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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2021年03月25日
  • リハビリ病院の悩み

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#ADL #急性期 #理学療法

急性期でもADL練習って必要?片麻痺患者さんの排泄動作練習について解説します

回復期病院で勤務するセラピストにとって、ADL練習はリハビリの中心部分であり、もっとも力を入れるべきところでしょう。
いっぽう、急性期病院では、在院日数も短く、気づいたら退院の話がでていたということもあります。
急性期において、片麻痺患者さんのADL練習はどのタイミングで始めるか、注意すべきポイントなどについて解説します。

寝たきりからの排泄動作練習のポイント

ADL練習はどのくらいの時期に始めればいい?

持続点滴や尿道のカテーテルの有無 意識レベルの変動・座位保持の可否

ADL練習を開始する時期については、自分なりの基準を設けることが大切です。

●急性期だから機能訓練はNG、早期介入が大切

急性期における脳血管疾患の患者さんでは、脳浮腫予防の点滴治療、意識レベル低下、バイタル不安定などの状態でリハビリがスタートします。
そのため、関節可動域訓練やポジショニングなどが中心となりますが、急性期だからといって機能訓練のみを続けているのは、リハビリ専門職として失格です。
早期リハビリ介入と同時に、われわれには早期のADL改善も求められますが、どのタイミングでリハビリメニューを変更していくことが望ましいでしょうか。
ADL練習を始めるにあたり、筆者が基準としているポイントを以下に挙げてみます。

  • ◯数日間、意識レベルに変動がない
  • ◯介助なしで端座位を取ることができる
  • ◯コミュニケーション手段が確立できている

まずは患者さんに指示が入ること、練習内容を理解できることなどが前提であり、さまざまな動作の起点となる座位が安定していることがポイントです。
仮に、座位が不安定な患者さんに過度なタスクを設定すると、四肢の筋緊張が亢進したり、患者さんのモチベーションが低下したりするため注意が必要です。

●尿道カテーテル抜去の重要性、リハビリ進行にも関係

ADL練習において、排泄動作は患者さん本人や家族のニーズだけでなく、健康面においても自立が望まれます。
急性期では、ほとんどの患者さんに尿道カテーテルが挿入されており、尿失禁の心配はなく管理がしやすいと思われがちです。
しかし実際は、尿路感染のリスクが高くなる、事故抜去のリスクがあるなど、リハビリを進める上での阻害因子となります
また、便失禁による皮膚トラブルなども問題になるため、排泄動作の介助量軽減は急性期病院における1つの到達目標となるでしょう。
心不全があり尿量を厳しくチェックするなどの理由がない場合、患者さんだけでなく、主治医や看護師などほかの職種も早期抜去を望んでいます。
その際、抜去できるか否か、トイレ動作をどうするかの評価を求められるのはリハビリ専門職であり、急性期においてもADLを適切に評価する能力が必要になります。

排泄動作獲得に必要な能力とリハビリプログラム

ベッドからの起居 車椅子での移乗 立位での下衣着脱 トイレを流す 手洗いをする

排泄動作自立にむけてどのような能力が必要か、またそれを習得するにはどのような練習を行えばいいか迷うセラピストもいるでしょう。
ここでは前述したADL練習開始ポイント(座位が可能)を前提として解説を進めていきます。

●立位の安定性と移乗動作能力を評価する

排泄動作は、ポータブルトイレでの排泄動作、病棟トイレを利用した排泄動作などの場所、介助の有無とその量など、患者さんの能力に合わせた目標設定が必要です。
当然のことながら、そのすべてにおいて立位保持や移乗動作が必要となるため、まずはそこが安定してできる必要があります。
また、それぞれの動作においても、手すりを把持すればできるのか、他者が介助するとできるのかなど、介助の方法も患者さんによって違います。
特に、車椅子への移乗に関しては、介助ボードを使用するのか、自分で使用できるかなど、福祉用具の導入も視野にいれる必要があるでしょう。
この時点で適切な評価ができていない場合、無駄に介助量が多くなったり、患者さんに不快な思いをさせたりするため、自立度向上につなげることが難しくなります。
最初のポイントは、立位と移乗動作における介助量と介助方法をしっかりと評価し、どのようなパターンで排泄動作を行うかを具体的に設定することが大切です。

