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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2021年08月12日
  • リハビリ病院の悩み

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#スキルアップ・セミナー #呼吸管理

新たな資格「心不全療養指導士」、合格のためのポイントについて解説します

2018年12月に脳卒中・循環器病対策基本法が施行されて、各自治体では循環器系に関する疾患の治療や予防にむけた取り組みが課題となっています。
その流れのなか、日本循環器学会が「心不全療養指導士」という資格制度を新設し、2020年に第1回の認定試験が行われました。
気になる合格率や受験対策、資格取得後の生かし方などについて解説したいと思います。

2020年に第1回の認定試験が行われた「心不全療養指導士」を解説

心不全療養指導士を受験するまでの流れ

心不全療養指導士の認定試験を受験するためには、いくつかクリアしなければならない条件があります。

医療関係の資格を有しており、日本循環器学会の会員であること

●まずは受験資格を確認しよう

受験するためには、まずは以下の2つの要件を満たしている必要があります。

医療関係の資格を有していること

看護師、保健師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、公認心理師、臨床工学技士、歯科衛生士、社会福祉士いずれかの国家資格を取得している必要があります。
なお、上記国家資格の所有年数に規定はありませんので、新卒の方でも受験することができます
それ以外のケースとして、学会専門医の推薦と委員会での承認が得られた場合、受験資格が与えられます。

日本循環器学会の会員であること

心不全療養指導士は、日本循環器学会が認定している資格であるため、日本循環器学会の会員である必要があります。
会員には正会員と準会員がありますが、準会員でも受験資格は与えられるため、資格取得だけを考えれば準会員で問題ないでしょう。
心臓リハビリテーション指導士のように、入会して2年以上経過しているという縛りはなく、受験年度の年会費を納めていればOKです。

●eラーニングの受講と症例レポート作成が必要

6時間以上のeラーニングを受講する必要があるため試験に向けたスケジュール管理を

学会に入会したあとは、指定されたeラーニングを受講して修了証を取得し、5例の症例レポートを作成する必要があります
eラーニングに関しては、合計で6時間以上あるため、早い段階から少しずつ受講しなければ、後々時間に追われることになるでしょう。
また、講義はスキップすると視聴したことにならないので、必ず規定された時間を視聴しなければいけません。
症例レポートに関しては、学会ホームページに記載例が掲載されていますが、作成する際にはいくつか注意点があります。
まず、心不全の病期(ステージ)、高齢心不全患者、合併症を有する心不全患者など、10個あるテーマから2つ以上選択する必要があります。
つまり、同じようなケースレポートだけだと不可になってしまうので、いかに幅広く療養指導に関われているかが重要になります。
また、自身の関わりだけでなく、他職種がどのように関わっているかを具体的に記載する必要があるため、普段からの多職種連携も大切であるといえるでしょう。

●資格取得までの費用は3万円

資格取得にかかる費用は、入会金2,000円、年会費8,000円(準会員)、eラーニング受講費用5,000円、認定試験料1万5,000円の計3万円になります。
また、資格更新のためには学会員であり続ける必要があるため、毎年8,000円の会費を納める必要があります。
加えて、5年ごとの資格更新のために学会参加や演題発表などでポイントを貯める必要があるため、学会参加費用(準会員は6,000円)なども考慮しておきましょう。

気になる合格率と受験のタイミングは?

ここでは受験者数や合格率について、また資格取得の難易度について考えてみたいと思います。

●第1回の合格率は89%、ほかの資格との比較は?

第1回の認定試験合格率は89%と高めですが、内部障害分野に関するほかの専門資格における第1回、第2回認定試験の合格率を以下に挙げてみます。

心臓リハビリテーション指導士 腎臓リハビリテーション指導士 3学会呼吸療法認定士
第1回 92.7% 98% 69.6%
第2回 70.3% 96.5% 58.5%

上記資格を参考にした場合、第1回の合格率は高めであり、第2回(2021年12月予定)の合格率は少し下がって80%台前半あたりになる可能性があります。
ただし、上記の資格と比較すると、受験に至るまでの経験年数(学会入会から2年以上で受験など)に差があるため、試験対策に費やす期間は短くなります。
また、職種ごとの合格率は不明ですが、公認心理師や社会福祉士の方が受験する場合、循環器分野に関する知識の習得に時間を要するため、少し難易度は上がると思われます。

