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クリニック・治療院 OGメディック

  • 奥村 高弘

    公開日: 2021年09月23日
  • リハビリ病院の悩み

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リハビリ専門職が転職する前に知っておきたい、各職場のメリットとデメリット

総合病院やクリニック、介護保険施設や学校の教員など、リハビリ専門職が働く職場はさまざまです。
そのため、「この職場は自分には向いていない」、「若いうちにいろいろな経験をしたい」など、スキルアップなどを目的に転職を考える方もいるでしょう。
急性期や回復期、介護保険関連施設における業務内容と、どんな人がどの職場に向いているのかについてご紹介します。

急性期病院の業務内容

高いリスク管理能力と知識が求められる急性期病院

まずは、急性期病院における業務内容と働くメリットデメリットについて考えてみます。

●急性期では、いかに早く退院につなげるかがポイント

急性期病院では、救急搬送や緊急手術後すぐにリハビリが開始となりますが、その目的は早期からの廃用予防が主となります。
特に後期高齢者の場合、数日間の臥床によって容易にADL能力が低下するため、「歩けなくなったから家で生活できない」というケースもみられます。
急性期病院では在院日数短縮を求められるため、運動機能やADLを落とさずに、1日でも早く退院につなげることが重要になります。
術後で疼痛が強い、全身状態が安定していない、多くのルート類がつながっているなどの状態でリハビリを進めることが基本となります。

●高いリスク管理能力が求められる

早期退院や早期離床のためには、病態の把握や起こり得るリスクの想定など、高いリスク管理能力が求められます。
リスク管理=バイタルのチェックではなく、併存症の把握や薬剤に関する知識、医療機器やモニター類に対する理解などが必要になります。
そのため、基礎医学から薬理学など幅広い知識が求められるため、養成校の授業で学んできただけでは太刀打ちできません。
また、ベッド周囲の環境(点滴ルートや人工呼吸器の回路など)を評価して安全を確保するなど、事故防止のための危険予知能力なども必要になります。

●急性期病院で働くメリットとデメリット

急性期病院で働くメリットとデメリットについて考えてみます。

◯メリット

前述したように、高いリスク管理能力が求められるため、病態に関する知識や医療機器に関する知識を高めることができます。
また急性期では、新規患者さんが多い、急なカンファレンスが入ったなど、タイムスケジュールが乱れることがよくあります。
医学的な知識以外にも、臨機応変に対応する能力なども鍛えられるでしょう。

◯デメリット

急性期では早期介入や早期退院が基本であり、極論すると「歩けるようになったらOK」となります。
「早く帰らせることがリハビリじゃない」という葛藤を感じるセラピストも多いのではないでしょうか。
「患者さんとゆっくり向き合いたい」、「じっくりと治療をしたい」と考える方には向いていない職場といえるでしょう。

回復期病院の業務内容

柔軟な対応能力・他職種との連携が求められる回復期病院

回復期病院の業務内容と働くメリットデメリットについて考えてみます。

●回復期では、退院に向けたADL改善や環境調整がポイント

回復期病院におけるリハビリの役割は、運動機能やADLをアップして自宅退院を目指すことです。
基本的な機能訓練だけでなく、福祉用具や自助具を用いたADL練習、自宅生活にむけた家屋評価などさまざまな業務内容があります。
そのため、医学的な知識や福祉用具の活用方法をはじめ、家屋構造の把握など幅広い知識が必要になります。

●ADL拡大にむけた柔軟な対応や他職種との連携が大切

回復期のリハビリでは、機能訓練と福祉用具などの代替手段を考えたり、介護サービスの新規導入やサービス内容の検討なども必要です。
その際、他職種に対して適切なアドバイスを行えるか、難しい専門用語を羅列するのではなく、しっかりと要点を伝えることができるかなども大切です。
病棟の看護師さんだけでなく、ケアマネジャーや福祉用具の業者さん、改修業者さんなど関わる職種が多くなるのが特徴です。

