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高齢患者さんの認知機能が血糖コントロールによって向上!?その重要性と行う上での課題を検証

糖尿病の合併症を防ぐために行われる、血糖コントロール。
最近の研究で、糖尿病そのものが認知機能に影響を及ぼすリスクが指摘されるなど、年齢に関係なく、血糖コントロールの重要性が論じられるようになりました。
そこで今回は、高齢者と血糖コントロールが認知機能に与える影響や、高齢ゆえの管理の難しさについて解説します。

血糖コントロールによって、認知機能が向上!?

糖尿病によって引き起こされる合併症はさまざまですが、その一つとして考えられているのが、認知症です。
近年行われている研究を総合すると、糖尿病ではアルツハイマー病が1.5~2倍、血管性認知症が約2~3倍多くなっていることがわかっています。
つまり、糖尿病によって認知症を引き起こすリスクが上がる、ということがいえるのです。
また、こんな研究結果もあります。
1997年に行われた研究によると、高齢糖尿病患者さんのうち、血糖が270mg/dlを超えると、語想起(言葉を思い出す機能)や、引き算課題のスピ―ド・正答率が低下しました。
また、健常の方、糖尿病の方、アルツハイマーの方、糖尿病とアルツハイマーを併発している方を同じテスト内容にて比較したところ、糖尿病では計算や注意の課題での失点が目立つ一方、アルツハイマーでは時間見当識、遅延再生の成績が低下していることがわかりました。
そしてアルツハイマーと糖尿病を併発している方では、その双方の欠落が重なって起こっていることがわかりました。
以上2つの研究結果より、糖尿病によって認知症の発症リスクは上がること、そして血糖値をコントロールすることで、少なくとも糖尿病を起因とする障害の発症リスクを下げられるといえるのです。

高齢ゆえの血糖管理の難しさ

高齢者にとって、血糖コントロールを行うことは、認知機能低下を防ぐという意味でも重要です。
しかし、実際に高齢の方の血糖管理を行うことは難しくなっています。
なぜ高齢者は血糖コントロールを行うことが難しくなってしまうのでしょうか。
その原因としてまず考えられるのが、以下に挙げるような加齢による生理的な機能低下です。

耐糖能の低下 食事によって上昇した血糖値を正常に戻す機能の低下
インスリン分泌能の低下 食後の急激な血糖上昇に反応し、インスリンを分泌する機能
エネルギー消費量の低下 筋肉量が落ちることによる基礎代謝量の減少
インスリン抵抗性の増大 組織におけるインスリン感受性が低下し、インスリンが効きにくくなっている状態

また、これらの原因に加えて、高齢の場合は以下の2つの原因が考えられます。

●指示を生活に反映させることが難しい

加齢に伴い、言葉をはっきりと聞き取る力が衰えてしまうことで、医師や看護師、リハビリスタッフなどが伝えた事柄を十分に把握できず、生活に反映させづらい、というデメリットがあります。
また、身体機能の低下から自炊することが望ましい状態であっても、食事を作ることがおっくうになり、結果として毎食ほぼ外食になってしまうなど、実際に行動を起こすことができない、という面もあります。

●低血糖および高血糖症状に気づきにくい

お年を召した方の場合、注意したいのが「明確な高血糖および低血糖の状態を把握できない恐れがある」ということです。
仮に低血糖状態となると、動悸や眠気など、さまざまな症状が出現しますが、お年寄りの場合、加齢によってこれらを感じる機能の低下から症状が出現しにくく、気が付いたときには重度の状態となっているケースが少なくありません。
実際に筆者が遭遇したケースでは、患者さんから「なんか頭がぼーっとする」と言われ、血糖を測定したところ血糖値が血糖値が30mg/dlと、いつ昏睡状態になってもおかしくない状態でした。
このように、患者さん自身には大きな症状が出ていなくても、実際には早急の対応を要する状態になってしまうことが実際に起こり得ます。
これは高血糖状態であっても同様のことがいえます。

まずは血糖値HbA1c7%以下を目標に

整形外科の場合、高血糖状態は治癒期間の延長を引き起こすだけでなく、創部を易感染状態にしてしまうことから、血糖コントロールは重要です。
一方で、血糖値やHbA1cといった数値だけに惑わされ、個別性をみたうえでコントロールすることを考えなければ、退院後も継続した血糖コントロールを行うことはできません。
そこで一つの目安となるのが、「HbA1c7%以下」という数値です。
この数値は日本糖尿病学会が2013年に熊本宣言としてだしたもので、合併症予防の目標値として定めているものです。
それまで、糖尿病は血糖値やHbA1cの数値を「優」「良」「可」「不可」と4段階で評価していました。
しかしこの評価方法では、高齢で生理学的にコントロールが難しい状態では、いくら頑張っても「優」に行くことができないなど、さまざまな弊害が起こりました。
そこで、「合併症予防のためにはHbA1cを7%以下」という一定の基準を設けたほか、血糖正常値を目指す「HbA1c6.0%未満」、そして治療強化が困難な際の目標値「HbA1c8.0%未満」という3つの基準が新たに制定されました。
日々の血糖値による大きな変動に一喜一憂せず、まずはこの「HbA1cが7%未満かどうか」という点をチェックすることをお勧めします。

まとめ

高齢者の場合、いくら血糖コントロールが必要だとわかっていても、長年にわたって培った生活習慣を変えることは想像以上に大変なことであり、大きなストレスにもなりえます。
そこでお勧めなのが、患者さんと一緒に「どこを改善できるかを話し合う」ことです。
患者さんも一緒になって考えてもらうことで、改善ポイントを一緒に見つけることができます。
ぜひ、患者さんの個別性をだしながら、指導をしていただけたらと思います。

参考:
櫻井孝:糖尿病と認知症の関係:糖尿病ケア:2016年13巻1号:pp012-018
東森由香:年を重ねるとなりやすい糖尿病の合併症:糖尿病ケア:2017年14号9号:pp028-031
春田さゆり:無謀な血糖コントロール指導:糖尿病ケア:2014年11巻5号:pp038-041 pp24,32,
日本糖尿病学会「熊本宣言2013 ―あなたとあなたの大切な人のために Keep your A1c below 7%―」(2018年2月14日引用)

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