その転職は本当にプラス?後悔しないために押さえておきたいポイント!
リハビリ専門職の業務は、医療機関におけるマンツーマンでのリハビリのみではなく、産業分野や行政など年々拡大しています。
「今の職場は自分に合っていない」「色々な経験を積みたい」と転職を考える方もいると思いますが、情報不足のまま安易に転職すると後悔することもあります。
本記事では、転職で失敗しないために押さえておきたいポイントについてご紹介します。
「人間関係に不満があるから転職」はNG?
転職を考える際、ポジティブな理由もあれば、人間関係などネガティブな理由もあります。
ただ、人間関係を理由に転職を考えている場合は、失敗しないためにいくつか注意しておくべき点があります。
●ハラスメント対策は大事!でもそれって本当にハラスメント?
近年、社会で問題になっている◯◯ハラスメントですが、遭遇する機会が多いのはセクハラやパワハラではないでしょうか。
セクハラに関しては、性に関することなので理由が明確であることが多いかもしれませんが、パワハラに関しては少し注意が必要です。
「職位などの優位性を利用していやがらせを受けた」ことをパワハラと認識している方が多いですが、これはなかなか難しい問題です。
「患者さんの担当をかえられた」、「ほかの人と同じ扱いをしてもらえない」などの経験をした場合、それはパワハラになるのでしょうか?
上司としては、その相手の能力に応じた業務を当てる、部門全体の業務バランスを考えるなど、管理者としての役割を持っています。
また、個人の能力を大きく超えた業務を当てることでトラブルが生じることもあります。
自分が納得できない命令に対してパワハラと解釈するのではなく、なぜそうなったのかを考えることも大切です。
それが理解できない場合、どれだけ職場を変えても同じことを繰り返すことになるでしょう。
●性格が合わないのは当たり前、他人を変えることは難しい
社会にでて仕事をする以上、ほかの人と性格が合わない、考え方が合わないという経験をすることは多いと思います。
「あの人の考え方は間違っている」、「いくら言っても変わらない」という理由で転職を考えてはいないでしょうか?
リハビリ専門職は、医療サービスを提供するサービス業であるため、人との関わりを避けては通れません。
自分と考えが違う=間違っているという思い込みはNGであり、また他人の考え方を変えるということはかなり難しいことです。
どうしても合わないと思う相手がいて、同じ部門で距離をとることが難しい場合でも、まずはその相手の考え方を理解することが大切です。
その上で、「じゃあ対応を変えてみよう」「1つの意見として参考にしよう」など、自分の捉え方や対応方法を変化させることが重要です。
そのように柔軟な対応ができる方であれば、職場にかかわらずいろいろなタイプの人とうまくやっていけるでしょう。
人間関係で転職を余儀なくされた場合、どこかで同じケースに悩まされるかもしれません。
「他人を変えるのではなく自分が変わる」、これが人間関係で悩まされない方法の1つです。
収入アップを考える場合、給与の内訳を確認しよう
転職をする際、仕事のやりがいを求める方もいれば、収入を第一に考える方もいるでしょう。
給与アップを目的に転職を考える際、最低限知っておきたいことがいくつかあります。
●公務員は給料が安い、大手の法人は高いって本当?
