなかで考えていくことが診療参加型の醍醐味といえるでしょう。

臨床的な考えを学ぶこと、課題に時間を費やさないことが大切

臨床的な考えを学ぶこと、課題に時間を費やさないことが大切

ここでは、筆者の指導経験をもとに、「臨床的な内容を学ぶ」ことについてご紹介したいと思います。

●学校で学んだ知識は臨床現場でどう生かされるか

筆者は急性期病院で勤務し、循環器を専門分野としているため、実習生を担当する際は内部障害を中心に指導しています。
循環器をはじめとした内部障害分野は、おそらく興味を持っている学生や専門分野としているセラピストも少ないと思うので、まずは基礎医学から学んでもらっています。
たとえば、ICUで人工呼吸器が装着されている患者さんを評価する際、呼吸の評価として胸郭拡張比や呼吸筋力を評価することはナンセンスです。
まずは、なぜ人工呼吸器が装着されたのか、酸素の受け渡しが障害されているのはどのレベルなのか(換気、拡散、循環)を考えることが第一です。
その際は、呼吸や循環の生理学は当然のことながら、酸塩基平衡など血液ガスの検査結果を読み解く必要があります。
そのため、学生時代は試験対策として勉強していた生理学の知識がなぜ重要なのか、臨床での評価にどう生かされているのかを伝えるようにしています。
ただ、実習生にとっては未知の領域に近いため、「わかるでしょ?」というスタンスではなく、「なるほど」と感じてもらえるように心がけています。
わからないことに関しても、「これを調べてきて」と課題を出すのではなく、「なぜ指導者はこういう考えをするのだろう」と実習生に疑問を持たせることが大切です。
そうすれば、「わからないから調べてみよう」というように自分で課題を見つけられるため、積極的に実習に臨むことができるでしょう。

●課題は自宅に持ち込まない、その日のうちに解決する

臨床実習において、実習生が質問すると「じゃあ明日までに調べてきてね」と指導者が返答する光景は誰もが想像できるでしょう。
しかし、それが気になってその日の臨床に集中できないこと、自宅での休息時間が削られることほど無駄なものはありません。
現在の臨床実習では、実習生の健康状態の管理やハラスメント防止が重要視されており、過度な課題提供や睡眠不足は看過できない問題です。
そのため、いかに実習時間内に解決するか、実習生が考えやすいように課題提供するかがカギになります。
筆者の場合、1つの物事に対してその場で自分なりの解答を提示するようにしています。
「すぐに答えを教えては考える力が身につかない」と思うかもしれませんが、筆者は前述したように「なぜそう考えるのか」を考えてもらうことが重要と思っています。
実習生が考えたことに対しては、病棟間を移動する時間などをつかってディスカッションして解決することで、少しでも臨床で学べる時間を確保できます。

プロとしての考え方やチーム医療の在り方を伝えよう

プロとしての考え方やチーム医療の在り方を伝えよう

診療参加型実習において、臨床場面で学ぶことは知識や技術だけではありません。
実習生が今後学ぶべきことについて、筆者の経験も踏まえてご紹介したいと思います。

●リハビリ専門職はただの職人ではない、多職種との連携を学ぶ

リハビリ専門職の業務内容は機能改善やADL向上を目的とした治療業務ですが、実際の臨床は黙々と治療をこなすだけではありません。
従来の実習では、担当患者さんのリハビリ時間に評価や治療を実施して、その他の時間は見学に当てていることが多かったかもしれません。
もちろん治療技術を高めていくことは重要ですが、クリニック以外の医療機関の場合(入院治療がある)、チーム医療にどう関わっているかを伝えなければなりません。
実習生は、多職種の集まるカンファレンスなどにも積極的に参加して、指導者がどのような発言をしているのか、自分たちに何が求められているのかを学ぶことが大切です。
また、回復期病院や介護保険分野での実習においては、患者さんの自宅を訪問したり、介護スタッフと意見交換をする場面もあるでしょう。
リハビリ専門職が地域社会でどのような役割を担うか、ほかの職種から何を求められているかを知ることで、より幅広い視野を持つことができます。
現在、医療機関以外(デイサービスや訪問看護など)での臨床実習は行われていないため、介護保険サービスを併設している医療機関での経験は貴重であるといえます。

●臨床家は臨床業務だけじゃない、医療人としての心構えを学ぶ

実習生にとっては、養成校で学ぶ内容は評価や治療技術が中心であるため、その他の業務はあまり想像できないかもしれません。
たとえば医療機関で勤務している場合、定期的な勉強会や地域での研修会、学会発表のためのデータ分析などを頑張っているセラピストも多いでしょう。
自己研鑽や研究活動は臨床能力を高めていくために必要であり、また1人の医療者としてどう社会に貢献できるかを知ることも大切です。
知識や治療手技を伝えることも大切ですが、このような医療人としての心構えを伝えられるかどうかがポイントだと思っています。
筆者の勤務する施設では、実習生もできるだけ勉強会や院内研修会に参加するようにして、学校の授業では経験できないことを1つでも多く学んでもらっています。
臨床実習は養成校で学んだ内容を確認する場であると同時に、新たな気づきを与える機会であり、それを伝えるのが臨床実習指導者の役割であると筆者は考えています。

これからの実習指導者が育てるのは新たな世代

従来の臨床実習では、患者さんの病態や治療を系統立てて考えていくことが目的でしたが、これからの世代はさらに多くのスキルが求められます。
その理由は、行政への介入や産業界での活躍など、リハビリ専門職の活動するフィールドが拡大しているからです。
診療参加型実習を通して、専門的な知識や技術をはじめ他職種との関わりや社会活動など、実習生が自身の将来像を描くことができるような指導を心がけていきましょう。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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