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クリニック・治療院 OGメディック

  • 桑原

    公開日: 2021年09月02日
  • リハビリ病院の悩み

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#リスク管理 #理学療法

運動すると心臓や血管はどう反応するの?心臓リハビリを行う上での注意点とおすすめの運動

運動をすると身体のさまざまな臓器が反応し、いろいろな兆候が生じますが、心臓に関しては脈が速くなるなどの反応が起こります。
具体的に運動をすると心臓や血管にどのような反応が起こり、心臓リハビリを行う上で注意すべきことはどのようなものなのかについてお話しします。

運動をしたときに体内で起っているコト教えます

心臓リハビリを行う前に知っておきたい。運動すると心臓はどのように反応するのか?

運動をすると脈拍が増えたり血圧が上がったりしますが、身体の中ではどのような反応が起きているのでしょうか。

血圧測定中

●ヒトの運動開始前、運動中、運動終了時の身体の反応を解説

ヒトの体の中では運動直前から運動終了までどのような反応が起こっているのでしょうか。
運動開始前:運動をイメージしたと同時に体を動かす前に、副交感神経の活動が弱くなり、心拍数が上昇する(予期心拍反応)。
これにより速やかに運動することが可能。

運動中:運動開始時、活動する筋肉の中の筋機械受容器が運動を感知して、心血管中枢よりその情報を心臓や血管に伝え、心拍数や血圧の増加が見られます。
また頸動脈や大動脈弓には動脈圧受容器と呼ばれるものがあり、血流の増加により血管内皮細胞が刺激され、血管は自動的に拡張されて運動に対応し、この反応により心拍数や血圧の上昇を引き起こします。

運動終了時:運動終了時に筋肉の収縮が終了すると同時に、脳から心血管中枢に情報が伝えられ、副交感神経の活動を再活性化して心拍数を減弱させます。
その後、血流の減少を動脈圧受容器が感知して交感神経の活動を減弱させて安静状態へと導きます。

このようにヒトの体の中では筋肉や血管内にあるさまざまな細胞の情報を脳や心血管中枢などを介して、交感神経・副交感神経の活動をコントロールしたり、心拍数や血圧をコントロールしています。

●心疾患のある人の場合、ない人とくらべてどう違う?

心疾患の患者さんの場合 運動強度の上昇に対して一回拍出量・心拍数ともに伸びが悪いため注意が必要

心疾患のある患者さんの場合、心血管中枢の働きがうまくいかず、運動開始前、運動中、運動終了時のすべての場面での反応がうまくいきません。
そのため運動への滑り出しがうまくいかない、運動時にも血流を感知して心拍数や血圧の上昇、血管の拡張などを引き起こすための反応がスムーズに起こらない、運動終了時に速やかに心拍数や血圧の低下、交感神経の減退などの反応ができないといった不具合が起こります。
つまり運動時に通常であれば心拍数と血圧の上昇が起こり、一回拍出量を増やし心臓への負担を減らしていますが、心疾患を持っている患者さんの場合、このシステムが破綻しており、致死的な問題を引き起こすこともあります。

心臓リハビリで効果を得るために設定した運動強度を心拍出量で評価する

心臓リハビリでは、運動の目安として運動強度を心肺運動負荷試験などで算出し、運動の指標にしますが、運動強度と身体の反応について解説します。

●運動によって心拍数は直線的に上昇、心臓の一回拍出量は高強度で頭打ちとなる

運動強度の上昇に対して心拍数は直線的に上昇します。
低い運動強度の場合、主に副交感神経の働きが減衰することにより心拍数は上昇し、静脈血の還流量を増やし、心臓が拡大して一回拍出量を増やします。
一方、運動強度が高い運動の場合には、交感神経機能の亢進により心拍数が上昇します。
交感神経の働きが強くなることで心収縮量を増やし一回拍出量が増加しますが、強度が高度になると頭打ちになります。
一般的な心臓の機能は1分間の心拍出量(一回心拍出量×心拍数)で判断されますが、最大運動時は安静時の約5~6倍に達します。

●強度での運動で、心疾患のある患者さんはない患者さんとくらべてどうなるのか

心疾患のある患者さんは運動強度の上昇に対して、
一回拍出量:安静時が低くて、伸びが悪い
心拍数:安静時すでに高く、伸びも悪い
という特徴があり、運動強度が高くなると一回拍出量、心拍数共に反応が悪くなり、中等度の運動強度であっても大きな負担となるため運動時には大きな注意が必要です。

