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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2020年10月16日
  • リハビリ病院の悩み

急性心筋梗塞後のリハビリ、評価のポイントと注意点を解説します

急性心筋梗塞(AMI)は、循環器疾患におけるリハビリの中でも遭遇する機会が多い疾患であり、リハビリを進めるに当たりしっかりとしたリスク管理が必要です。
しかし、いざ患者さんを担当した場合に「リハビリパスがあるけど進め方がわからない」、「どんな評価をしていいかわからない」と悩む方もいるでしょう。
本記事では、循環器を専門としないセラピストのために、AMIリハビリの評価のポイントや注意点について解説します。

急性心筋梗塞(AMI)のリハビリ 評価のポイントと注意点

急性心筋梗塞後のリハビリは段階的に進行する

まずは、急性心筋梗塞後のリハビリの進め方について、簡単にご紹介します。

●リハビリパスに沿って段階的に運動負荷をかける

リハビリパスに沿って段階的に運動負荷をかける

AMIのリハビリにおいて重要なポイントは、弱った心臓に急激な負荷をかけることなく、徐々に負荷を上げていくことです。
ここでいう負荷とは、循環血液量(前負荷)、血圧(後負荷)、心拍数など、心臓の酸素消費量が上がる現象を指しています。
つまり、血圧や心拍数が極端に上がる運動を避け、負担の軽い運動からゆっくりと慣らしていくことが重要です。
そのため、心臓リハビリを実施している医療機関では、その多くがクリニカルパスを導入し、発症日から退院までの間、実施する運動項目を決めています。
しかし、運動器や脳血管疾患とは違い、患者さんのADLは低下していないため、「すぐにでも歩ける」「なぜトイレにも行けないのか」と不満が出ることもあります。
その際は、上記のような理由を説明し、またAMI後の合併症(合併症については後述します)の危険性も併せて伝えることが大切です。

●心臓リハビリ=ADLアップではなく、運動の安全性を評価する

心臓リハビリ=ADLアップではなく、運動の安全性を評価する

AMIは、直接的に下肢筋力や可動域など運動機能面での障害は出現しないため、「どんなリハビリをすればいいの?」と悩む方も多いでしょう。
AMI後のリハビリでは、安全に運動できるかどうかを評価することが重要なポイントとなります。
具体的な例を挙げると、座位や立位など離床をした際に血圧低下や不整脈が起こらないか、100m歩いた際に胸部症状が出現しないかなどを評価します。
その日の運動負荷(クリニカルパスの実施項目)が問題なければ、日中の座位を許可したり、トイレまでの歩行を許可したりと、安静度を段階的にアップします。
運動器や脳血管疾患のリハビリと比較すると、リハビリ専門職としての専門性が少ないのでは?と疑問に思うかもしれません。
しかし、AMI後のリハビリにおいて、ADL訓練や機能訓練が必要なケースもあります。
後期高齢患者さんの場合、もともと歩行能力が低下している、膝関節の痛みがあるなど、
併存症を有する方も多いです。
パスに沿っての進行が難しい場合は、運動の安全性を評価しつつ、個別に機能訓練やADL訓練も並行して行います。

急性心筋梗塞患者さんのリハビリで押さえておくべき評価項目

急性心筋梗塞患者さんのリハビリで押さえておくべき評価項目

ここでは、リハビリを進めるに当たり、最低限押さえておきたい評価項目について解説します。

●バイタルチェックと聴診は必須、心電図で不整脈のチェックを

リハビリにおけるリスク管理といえば、血圧や脈拍などの項目を挙げる方が多いと思いますが、AMI後のリハビリでは必ず実施すべき評価項目があります。

呼吸音と心音の聴診をする

AMIでは、心臓のポンプ機能が低下することにより肺うっ血をきたすことがあるため、呼吸音を確認しておくことが大切です。
なぜ酸素投与が必要なのか、呼吸苦の原因は何かなどを判断するため、聴診所見や胸部レントゲン画像と併せて評価を行います。
また、心音の聴診では心拍数や心雑音を確認することにより、不整脈や弁膜症の有無を評価できるため、日頃からトレーニングを積んで聴診技術を高めておきましょう。

心電図で不整脈の確認をする

心電図に苦手意識を持っているセラピストも多いと思いますが、すべての不整脈を暗記したり、複雑な波形を解読したりする必要はありません。
AMI後のリハビリにおいて重要なポイントは、心房細動や心室性期外収縮、房室ブロックなどの不整脈が出ていないかを確認することです。
慣れない間は、心電図をパッと見たときに、R波の間隔が一定か否か、広いQRS波形が頻回に出ていないかに着目するとよいでしょう。
「何かおかしいな」と感じた場合は、看護師さんや主治医に相談することで運動中の事故を回避することができます。
心電図を確認するか否かは、事故のリスクを把握できるか否かに直結するため、まずは前述したポイントだけでも確認するようにしましょう。

