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急性期リハビリにおけるリスク 管理マニュアル化 備品の整備がカギを握る

近年、急性期からのリハビリテーション(以下リハビリ)がエビデンスの上からも推奨され、発症直後からリハビリの介入が行われています。
しかし、急性期には安全管理などの点にも気を配る必要があり、リスク管理も重要な要素となっています。
患者さんがリハビリ中に急変したらどのように対応するべきか、注意点とその対策について詳しくお話します。

リハビリ中の急変:いま注目する理由と実際に筆者が体験した急変

筆者も実際に術後リハビリ中に患者さんが急変した経験がありますので、具体例を交えてご紹介することにします。

1)急性期からのリハビリ介入が推奨される現代に考慮するべきことの一つは急変時の対応

近年、リハビリ領域においても急性期からの介入による早期離床が重要視され、そのニーズは増えてきています。
たとえば、脳卒中のリハビリのガイドラインでは発症後48時間以内のリハビリ開始が好ましく、早期にリハビリを始めたほうが自立歩行の獲得率の高いことが分かっています。
また、医療保険点数の改正においても早期リハの重要性と保険点数の増額が取りあげられており、急性期リハへのニーズは高まる一方です。
しかし、早期にリハビリ介入するためにはその安全面にも十分に考慮する必要があり、中止基準などを医師にも確認しておく必要があります。
例として、リハビリテーション医学会が提案しているリハビリの中止基準についてお話しましょう。

兆候
安静時 ●脈拍40回以下または120回以上
●収縮期血圧が70mmHg 以下もしくは220mmHg以上
●拡張期血圧が120mmHg以上
●体温が38℃以上
●胸痛がある
●SpO2が90%以下の場合
循環動態 ●労作性狭心症の方
●心筋梗塞直後で循環動態が不安定な場合
●著しい不整脈
●心房細動による著しい頻脈や徐脈がある場合
座位 ●目眩、冷や汗、嘔吐がある場合
リハビリ前 ●動悸、息切れ、胸痛がある場合

これらの兆候がある場合には、積極的なリハビリはしないことを勧めており、危険の回避とともに、経験値などに左右されない定量化が可能です。

2)実際に筆者が経験した急変は9例:呼吸循環動態以外にもさまざま

実際に筆者が急性期リハで勤務していた際に経験した急変は、以下のようなものがありました。

  • ●深部静脈血栓症(DVT):肺塞栓や脳梗塞、心筋梗塞など
  • ●突然の意識消失
  • ●不整脈:心室細動、心房細動・心房粗動、頻脈や徐脈
  • ●貧血発作
  • ●転倒
  • ●留置ドレーンチューブ・点滴の引き抜き
  • ●意識レベル低下
  • ●血圧上昇や低下
  • ●SPO2の急激な低下、息切れ

筆者の実経験は上記のものですが、他にも急変の例として、脱臼・骨折、やけどや麻痺の出現、胸痛、起立性低血圧、低血糖発作などが急変の原因として考えられ、実にさまざまなものが挙げられます。
なかでも私が経験した最大の急変は外科の手術後、歩行訓練中に両側の肺塞栓による意識消失、心室細動を起こし、近くにいた医師や看護師が蘇生措置を行いましたが、帰らぬ人となられました。
防ぎようのないこととはいえ、かなりの精神的ダメージを受けたのは言うまでもありません。

リハビリ中の急変に慌てないために、私たちができる対応と対策

リスク管理の上で大切なことは、想定内のリスクなのか、全く想像もできないことなのかということです。それによって、リハビリスタッフの精神的なストレスが変わります。
患者さんのその日の状態や血液データ、経過などを踏まえてあらかじめ予測しておき、対策を講じる必要がありますが、突然起こる急変や死に至る事例などは予測も難しく、ストレスも大きく感じるでしょう。

