リハビリ部門の管理者必読!PT・OTが2020年までに「臨床実習指導者講習」を受講すべき理由
従来は理学療法士・作業療法士の臨床実習指導者といえば、「経験年数3年以上」が共通認識だったのではないでしょうか?
厚生労働省の検討会で、経験年数5年以上、臨床実習指導者講習の受講がマストになることが提示されました。
すでにバイザー会議などでも周知されているところですが、リハビリ部門の管理者やリハビリスタッフが知っておくべき状況をお伝えしていきます。
急げ!PT・OTは早めに臨床実習指導者講習を受講しよう
2020年(平成32年)の入学生から、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の臨床実習が変わります。
訪問リハビリや通所リハビリでの実習を行うことや、指導者の経験年数が5年以上であることなど、新たな取り組みが追加されたのです。
これらの変更点は、厚生労働省が2017年12月に行った「第5回理学療法士・作業療法士養成施設カリキュラム等改善検討会」で提示されたものです。
現場のスタッフ目線で考えたときに、もっとも大きな変更といえるのは、実習で指導にあたるスタッフに「臨床実習指導者講習」への参加が義務化されたことでしょう。
すでにこの講習を受けている人もいると思いますが、周囲を見渡してみると、未受講の人が圧倒的に多いのではないでしょうか?
このままでは、養成校の学生数に対して臨床実習指導者の数が不足することは明らかなので、リハビリ職の方は早めに講習を受けておく必要があります。
臨床業務の合間をぬって講習等に参加するのはハードかもしれませんが、2020年までにどこかのタイミングで受講しておくことをおすすめします。
「受講していないからバイザーはできない」という人がでる可能性も…
PTやOTの臨床実習でバイザーを務めることになると「帰宅時間が遅くなる」「学生へのフィードバックが大変」と感じる方が多いのではないでしょうか?
必要なことであると理解しつつも、よろこんでバイザー業務を行う人はそう多くないかもしれません。
業務時間内は患者さん・利用者さんのリハビリに追われ、学生にフィードバックをする時間が十分にとれない例も少なくないのです。
これはあまり想定したくないことかもしれませんが、「臨床実習指導者講習を受講していないからバイザー業務はできない」といって、バイザーの仕事から逃れようとするスタッフがでてくる可能性もゼロではないでしょう。
このように意図的に講習を受けない人もいれば、単純に講習に行くタイミングを逃している人もでてくることが想定されます。
そうなると、臨床実習指導者講習を受講済みである、一部のリハビリスタッフだけがバイザーとしての業務を担う状況に陥ることも考えられます。
リハビリ部門の管理者の判断で、すべてのスタッフに講習の受講をしてもらうなど、負荷を平等にするための取り組みをしていく必要があるかもしれません。
先を見据えて、必要な対策を講じていきましょう。
臨床実習指導者講習に参加するチャンスは意外と少ない
「臨床実習指導者講習」は、厚生労働省が指定するものという決まりがあります。
対象となる講習会については、次のようなものが該当します。
- ●臨床実習指導者講習会(厚生労働省が指定)
- ●理学療法士・作業療法士・言語聴覚士養成施設教員等講習会
- ●臨床実習指導者中級・上級研修(日本作業療法士協会が実施)
これらの講習会の概要について、次の表にまとめていきます。
名称 | 概要 |
---|---|
臨床実習指導者講習会 | ●実務経験が4年以上のPT・OT ●16時間以上 ●ワークショップ形式 |
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士養成施設教員等講習会 | ●実務経験が3年以上のPT・OT (言語聴覚士は5年以上) ●約132時間 ●東京・大阪開催 ●受講者の選考あり |
臨床実習指導者中級・上級研修 | ●卒後5年以上 ●日本作業療法士協会正会員 ●初級:3時間、中・上級:14時間程度 ●年2〜4回開催 |
※上記は2018年2月時点の情報です。
こちらの表にあるように、臨床実習指導者講習として認められるものはいくつか種類があります。
「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士養成施設教員等講習会」は教員の養成をするという側面があるので、講習時間が非常に長くなっています。
時間的に負担が少ないのは「臨床実習指導者講習会」または「臨床実習指導者中級・上級研修」ということになります。
作業療法士の方には、日本作業療法士協会の講習が開催頻度も多いので、こちらの受講をおすすめします。
ただ、いずれの講習も居住する都道府県内で受けることができないケースもあると思います。
一年のなかでも受講できるチャンスは限られているので、講習に参加する計画を立てておくと良いでしょう。
また、講習の概要や参加条件などは、状況に応じてアップデートされる可能性があるため、参加を検討する時点で最新の情報を収集するようにしましょう。
なお、臨床実習で求められる要件について、臨床実習指導者講習会の受講以外の内容は、次の記事でも詳しく解説しています。
実習生を受け入れている施設のリハビリスタッフはぜひ目を通してみてください。
まとめ
理学療法士・作業療法士の養成課程のなかでも、臨床実習は重要なものとして位置づけられます。
「百聞は一見に如かず」という言葉もありますが、やはり教科書で学べることには限界があるので、実際の現場での体験には価値があるでしょう。
もちろん義務的に講習に参加しなければならない側面はありますが、「次世代・後輩の育成のため」という視点を持ち、前向きに講習・実習指導にあたってみてください。
参考:
厚生労働省 第5回理学療法士・作業療法士養成施設カリキュラム等改善検討会報告書(案)(2018年2月7日引用)
医療研修推進財団 第44回理学療法士・作業療法士・言語聴覚士養成施設教員等講習会実施要項(2018年2月7日引用)
日本作業療法士協会 臨床実習指導者研修制度と臨床実習指導施設認定制度について(2018年2月7日引用)