●梗塞部位と治療内容を知ることでリスクの予測ができる

少し複雑な話になりますが、同じAMIという病名でも、閉塞した血管や心筋へのダメージ、治療状況によってリスクの程度も違います。
たとえば、左冠動脈の前下行枝(LAD)は主に心室中隔や心臓の前壁部分などを栄養しており、右冠動脈(RCA)は心臓の下壁部分や刺激伝導系の房室結節を栄養しています。
LADの閉塞が起こると、心室中隔穿孔など重篤な合併症が起こる可能性があり、RCAの閉塞では房室ブロックなどの不整脈が出現する可能性があります。
また、心筋逸脱酵素であるCKやCK-MBの値が高いほど、壊死した範囲が広いことを表しています。
そのため、梗塞部位や心筋の障害程度を知ることによって、「血圧が下がるかもしれない」、「徐脈になっていないか」など、リスクを予測することにつながります。
AMIの代表的な治療としてカテーテル治療が挙げられますが、初回にすべての治療が行われるわけではありません。
AMIによる救急搬送の場合、梗塞を起こした責任病変(血管)を優先的に治療しますが、ほかに狭窄した血管が見つかることも多いです。
その場合、待機的にカテーテル治療が行われるため、リハビリ開始後も胸痛などの狭心症状がないかを確認することが大切です。

気が緩んできたときが危険!合併症を見逃すな

気が緩んできたときが危険!合併症を見逃すな

心筋梗塞後のリハビリで一番注意すべきポイントは合併症の有無であり、それに気づかないと事故につながる可能性があります。

●心破裂や僧帽弁閉鎖不全症に注意!発症後1週間はハイリスク

心筋梗塞後の合併症は、解剖学的な変化が原因となる機械的合併症、血腫形成などの出血性合併症、腎障害など他臓器の合併症などに分かれています。
その中でも、機械的合併症は緊急での外科的手術を要することが多く、発見が遅れると命に関わるものです。
機械的合併症の代表的なものとして、心破裂や乳頭筋破裂からの僧帽弁閉鎖不全症などが挙げられます。
AMI後の機械的合併症は全体の1%ほどになりますが、発生時期は発症後2〜3日から1週間以内がほとんどです。
また、発症から初期治療までに期間が空いている場合(亜急性心筋梗塞)や、発症直後から血圧の上がる動作をしている場合に多くなります。
AMI後のリハビリは、多くの場合で順調に進んでいくため、ややもすると「血圧測って歩く距離を伸ばすだけ」と捉えてしまいがちです。
しかし、上記のように発症から1週間以内は合併症の発生に注意するべき時期であり、常に危険と隣り合わせという意識を持って運動負荷をかけることが大切です。

●毎日の評価が合併症の早期発見につながる理由

前述したように、AMI後のリハビリにおいては早期離床による廃用予防に加えて、合併症の予防も重要になります。
不整脈や血腫などの合併症に関しては、心電図や視診などで確認することができますが、機械的合併症の確認には心臓エコー検査が必要となります。
しかし、毎日エコーの検査を行うわけではないので、発生に気づくのが遅れると重大な事故につながります。
そのため、毎日の評価の中で合併症が出現していないかを確認しておくことが大切です。
心室中隔破裂や乳頭筋破裂に関しては、心臓内の血流に変化が生じるため、心音として異常を感じることができます。
乳頭筋破裂による僧帽弁閉鎖不全症では収縮期雑音が、心室中隔破裂では全周期雑音が聴取されることが特徴です。
「昨日はなかったのに、今日は雑音が聞こえる!」といった場合、すぐにリハビリを中止して主治医に報告するべきです。
また、いつもより血圧が低い、呼吸苦がある、呼吸音に異常があるなども注意すべきポイントであるため、毎日同じ評価を続けていくことが合併症の早期発見につながります。

心臓リハビリへの第一歩を踏み出そう

多くの場合、AMI後のリハビリはクリニカルパスを使用して進んでいくため、運動負荷後の症状確認が中心になります。
早い方は1週間ほどで退院となりますが、二次予防のためにはその後の食事習慣や運動習慣を変えていくことが必要です。
心疾患患者さんに対して、多職種で包括的に関わる取り組みは心臓リハビリテーション
と呼ばれており、AMI後のリハビリはその一角を担う重要な業務です。
今後、循環器疾患がある高齢患者さんは増加してくるため、この機会に循環器の評価ができるセラピストを目指してみてはいかがでしょうか。

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参考:日本循環器学会 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)(2020年10月7日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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