●動作は分節的に評価して練習しよう

排泄動作は、ベッドからの起居動作、車椅子への移乗動作、立位での下衣操作、後始末など複数の行程から成り立っています。
たとえば、立位での下衣操作がうまくできない、転倒リスクが高いと判断される場合、そこを重点的に練習するようなメニューを組むでしょう。
しかし、単に立位でズボンの上げ下げ動作を練習していても、その動作に必要な要素を把握できていないと自立にはつながりません。
立位でズボンを掴む際にふらつくのか、後ろがうまく引き上げられないのかなどによって、練習メニューも変わってきます。
手放し立位でふらつくのであれば、麻痺側への荷重練習や、立位でのリーチ動作などで重心コントロールの練習が必要になります。
いっぽう、後ろをうまく上げられないのであれば、ズボンの後ろに輪っかをつけたり、福祉用具を使用したりと、代償手段で自立することも可能です。
排泄動作は行程が多いため、どの行程のどの動作を練習するか、そこを明確にしないことには早期ADL改善は難しいでしょう。

排泄動作の自立度を高めるためのポイントとは?

本当はオムツなんか使いたくないけど、看護師さん忙しそうだし

動作の評価とリハビリメニューの作成が終了し、その後練習を続けているのにかかわらず排泄動作が自立しないこともあります。
ここでは病棟リハビリにおけるポイントについて考えてみます。

●排泄介助は誰の仕事?セラピストは実際に立ち会うべし

リハビリ専門職として経験を積んでくると、患者さんの動作パターンや残存能力を知ることで、ある程度動作の予測をすることができるようになります。
また、機能訓練や動作練習を続けて、「この状態なら自立できるだろう」と推測することもできますが、その時点で最終判断をするのはNGです。
病棟で排泄動作を開始するときや自立許可を出す際、担当セラピストは必ず実際の排泄場面に立ち会うことをおすすめします
「シミュレーションでいいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、実際の場面では意外な気づきが得られることもあります。
例を挙げると、「新しいペーパーロールを取ろうとして転倒しそうになった」、「普段はうまく立てないのに、壁にもたれかかってバランスを取っていた」などさまざまです。
セラピストが普段のリハビリで気づかない点も多く、排泄動作の確立にむけて必ずプラスになるでしょう
筆者の場合、排泄後の後始末やパッドの交換まで実施することもありますが、それもセラピストとしての業務範囲であると考えています。
「介護職じゃないし、ここまでするのはちょっと」という考え方や、「◯◯さんがトイレに行きたいらしいです」と看護師さんにお願いするのはリハビリ専門職失格です。

●できるADLをしているADLへ、多職種での共有が大切

実際の排泄場面で評価もできた、少しの介助で排泄動作ができると判断した後は、いかにその情報を病棟スタッフと共有するかが重要になります。
「◯◯さんってこんなに動けるんですね」と担当看護師さんが驚いた経験はないでしょうか。
動作練習を主な業務とするセラピスト、寝ている患者さんを見ることが多い看護師さんとでは、ADL能力の理解度に差が生まれるでしょう。
もし担当看護師さんの都合を合わせられるようであれば、トイレ練習を一緒に見てもらう、介助のタイミングや方法について伝達するなどのアクションが大切です。
「こんなに動けるのに、なんで病棟ではADL練習をしないの?」と感じた場合、それは自分の情報共有不足が原因かもしれません。
リハビリで獲得した能力を生活に生かす、「できるADL」を「しているADL」に昇華してはじめて、自立度が上がったと判断できるのではないでしょうか

急性期でのADL自立に必要なのは適切な評価と情報共有

急性期で働くリハビリ専門職にとって、早期介入による廃用予防だけでなく、ADL改善も重要な役割です。
患者さんの病態や動作能力が日々変化する急性期だからこそ、その時期に応じた適切な評価が必要となります。
リハビリの時間だけでなく実際の場面で評価すること、動作能力を他職種に伝えることによって、急性期においても排泄動作の自立度は向上します。
急性期=廃用予防と盲目的に考えるのではなく、そのなかでいかに専門性を発揮できるかを日々考えていくことが、自身の成長にもつながるのではないでしょうか。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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