1)医師や看護師との連携、患者さんの家族への対応も大切

まずリハビリを始める際に中止基準やどこまでのリハビリなら可能か、条件などを医師に確認しておきましょう。
同時に患者さんの経過や普段の様子、夜間は十分に睡眠がとれていたかなど看護師さんからも、情報を収集しておきましょう。
また急変が起こった場合に重要なことは、第一発見者であるリハビリスタッフは近くにいる家族やほかの患者さんへの配慮をする、また場合によってはパニックにならないように隔離することです。
主治医や担当看護師への連絡と同時に、患者家族への説明も忘れないようにしましょう。

2)リハビリ前に検査結果や投薬、血液検査の結果などを見ておこう

先ほどもお話したように事前に情報を収集しておくことが大切ですが、具体的には患者さんの疾患から考えられる病状やその疾患が及ぼす呼吸器系または循環器系への影響、実際の患者さんの状況などを想定しておくことが重要です。
特にICUなどの特別なユニットに入室されている方や発症・術後早期の方は、血液検査やレントゲン、使用している薬剤やその投与量、手術様式なども確認して、現状の把握に努めましょう。

リハビリ中に患者さんが急変したら?リハビリ室内の備品やマニュアル作成の重要性

リハビリ室の病院内でのロケーションは施設により大きく異なりますが、診療部門と離れたところに位置していることもあり、救急カートやストレッチャーなどの備品をそろえておく必要があります。
またすべてのリハビリスタッフが、急変時の対応や備品などについて知っておかなければなりません。

1)急変の対応をするために、リハビリ室に必要な備品とは?

急変時のさまざまな状況を考慮し、緊急対応に必要な備品を準備しておかなければなりません。
リハビリ室に必要な備品としては

  • ●ストレッチャー(患者搬送のため)
  • ●血圧計
  • ●心電図モニター
  • ●アンビューバッグ
  • ●酸素ボンベ・マスク
  • ●パルスオキシメーター
  • ●救急カート(救急のための薬剤、ドレッシング材など)

などがあり、これらの備品の定期的な点検と薬剤の消費期限などを確認する必要があります。
業務の一環として確認事項を決定し、持ち回りで行うことによりすべてのスタッフに周知も可能です。

2)スタッフすべてに周知するために、マニュアル作成は重要!

リハビリ部門には医師や理学療法士・作業療法士・言語療法士やクラークなどの事務員などを含めた業種の方がかかわっています。
急変時や緊急時にどのように対処するべきかについては、リハビリ室での対応マニュアルなどを作成し、すべてのスタッフに周知する必要があります。
定期的なマニュアルの確認や見直しも重要であり、心肺蘇生法(CPR)などの一次救命処置(BLS)の定期受講も重要な要素の一つです。
マニュアルの実例としては

  • ●急変発生時、院内のコードブルーの掛け方
  • ●実際のアンビューバックや酸素ボンベなど備品の使い方
  • ●急変時、どの部署に患者さんを搬送するのか
  • ●実際の対応方法(CPRなど)
  • ●上司への報告(ヒヤリハット報告書やインシデント報告書など)

などをあらかじめ想定して取り決めておきましょう。
マニュアル化し、確認することで臨床経験年数など関係なく、同じように対処することができます

まとめ

リハビリ中の急変は、急性期リハビリの重要性が言われているこの時代には避けては通れないことです。
施術者であるリハビリスタッフの教育やマニュアル、リハビリ室の備品の整備など、さまざまな事例を想定して準備を怠らず、落ち着いて対応できるようにしましょう。
そのためには、リハビリ施設全体での意識改革とリスクマネージメントを行う必要があります。
この機会にぜひ考えてみてください。

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参考:
脳卒中リハビリテーションガイドライン 急性期リハビリテーション(2018年2月11日引用)
リハビリテーション医療における安全対策と危機管理 高岡徹 2011 Jpn J Rehabil Med 48 206-211(2018年2月11日引用)
理学療法士の視点から見た早期リハビリテーションの実際 西田悠一郎 2016.3杏林医会誌 47巻1号 55−60(2018年2月11日引用)
リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 前田真治 2007 Jpn J Rehabil Med 44.384-390(2018年2月11日引用)

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