いつ受験する?心不全療養指導士

●今後の活躍を考えるなら、早めの受験が吉

多くの認定試験に共通することですが、実施回数が多くなるにつれて合格率は低下してくる傾向にあります。
資格が新設された場合、まずは取得者を増やして活動を広めていきたいという考えがあるため、第1回や第2回の認定試験は比較的易しいといえます。
そのため、今後取得を考えているのであれば、2021年度の第2回、2022年度の第3回で受験することをおすすめします。
また、各自治体においては早急に循環器病対策を進めていく必要があるため、ワーキンググループを立ち上げたり、有識者会議などで意見交換もされていくでしょう。
勤務施設外でも専門職として活動していきたい、循環器分野を専門に頑張っていきたいと考えているのであれば、早めの取得が望ましいです。
また、国が立法して目標を掲げている以上、今後の診療報酬改定で加算が新設される可能性も高いです。
その際、心不全療養指導士の取得がプラスになる可能性が高く、収益性の観点からも取得しておくメリットはあると考えられます。

合格にむけた試験対策のポイント

前述した通り、第1回の合格率は高い結果でしたが、しっかり勉強をしておかないと合格するのは難しいでしょう。
特に、循環器分野に精通していない方にとっては、新たに覚えることが多く苦労するかもしれません。
ここでは合格のためのポイントについて解説します。

●認定試験ガイドブックは必須!

日本循環器学会ホームページにおいて、「心不全療養指導士 認定試験ガイドブック」という書籍が紹介されています。
この書籍はカリキュラムに準拠した公式テキストであり、心不全の病態や治療、療養指導に関する内容が網羅されています。
また、テキストの最後には練習問題も掲載されているため、試験前の力試しにも活用することができるでしょう
現在、公式テキストはこの1冊のみであり、合格を目指す方は購入必須といえます。
特に運動時の禁忌や注意点、治療方法、心不全の身体所見などは、暗記しておく項目が多いので何度も目を通すようにしましょう。
療養指導や多職種連携に関しては、医療職として働いているなかで意識しておくべき内容であり、概念として知っておくことが大切です。

●eラーニングはしっかりと受講しよう

受験の流れで紹介した通り、認定試験を受けるためには6時間以上のeラーニングを受講しなければなりません。
再生しているだけで視聴したことになりますが、循環器分野に詳しくない方の場合はしっかりと勉強することをおすすめします。
各講義は公式テキストに沿った内容となっており、講師の先生がたの解説もわかりやすいです。
1つの講義あたり7〜10分ほどであり、少しの空き時間を利用して勉強できること、集中力を維持しやすいことなどがメリットとして挙げられます。

●ここ数年で改訂されたガイドラインは要チェック

公式テキスト以外にも、心不全の治療や予防に関するガイドラインに目を通しておくことをおすすめします。
特に、2017年に改訂された「急性・慢性心不全診療ガイドライン」、2021年に改訂された「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」は重要です。
ここ数年で、患者さんの高齢化、サルコペニアやフレイルなど加齢にともなう病態の合併など、心不全管理の概念も大きく変わってきています。
余裕があるならば、これらのガイドラインに目を通しておくことも合格につながるポイントであるといえるでしょう。

まずは普段の臨床を通して心不全の理解を深めよう

今後注目度が上がることは間違いないでしょう。
心不全の疾病管理は医療機関だけで完結するものではないため、地域で働く専門職の方にも必要となる資格であるといえます。
ただ、心不全は複雑な病態であり、患者さんの病期によって治療戦略が異なったりと、覚えることがたくさんあります。
そのため、机上の学習だけでなく、日々の業務において心不全の病態や患者さんとの関わり方などを考えておくことが合格するためのポイントといえるでしょう。

参考:
日本循環器学会ホームページ(2021年6月19日引用)
日本心臓リハビリテーション学会ホームページ(2021年6月19日引用)
日本腎臓リハビリテーション学会ホームページ(2021年6月19日引用)
公益財団法人医療機器センター ホームページ(2021年6月19日引用)
日本循環器学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)(2021年6月19日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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