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看護師が患者の理解度を向上させられるかどうかは、医療者側の理解度によって決まる!?

患者さんへ指導や説明を行う際、「この方は理解力が低い…」と思ってしまったこと、ありませんか?
実はそれ、患者さん側の問題ではなく「医療者側の理解度が足りない」という問題から起こっているのかもしれません。
そこで今回は、看護師が患者さんの理解度を向上させるために押さえておきたいポイントについて解説します。

患者さんの理解度を上げるためには、まず患者さん自身を知ることが大切

看護師は、患者さんに対して指導を行う場面が多々あります。
そのなかで、「指導がスムーズに入る患者さん=良い患者さん」「指導がなかなか入らない患者さん=悪い患者さん」と決めつけてしまうことはないでしょうか。
患者さんはたとえ同じ病名であっても、現在の状態や治療の内容、これまでの既往歴や合併症の有無などは違いますし、生活習慣や家族構成などもまったく異なります。
よって、患者さんに対して指導を行う場合には、まず患者さん自身を知ることから始めることが大切です。
たとえば高齢の患者さんに、文字がたくさん書いてあるパンフレットを渡し、それを読みながら説明したとします。
しかし高齢の患者さんのなかには、文字を読むこと自体が困難な方もいます。
そのため、いくらパンフレットを読んでも、文字が見えにくくてどこを読んでいるのか確認することに意識が集中してしまい、内容がちっとも入ってこない、ということが起こり得ます。
そんな場合は、文字ではなくイラストなど、直接内容が伝わってくるような方法で説明することで、同じ内容であっても患者さんの理解度は各段にあがるはずです。
このように、患者さんの状態を把握し理解することが、結果として患者さんの理解度を上げることにつながるのです。
「忙しくて、そんな時間はなかなか取れない」という看護師さんもいらっしゃるかと思いますが、忙しくて時間がないからこそ患者さんを知り、適切な伝達手段を考え、短い時間でも中身のある指導を行うことが有効となるのです。

理解力がないのではなく、医療者側の工夫が足りないと考える

患者さんに丁寧に説明したことが守ってもらえなかったとき、皆さんはどのように感じるでしょうか。
多忙な業務に押されて、つい「患者さんが理解してくれないから、何回も繰り返し説明しなくてはいけない」と考えてしまうこともあるでしょう。
しかし、ここで大切なのが「患者さんが理解できないような説明をしてしまった」という医療者側の振り返りなのです。
つまり、患者さんに理解力がないのではなく、医療者側の理解が足りなかったために指導が行き届かなかった、ということが考えられるのです。
指導内容を理解してもらうポイントは「これならできそうだ」と患者さんに納得してもらうことです。
指導内容に対し「こんなのできないよ」と思われてしまったら、当然実行してもらうことは難しくなり、指導する意味もなくなってしまいます。
患者さんについてさまざまな観点から情報を収集し、その結果を見て「患者さんが実行できそうな内容」を指導・説明をすること。
それが、結果として患者さんの理解度を向上させることにつながります。

患者家族が毎日来ていることに対し、安心しない

患者さん本人に指導したことが、なかなか実行されないと感じたとき、看護師は家族に指導内容を伝え、家族が理解してくれたらそれでOKとしてしまいがちです。
特に、毎日面会に来て積極的に介助をしてくれるなどの協力的な家族には看護師も安心して、指導内容に対しても、そのまま任せきりになってしまうことはないでしょうか。
しかし、看護師が見ていないところで、実は家族も本来の方法とは違う自己流のやり方をしている可能性がある、ということは留意しておく必要があります。
また、本人が常に家族と一緒に行動しているとは限らず、さらに退院すれば本人と家族だけの生活が始まり、指導内容をきちんと理解していなければ、誤った方法のままその後の生活を送ることになります。
そう考えると、医療従事者が指導できる時間は限られているといえます。
家族に指導内容を伝えていたとしても、入院中は本人に適宜声をかけ動作を見守りながら、細かい部分についての指導を継続させていくことが大切です。

患者さんの要望を一度は必ず受け止める

患者さんの要望のなかには、治療に反するような内容のものもあります。
そんなとき、「それはできません」と完全に否定してしまうのではなく、看護師としてまずは患者さんの要望を受け止めるとともに、「どうすれば患者さんの要望をかなえることができるか」を患者さんと一緒に考えることが、結果として治療そのものに対する理解へつながることもあります。
たとえば、医師から「ベッド上安静」が指示されているにも関わらず、患者さんはかたくなに「トイレにだけは絶対に行きたい」と希望されていたとします。
このとき、「いいえ、ベッド上安静なので無理です」と言ってしまうのは簡単ですが、それでは患者さんのフラストレーションは解消されず、看護師に対しても「気持ちを理解してくれない」と感じて信頼関係にも大きく影響し、その後の指導も入りにくくなる可能性があります。
そんなときは、まず一度「トイレに行きたい」という患者さんの思いを受け止めてみましょう。
さらに「どうすればトイレに行けるようになるのか」を考え、医師やリハビリ担当者とともに検討し、たとえダメだったとしても患者さんに代替え案を提示するなどの行動を起こしてみましょう。
そうすることで患者さん自身も「ここまで検討しなければいけないほど、今は安静が大事なのか」と気づいてくれたり、「自分の希望をかなえるために看護師さんは努力してくれた」と評価してもらうことができ、それは結果的に「ベッド上安静」への理解を得ることにつながります。

まとめ

患者さんに対し、看護師側が「理解力が足りない」とレッテルを張ることは簡単にできます。
しかし一度つけたレッテルは、患者さんの理解度を向上させる機会を奪い、同時に看護師自身の「指導する能力」を高める機会をもなくしてしまうことになるのです。
患者さんを知るためには、まず看護師自身が「そういうレッテルを自分が貼ってしまっている」ということに気づくことが大切です。
患者さんを知るということは、巡り巡って自分自身を知る、ということにつながるのかもしれません。

参考:
工藤文子他:家族のカルテ 失語が出現し、夫に頼りがちな患者と夫のかかわりから学んだこと:リハビリナース:2014年7巻5号:pp82-84
幣憲一郎:初期の糖尿病で病識がなく、やる気がない患者への指導:糖尿病ケア:2014年11巻6号:pp42-43
上田由美子:患者さんの行動を変える指導方法とは:糖尿病ケア:2015年12巻5号:pp12-15
松田佳実:9高齢者への患者を見ない指導:糖尿病ケア:2014年11巻5号:pp46-49
小嶋佐知子他:スタッフの視野の広さと「超」高齢者:リハビリナース:2017年10巻2号:pp49-55

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