運動に対する反応としての血圧上昇はなぜ起こる?心臓リハビリにおすすめの運動もご紹介

●心臓リハビリを行う前に知っておこう。運動すると血圧が上昇するのはどうしてなのか

運動すると運動の強度や種類によっては血圧が80mmHg程度上昇する場合もあります。
それは、血圧が上昇することで血管壁が伸張され、それによって血管の壁にある血管内皮細胞が感知し、血管拡張因子の発生が促されて、必要な筋肉への血流を大きく増やすことができるからです。
また血圧が上昇することにより心拍数は減少しますが、心疾患患者さんの場合には頸動脈や大動脈弓にある動脈圧受容器の感度の低下、副交感神経機能の低下により心拍数の変化が少なくなり、致死性不整脈や突然死の原因になるともいわれています。

●心臓リハビリの必要な患者さんにおすすめの運動、リハビリ機器をご紹介

車椅子のままでも安心安全に利用可能 Be-Wellシリーズ

運動時の循環器の反応について述べてきましたが、適切な強度で運動することは、心臓リハビリを行う患者さんには重要です。
心臓リハビリを行う患者さんにはエルゴメーター、トレッドミルなどのリハビリ機器を使用して各個人の心機能などに沿った運動強度を決定して運動を行います。
オージー技研ではアップライト型やリカンベント型のエルゴメーターを取り扱っており、心機能に高度の障害がある患者さんにも安心して使用していただけるようにリハビリ機器をご用意しています。
オージー技研の「Medergo(メデルゴ)」にもリカンベント型はありますが、車いすのままでも利用できるリカンベントバイク「BE-Well WE-110」を今回はご紹介いたします。
「BE-Well WE-110」の特長として、

  1. 1. 心機能の低い方でもアップライト式のエルゴメーターより負担が少なく行える
  2. 2. またぎ動作が少ないため患者さんの負担が少なく安全、また心機能への負担が軽減
  3. 3. 座面が回転するタイプもあり、骨関節疾患や麻痺があっても安全
  4. 4. 背もたれが深くゆったりと座れる

などが挙げられます。
またBE-Wellシリーズの最も優れた点は、座面をバイクから取り外すことができ、車いすに座ったままバイクをこぐことができる設計です。
特に心機能の低い患者さんは、バイクへの移乗が困難であったり、移乗動作で息切れを起こす場合もあり、車いすのまま行えることで患者さんへの負担が減り、心臓に負荷をかけることなく運動を開始できます。
また麻痺がある患者さんでは車いすでの座位はサイドの手すりや背もたれがあり、座面も広いため安定感があります。
BE-Wellシリーズは下肢だけではなく上肢の協調運動も併せて行うことができ、施術者は対面からアプローチが可能で患者さんの様子をしっかりと観察ができます。
脈拍数も併せてパネルで確認できるため、効果的なリスク管理を行うことも可能です。

心臓リハビリを行う際には心拍数や血圧などの反応、運動強度に注意が必要

運動時の体内の循環機能の反応、運動強度に対する心臓の反応についてご紹介しました。
心臓リハビリが必要な心疾患を有する患者さんについては、運動時の循環反応、運動強度に対する心臓の反応がうまくいかないため、心拍数、血圧などの反応を見ながら、運動強度に大変な注意をする必要があります。
特に重症の心疾患を有する患者さんについては、リカンベント型のエルゴメーターなどの負担のない心臓リハビリから始めることをお勧めいたします。

参考:
OG Wellness 運動療法 BE-Wellシリーズ(2021年7月10日引用)
OG Wellness Medergo(2021年7月10日引用)

  • 執筆者

    桑原

  • 1998年理学療法士免許取得。整形外科疾患や中枢神経疾患、呼吸器疾患、訪問リハビリや老人保健施設での勤務を経て、理学療法士4年目より一般総合病院にて心大血管疾患の急性期リハ専任担当となる。
    その後、3学会認定呼吸療法認定士、心臓リハビリテーション指導士の認定資格取得後、それらを生かしての関連学会での発表や論文執筆でも活躍。現在は夫の海外留学に伴い米国在中。

    保有資格等:理学療法士、呼吸療法認定士

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