【博士課程編】理学療法士・作業療法士が大学院で学位を取得するまでの道のり
理学療法士や作業療法士の多くは、病院や施設で活躍していると思います。
「臨床ではなく、教育研究領域で働きたい!」という人は、まず博士号を取得することはマストといえるでしょう。
博士号取得までの道のりは長いですが、キャリアアップ・目標達成のため、ぜひ視野に入れてみてください。
目次
理学療法士・作業療法士が博士号を取得するメリット
理学療法士や作業療法士が修士課程を修了する際、「博士課程に進学するかどうか」を決める分岐点に立たされる場面があるでしょう。
全体でみると修士課程に進学する人の割合も少ないですが、博士課程となると、定員・進学者はますます限られてきます。
少数派ではありますが、博士課程に進学する人がいるのは、なんらかのメリットを感じているからだといえるでしょう。
博士課程で学ぶメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- ●修士課程とくらべ、さらにレベルの高い研究を進められる
- ●基礎は理解できている段階なので、研究の自由度が増す
- ●大学・専門学校の教員になれる可能性がある
修士課程とくらべると、さらに高いレベルで研究を進めていけることはメリットだと思います。
これは課程の年数が長くなることもありますが、やはり修士課程で学んだことをベースに、さらに研究を発展させていけることが魅力です。
修士課程に入学したときは右も左もわからない状態でも、博士課程ではある程度自分の判断で進めさせてもらえる部分もあり、自由度が高まるという点が特徴的です。
博士号を取得したいと思う理由は人それぞれだと思いますが、大学教員や研究者としてのポジションを得ることを目標に学問に励んでいる人が多いでしょう。
2016年に実施された、第2回理学療法士・作業療法士需給分科会の資料では、理学療法士で大学教員になった人の所有学位について触れられています。
理学療法士の場合は、大学で助教以上のポジションの人のうち94%は修士号以上の学位を取得していると報告されています。
このデータでは博士号取得者の割合はわかりませんが、筆者が卒業した大学や大学院では、ほぼすべての教員が博士号を有していました。
理学療法や作業療法に関係する大学の教員を目指す人にとっては、博士号の取得はマストといえるでしょう。
博士号取得の難易度はどのくらい?副論文も必要になる
博士号の学位を取得する際、修士号よりも難易度は高くなります。
論文の審査を例にみても、修士課程では学内の教員だけで済ませることもありますが、博士課程になると学外からも審査員を務める先生が加わることが一般的でしょう。
修士課程は研究の基礎を学ぶ場という側面もありますが、博士課程ではさらに求められるレベルが高くなってくるのです。
また、学位論文以外にも、掲載または受理が済んでいる論文が必要になり、ここがハードルになることも少なくありません。
こちらの論文については「副論文」と呼びますが、学位論文に関連した内容の論文であることが条件とされている例が多いです。
副論文が何本必要になるか、どういった条件の雑誌に掲載される必要があるかなど、満たすべき要件は大学によっても変わってくるでしょう。
たとえば、「査読付きの英語論文を1本以上」などの基準がありますが、論文を執筆してから掲載されるまでには月日がかかるので、計画的に対応していく必要があります。
学位論文の執筆が順調に進んでも、副論文の準備が間に合わなければ課程の修了時期が延びてしまうため、早め早めの対応を心がけたいところです。
学位取得までの道のりは長いですが、スキルアップのためのトレーニングだと思って頑張ってみてください。
あえて違う分野で博士号を取得することもオススメ
理学療法士・作業療法士の方は、どの分野で学位を取得するか検討してみてください。
必ずしも「理学療法学博士」や「作業療法学博士」である必要はないのです。
たとえば、医学・社会学・公衆衛生学・教育学などの分野で博士号を取得し、理学療法や作業療法の世界に役立てていくことも可能です。
どの分野であっても「博士号」の取得であることには変わりありません。
ほかの学問のほうが歴史が長いこともあるので、あえて違う分野に軸足をおき、理学療法学や作業療法学の発展に生かしていくスタイルも個性があって良いでしょう。
知り合いの先生の紹介など、なにかコネクションがないと他分野には飛び込みにくい部分もあると思いますが、広い視野で検討してみることをおすすめします。
また、言語や生活能力の問題がクリアできるようであれば、海外の大学院で学位を取得すると、キャリアの面で周囲と差別化を図ることができるでしょう。
教員・研究職のポストを獲得するためには「運」も重要!
博士号を取得しても、100パーセントの確率で教員・研究職のポストにつけるわけではありません。
たとえば、大学教員の公募では「スポーツ障害分野の准教授」や「精神障害分野の助教」など領域やポジションまで指定されているケースは少なくありません。
大学教員などのポジションに空きがあるかどうか、その空きが自分の専門領域であるかどうかは不確定なので、希望のタイミングでポストにつけるという保証はないのです。
ここは「運」という要素も非常に大きくなるといえるでしょう。
学位を取得したらすぐに就職先が見つかる人もいれば、何年か臨床で働きながらポストが空くのを待つという人もいます。
教育研究領域に進みたい方では臨床経験も大切になってくるので、仮に臨床で勤めながら空きを待つという事態になっても、その時間が無駄になるということはありません。
また、学位を有していれば、臨床で活躍しながらでも、大学や専門学校の非常勤講師として呼ばれることがあります。
運やタイミングの問題もありますが、「自分がなにをしたいか」「どういう仕事をしたいか」ということに尽きるので、ぜひ目標の達成に向けて前進してみてください。
まとめ
理学療法士や作業療法士のうち、博士号を取得する人は非常に少数派です。
しかし、臨床で働くという選択肢のほかにも、大学や専門学校で教員としてスキルを発揮するという方法もあるのです。
博士課程は修士課程よりも高いレベルで研究を進めていかなければならないため、道のりは長く、大変だと感じる点もあると思います。
教育研究領域に進みたい人にとって博士号の取得は登竜門ともいえる位置づけになるので、ぜひ学問に打ち込んで業界をけん引していってください。
参考:
わが国における理学療法学の大学教育の現状調査結果から(2018年2月6日引用)