新型コロナウイルスのワクチン接種で知っておきたい具体的な副反応と注意点
アメリカやイギリスなどの諸外国では、すでに医療従事者への新型コロナウイルスワクチン接種が開始されています。
今後は日本でも、これらのワクチンをその諸外国からの供給を受け、医療従事者から接種が開始される予定となっていますが、不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。
筆者が住むアメリカで主流となっているmRNAワクチンの副反応や注意点などについて解説することにしましょう。
目次
新型コロナウイルスワクチンの新しい技法をQ&Aで解説
新型コロナウイルスワクチンはこれまでのワクチンとは製法が異なります。
どのように異なるのか、またさまざまな疑問について解説しましょう。
●新型コロナウイルスに対するワクチンはこれまでのワクチンとどう違うの?
新型コロナウイルスワクチンが従来のインフルエンザワクチンなどと異なる点は、遺伝子材料の一つであるメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれるものを使用していることにあります。
このmRNAワクチンがヒトの細胞内に入り、標的となるウイルスのスパイクタンパクを細胞内で作り出し、それに対して免疫に必要となる抗体を産生するという仕組みです。
これらはファイザー社やビオンテック社、モデルナ社の製品で使用されているワクチンの製法です。
アストラゼネカ社のものはチンパンジーを由来とする毒性をなくしたアデノウイルス(風邪の一種)に新型コロナウイルスのスパイクタンパクと呼ばれるウイルスの遺伝情報の一部を組み込ませて体内に投与します。
それに対して抗体を作らせることで免疫を獲得するシステムとなります。
●新型コロナウイルスワクチンQ&A。遺伝子変異は起こるの?ほかのmRNAワクチンは?
新しい技法で作られたワクチンに対して、自身の身を守るためとはいえ誰よりも先に打つ必要がある医療従事者にとっては不安も大きいことでしょう。
ここでは皆さんが抱いている疑問について、いくつかピックアップして解説することにしましょう。
Q1:新型コロナウイルスワクチンは遺伝子操作をするといううわさを聞きましたが本当ですか。
A1:新型コロナウイルスワクチン接種において遺伝子操作は行われません。新型コロナウイルスワクチンの主となる部分であるmRNAは遺伝子の一部から抽出されたものですが、ヒトの細胞内で抗体を産生したあと分解されます。また、mRNAは細胞内のリボソームでスパイクと呼ばれるタンパク質が生成され、このスパイクタンパクに反応して抗体が生成され免疫を獲得します。体内に残って遺伝子を操作する、mRNAがDNAに取り込まれるというような、ご心配のようなことは起こりません。
Q2:新型コロナウイルス変異株にもワクチンは効果があるの?
A2:ファイザー社において、変異株の新型コロナウイルスに対しても抗体産生が行われたという実験結果が報告されています。
Q3:アナフィラキシー反応は起こりやすい?アレルギーの人は新型コロナウイルスワクチンを接種できないのですか?
A3:アナフィラキシーはさほど多くありません。
また、アレルギーに関してもワクチンを生成する過程でほかの動植物由来ではないため、アレルギー反応は出にくいといわれています。mRNAを保護するために用いるポリエチレングリコールとそれに類似したポリソルベート(乳化剤)に対してのアレルギー反応が出るのではないかと推測されています。
ですので、アレルギーがあるからといって接種はできないわけではありません。
mRNA新型コロナウイルスワクチンの副反応とは具体的にどのようなものか
ここでは新型コロナウイルスワクチンの接種による副反応と気になるアナフィラキシーショックに対する配慮がどのようなものかお話ししましょう。
●ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンにアレルギー反応を示した例の具体的な症状
12月にアメリカでワクチン接種が開始されたファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの第一回目接種者117万7,527人のうち、アナフィラキシーと認定されたのは21人で、そのうち死者はなく4人入院、17人が救急診療科での治療を受けています。
主な症状は、じんましん、血管浮腫、発赤、咽頭部の閉塞感でした。
●アナフィラキシー反応が起こったらどうする?接種会場にはアナフィラキシー対応のための準備はあるの?
前項にも述べているように、ファイザー社のワクチン接種開始後のアナフィラキシー反応が報告されましたが、そのほかの副反応とくらべてもごくまれなものです。
また、アナフィラキシー反応の71%が15分以内、86%が30分以内と接種してから短時間に起こっています。(出展:Allergic Reactions Including Anaphylaxis After Receipt of the First Dose of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine)
アナフィラキシー反応の症状のなかでも、血圧低下や呼吸困難、ひどい湿疹などの重症の場合に対応できるように、新型コロナウイルスワクチン接種現場ではエピネフリンなどの昇圧剤や酸素などを用意しています。
新型コロナウイルスワクチン接種時の注意点と販売する会社によって異なる点
ここでは会社による違いとワクチン接種時の注意点について述べます。
●新型コロナウイルスワクチンは2回目のワクチン接種までの日数が各会社によって異なる
筆者が住むアメリカではモデルナ社とファイザー社が政府の承認を受けて接種を進めています。(2021年2月8日現在)
この2社のワクチン接種において異なる点は1回目のワクチン接種から2回目の接種までの期間です。
モデルナ社は1カ月後、ファイザー社は3週間後に接種することになっています。
●注意点 新型コロナウイルスワクチン接種後一定時間の様子観察が必要、2回目のワクチン接種後のほうが副反応は重い傾向
アナフィラキシー反応の71%が15分以内、86%が30分以内と接種してから短時間に起こっています。
そのためアメリカでは新型コロナウイルスワクチン接種現場では接種後、一定時間(15分前後)その場にとどまり様子を見るという形をとっています。
副反応に関しては、さまざまな意見がありますがワクチンを打った腕の痛み、発熱、倦怠感などが主な症状であり、1回目よりも2回目の接種に副反応が重いと訴える人が多いと報告されています。
副反応の例:針刺し部位の痛み、倦怠感、発熱、筋肉痛、悪寒、関節痛など
近々始まる医療従事者への新型コロナウイルスワクチン接種について知っておこう
日本に到着するワクチンはまずファイザー社のものが供給され、次にイギリスで接種されているアストラゼネカ社のものが日本に導入される予定です。
アナフィラキシーについては接種後一定時間会場にとどまり様子を見る、出現が予測される副反応については慌てず対処することが大切です。
今後可及的速やかに導入されるワクチン接種はまずは医療従事者に行われるため、知識の一つとして皆さんの不安材料が解消されれば幸いです。
参考:
snohomish health district COVID-19mRNAワクチンが働くしくみ(2021年2月8日引用)
厚生労働省 新型コロナワクチンについてのQ&A(2021年2月8日引用)
Tom Shimabukuro et al.: Allergic Reactions Including Anaphylaxis After Receipt of the First Dose of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine.2021 Jan 21,JAMA(2021年2月8日引用)
FDA(U.S. Food And Drug Administration) Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine(2021年2月8日引用)
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執筆者
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1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。
保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士