●回復期病院で働くメリットとデメリット

前述したように、回復期病院ではさまざまな視点から患者さんの生活をとらえる必要があります。
回復期で勤務するメリットとデメリットについて考えてみましょう。

◯メリット

急性期病院とは異なり、患者さん一人ひとりに向き合う時間が長くなるため、患者さんのニーズやゴールなどを共有しながらリハビリを進めていくことができるでしょう。
また、脳血管疾患や運動器疾患に対して専門的な治療テクニックをもっている場合、じっくりと治療や効果判定をすることができるでしょう。
患者さんのためにどうリハビリを進めていくか、治療の選択肢を広くとれることも回復期のメリットであるといえます。

◯デメリット

回復期で勤務するうえで、特筆すべきデメリットはありませんが、前述したように多職種と連携することが重要になります。
そのため、自分のテクニックや知識だけを頼りに治療を進めていく、いわば職人気質のセラピストにとっては合わない職場かもしれません。

介護保険関連施設の業務内容

リハビリを通して患者さんの生活を看る介護保険関連施設

介護保険関連施設には、デイケアやデイサービス、訪問リハビリや老人保健施設などが該当します。

●さまざまなリハビリを通してADLやQOLを改善する

急性期や回復期病院と大きく異なる点として、患者さん(利用者さん)の生活ベースが在宅であることが特徴です(老健をのぞく)
退院後の生活を見るのではなく、今の生活や今後の目標についてご本人やご家族と話し合っていくことが大切です。
なんのために筋力トレーニングや歩行練習をしているのか、具体的にどの生活動作をどう変えたいのかなど、より生活に即したリハビリが行われます。
機能訓練や基本動作練習だけでなく、レクリエーションや他者との交流など、「参加」に焦点をあてた取り組みも大切なリハビリでしょう。

●他職種との連携やリハビリ中のリスク管理能力が必要

回復期の特徴でも述べましたが、在宅での生活においてはご家族をはじめ、介護スタッフやかかりつけ医など多くの職種と関わるため、情報共有が大切になります。
また、小規模のデイサービスや訪問リハの場合、セラピストが利用者さんの全身状態を把握し、運動メニューや運動の可否を判断する場面もあるでしょう。
フィジカルアセスメントをはじめ、病態や薬剤に関する知識、急変を起こさないようにするためのリスク管理能力が求められます。
デイサービスや訪問リハでは、医師がいない状況で対応を求められるということを覚えておきましょう。

●介護保険関連施設で働くメリットとデメリット

介護保険関連施設のなかでも、デイサービスと訪問リハで働くうえでのメリットとデメリットを挙げてみます。

◯メリット

デイサービスの場合、機能訓練指導員として勤務することになりますが、リハビリ内容は個別の運動や動作練習だけではありません。
事業所の特色にもよりますが、さまざまな創作活動や屋外での農作業など、利用者さんの日常に沿った活動を行ったりと、自由度が高いのが特徴です。
訪問リハに関しては、利用者さんの生活環境をベースにリハビリが行われるため、具体的な目標設定が重要になります。
トイレ動作を獲得するために機能訓練をするのか、福祉用具を利用するのか、家屋環境を変えるのかなど、さまざまなアプローチがあります。
「生活に密着したリハビリがしたい」、「型にとらわれたくない」という考えのセラピストにとっては、これらの職場が向いているかもしれません。

◯デメリット

自由度が高くやりがいのありそうな介護保険分野ですが、給与面で不安を感じることもあります。
デイケアや訪問リハは医療機関が介護保険部門として実施していることが多く、給与体系も病院のスタッフと同様になるでしょう。
しかし、小規模のデイサービスや訪問看護ステーションなど、事業所の規模によって月給や賞与にばらつきが出ることを覚えておきましょう。
年収を第一に考える場合、介護保険分野は厳しいかもしれません。
また、デメリットではありませんが、デイサービスや訪問リハでは、リハビリ専門職が体調管理や運動可否の判断を行うことがあります。
基礎医学知識が不足している、呼吸循環が苦手という方の場合、しっかり勉強しないと十分な安全管理が行えません。

自分に合った職場を見つけるために

今回紹介した業務内容や働くメリットはあくまでその一部であり、経験年数や職歴によっても捉え方が変わってくるでしょう。
ただ、転職するには手続きや就活、新たな環境での緊張感など、さまざまなストレスがかかってきます。
「前の職場のままがよかった」と後悔しないためにも、各分野における業務内容に加えて、自分が向いているかの適性なども考えて行動することをおすすめします。

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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