同じリハビリ専門職でも、職場や雇用形態によって収入は大きく変わってきます。
例えば、◯◯県立病院、◯◯市民病院などの公立病院で勤務する医療職は、扱いとしては地方公務員にあたります。
医療職を含む公務員の給与体系(賞与も含む)は、国家公務員の人事院勧告にもとづいて決定されるため、正直良くも悪くもないのが実状です。
経営が大きく傾かない、不祥事を起こさない以上、一定の収入を定年退職まで保証されることになりますので、「安定」という言葉が魅力になるでしょう。
いっぽう、多くの医療機関や介護保険事業所を経営する大手法人の場合、土台がしっかりしている限り、業績に応じて収入アップという可能性も考えられます。
「自分は実力がある」と自信を持っている場合、公務員よりも民間経営の大手法人に転職するのがいいかもしれません。
ただし、介護保険分野においては、地域ごとに介護報酬が決まっているため、やればやるだけ収益が上がるという構図ではないことには注意です。
管理者としての業務を習得する、新たな資格を取得するなど、収入アップのためにはスキルアップが必要となることを覚えておきましょう。
●月収の掛け算で年収を計算してはいけない理由
年収アップを考える際、給与の内訳について理解しておくことが重要です。
以下に2つの給与体系例を挙げてみます。
なお、月収と年収を説明しやすいように、通勤手当や扶養手当、各控除などは含めずに考えています。
月収 | 賞与 | 基本給 | 職能手当 | 昇給 | 転職時の年収 | |
---|---|---|---|---|---|---|
職場A | 25万 | 3.0カ月 | 20万 | 5万 | 3,000円 (職能手当に加算) |
360万 |
職場B | 23万 | 3.0カ月 | 18万 | 5万 | 5,000円 (基本給に加算) |
330万 |
月収が多く、かつ賞与額が同じであるため、職場Aのほうが年収も高くなります。
では同じ条件での10年後を見てみましょう。
月収 | 賞与 | 基本給 | 職能手当 | 昇給 | 10年後の年収 | |
---|---|---|---|---|---|---|
職場A | 28万 | 3.0カ月 | 20万 | 8.0万 | 3,000円 (職能手当に加算) |
396万 |
職場B | 28万 | 3.0カ月 | 23万 | 5万 | 5,000円 (基本給に加算) |
405万 |
月収だけみると、昇給額が異なるため職場Bが追いつきましたが、年収を見ると逆転しています。
職場Aでは、昇給は職能手当に加算されますが、職場Bでは基本給に加算されていることがポイントです。
賞与は、基本給の◯倍として計算されるため、基本給がアップする職場Bのほうが、将来的に年収が多くなる結果になります。
転職時の月収が高いからという理由だけで職場を決めるのではなく、昇給額や昇給分がどこに加算されるかを確認しておくことが大切です。
転職が成功する人に共通する特徴とは?
さいごに、筆者が思う「転職が成功する人」の特徴について述べたいと思います。
●自分のキャリアデザインをしっかりと描けている
転職を考える際、収入だけを考えても、前述したように目先の収入と将来の年収を考えるか否かで差がでてきます。
また、人間関係や業務内容に満足できないことを理由に転職をする場合、自分を変えられない限りは同じ問題に悩まされ続けるでしょう。
いっぽう、転職で成功できる1つのパターンとして、自分のキャリアデザインがしっかりと描けているケースが挙げられます。
キャリアデザインとは、自分がどんな経験をしたいのか、理想的な働き方はどのようなものかをイメージできることを指します。
たとえば、3年間は運動器のリハビリを経験し、次の3年で脳血管のリハビリを経験する、その後は地元で地域医療に貢献するなどです。
また、医療介護の現場で経験を積んだのちに、介護事業所を経営するなどの目標を持っている方もいるでしょう。
簡単に言えば、自分の将来の姿が見えているということになります。
このようなタイプの方は、次の職場で自分がするべきことを理解しており、必要なスキルや知識の習得にも無駄がありません。
●自分の能力と求められる能力が一致している
キャリアデザインと似ている部分もありますが、自分がどのような役割を担うべきか、自分に何を求められているかを理解することは重要です。
たとえば、大学病院と地域医療を担う病院では、急性期と回復期、早期退院と生活能力の改善、スピード感とじっくり感とかなりテイストが異なります。
また、臨床研究に興味がある場合、大学病院なら協力体制が得られますが、ほかの医療機関だと難しいかもしれません。
転職する上で1つの重要なポイントとしては、自分の発揮したい能力と職場が求める能力が一致しているかどうかです。
その不一致が大きい場合、「周りのスタッフと考え方が合わない!」と再度転職を余儀なくされるかもしれません。
自身のキャリアデザインを優先するのであれば、転職先の職場の理念や役割、スタッフの実績などをしっかり調べておくことをおすすめします。
転職をする前に、まずは自分自身の振り返りをしよう
「収入が低い」「職場の雰囲気が悪い」というネガティブ面だけで転職を考えると、同じ過ちを繰り返すこともあります。
業務内容や人間関係に悩んでいるときは、なぜそのような対応をされるのか、自分の工夫で変えることはできないかなど、視点を変えることが重要になります。
また、目先の利益のみにとらわれていないか、自分の10年後がイメージできているかなど、中長期的なビジョンを持つことも大切です。
さまざまな経験を積んで、いちセラピストとして市場価値を高めたいと思うのであれば、常に自分自身を振り返る作業を怠らないようにしましょう。
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執筆者
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皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士