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急性期病院で早期退院のカギを握るのは!? 専従セラピストの役割について考えよう!

医療の機能分化が進むなかで、急性期病院においては在院日数短縮が大きな課題となっています。
廃用症候群の予防や早期からの日常生活動作(ADL)能力の向上が求められ、四苦八苦しているセラピストも多いのではないでしょうか。
本記事では、急性期病院で退院支援に関わっている筆者の経験をもとに、病棟専従セラピストの重要性について解説します。

早期離床は病棟全体のマネジメントへの参画から

急性期病院で求められるのは迅速な情報収集と早期離床!

急性期病院においては、在院日数短縮のために以下の2つの取り組みが重要になります。

●情報収集

病院では、入退院支援センターや救急外来でおおよその情報は収集されますが、セラピストが直接聞いておくべき情報があります。

1)入院前のADL

入院の際に、患者情報書には自立や要介助としか記載されていないこともあり、具体的な介助量については不明です。
ここの情報が不足していると、リハビリのプログラムやゴールを考えることができませんので、ご本人やご家族からしっかりと聞いておきましょう。

2)家屋環境

トイレや浴室を確認することはセオリーですが、もうひとつ忘れてはいけない場所が玄関です。
普段の外出だけでなく、病院受診やデイサービスの送迎時などでも、玄関周りの環境が問題点となるケースも多いです。
不整地ではないか、車椅子での移動は可能かなど、退院したあとの生活をイメージするために確認しておくことが重要です。

3)介護保険認定の有無

具体的にどのようなサービスを利用していたかを確認しておきます。
入院前ADLや家屋環境、利用しているサービスの種類などから、その方の自宅生活が頭のなかにイメージできれば一人前のセラピストといえるでしょう。
また、入院してから数日の間に、担当ケアマネジャーさんから情報が送られてくることが多いので、地域連携室や病棟に確認することも有用です。

●早期離床

急性期病院では、治療開始後や手術後からすぐにリハビリを実施しますが、その理由は廃用症候群の予防です。
特に高齢者では、数日の寝たきり期間によっても筋力低下が進行し、自力で立つことが困難になることもあります。
1日でも早くリハビリを実施することが必要となりますが、入院患者さんすべてにリハビリの指示がでるわけではありません。
専従セラピストは、
「リハビリが必要な患者さんはいないか?」
「廃用症候群が進行する可能性はないか?」
など、入院患者さん一人ひとりの状態を把握しておくことが重要です。

専従セラピストは病棟全体のマネジメントに参画するべし!

専従セラピストは病棟全体のマネジメントに参画するべし

専従セラピストは、単にその病棟でリハビリを担当するだけではありません。
ここでは、早期退院にむけたマネジメントに携わる必要性について解説します。

●疾患別リハビリテーションを実施しない!?

セラピストの基本的な業務は、疾患別リハビリテーションで◯単位分実施することですが、専従配置の場合は異なります。
その理由は後述しますが、まずは専従と専任セラピストでの業務範囲を決めておくことが重要です。
その一例として、

  • ・専従セラピストはカンファレンスや病棟回診を担当する
  • ・専任セラピストは1日◯人を目安に疾患別リハビリテーションを実施する
  • ・専任セラピストは、個別リハビリの時間以外は専従セラピストの業務を補佐する

などが挙げられます。

●入院患者さん全体の把握が必要!

病棟専従を配置するメリットのひとつは、ADL維持向上等体制加算を算定できることです。
本記事では加算を取得する要件については割愛しますが、特に注意するべきポイントとしては、

  1. 1)入院中の患者さんの褥瘡(じょくそう)発生を予防する
  2. 2)転倒や転落を予防するための取り組みが必要
  3. 3)退院時のADLを入院前ADLより低下させない
  4. 4)退院後の生活を想定して、予測できるリスクをスタッフ間で共有する

などが挙げられます。
よって、個別でリハビリテーションを実施して1日が終わるようでは、これらの必要条件を満たすことは難しいでしょう。
特に褥瘡に関しては、
「自力で寝返りができるか?」
「ベッド上で適切な姿勢が保持できるか?」
など、セラピストの視点でなければ対応できない部分もあります。
専従セラピストは、患者さん一人ひとりの能力を適切に把握し、必要な方に適時介入するなど、病棟全体を見渡せる視点をもつことが重要です。

専従セラピストが押さえておきたい3つの業務とは!?

ここでは、専従セラピストが具体的に実施する業務について解説します。

●入棟患者さんの身体能力を把握する

前述したとおり、入院前ADLから低下させないことが必要ですが、ここでは情報収集力と評価能力がカギとなります。
たとえば、家族の方と話しているときに、

  • 「つえを使って歩いていたが、いつ転ぶかヒヤヒヤしていた」
  • 「最近は寝たり起きたりの生活で、トイレもベッド上が多かった」

などの情報があれば要注意です。
廃用が進む可能性が高いと判断した患者さんには、早期リハビリの実施を主治医に提案するか、病棟スタッフと離床を促す方法を検討することが望ましいです。
筆者の経験上、入院初期に適切な情報を把握できなかった方では、ADL低下によって退院が困難となったり、新規に介護保険サービスを導入せざるを得ないケースが多くなります。

●退院支援に難渋する患者さんを把握する

ADLの低下以外でも、生活環境や家屋状況が理由で自宅退院が困難となるケースがあります。
以下に筆者が経験した一例をご紹介します。

主治医「治療は終了しましたので、そろそろ退院しましょうか」
家族「え?認知症が進んで薬もまともに飲めないですし、施設に入所させようと思っています…」
相談員「今から施設を探すと数カ月待ちになるので、いったん家に帰ってから…」
家族「そんなの無理ですよ!誰も様子を見に行けないですから!」

ここでも早期の情報収集がカギであり、入院初期より訪問看護やショートステイを提案することによって、ご家族の不安を解消することができたかもしれません。
専従セラピストは、身体機能・ADL能力・生活環境・家屋状況・介護サービスの有無などさまざまな情報をもとに、早期退院につなげるには今後どのような介入が必要であるかを予測する能力が必要です。

●カンファレンスや回診業務への参加

情報の収集や共有を図る場として、病棟カンファレンスや医師の回診に参加することが有用です。
それぞれの場面における専従セラピストの役割としては、

1)病棟カンファレンスでの役割

◯対象患者さんの基本動作能力を伝える
◯最終的なゴールを伝える
◯病棟スタッフでできるリハビリメニューを伝える
◯退院後に必要な介護サービスについて提案する

2)医師の回診での役割

◯現在のリハビリ進行状況を伝える
◯ゴールまでの到達期間を伝える
◯リハビリ介入の必要性を提案する(リハビリ未実施の患者さんの場合)

などが挙げられます。

まとめ

本記事では、退院支援に関わっている筆者の経験をもとに、病棟専従セラピストの役割について解説しました。
日々移り変わる医療情勢のなかで、今後もセラピストが生き残るためには、全体をマネジメントする能力を身につけられるかどうかにかかっています。
さあ、明日から新しい視点をもって臨床にでてみてはいかがでしょうか?

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参考:
公益社団法人 日本理学療法士協会 事務局職能課 平成28年度診療報酬改定の概要.

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