フィジカルアセスメントに強くなるために、まずは問診における7つの視点を確認しよう!
フィジカルアセスメント、といわれると聴診や視診などを思い浮かべる方が大半かと思います。
しかし実際にそちらの観察を行うまえに、まずは問診によって十分に情報を集める必要があります。
そこで今回は、フィジカルアセスメントに苦手意識を持つ方に、ぜひ押さえておきたい問診の進め方についてご紹介します。
目次
問診は、情報収集のほかに信頼関係を構築する役割もある
問診の役割は、患者さんからアセスメントに役立ちそうな情報を得る、ということだけではありません。
もう一つの大切な役割、それが信頼関係の構築です。
問診を行うということは、患者さんと会話をするということです。
よって、問診を通して患者さんと交流を持ち、必要な情報を収集するとともに患者さんから信頼を得られるようにふるまう必要があります。
信頼関係を構築するために知っておきたい、患者さんとコミュニケーションを取るうえでのポイントについては、こちらの記事(リハビリ拒否にはどう対応する?やる気を引き出すコミュニケーション対応ノウハウ3選)にて解説しておりますので、ご参照ください。
問診を行う際に押さえておきたい、7つの視点
フィジカルアセスメント前の問診を行う際、次々と聞きたいことがでてきてしまい、自分のなかでもまとまっていない状態で患者さんに質問してしまうこと、ありませんか?
問診をだらだらと続けることは、時間がかかるうえに患者さんにも負担をかけてしまいます。
そのため、問診を行う際には事前に要点を絞っておく必要があります。
そこで重要となるのが、以下に挙げる7つの視点です。
問診を行う際は、ぜひ7つの視点から質問ができているかを確認してみてください。
今回は7つの視点を明確にするための質問例として、「おなかが痛い」と訴えた患者さんに対しての質問項目をあげます。
発症状況 | 症状が起きたとき、どのような状況で起きたか 例:おなかの痛みは突然起きましたか?徐々に起きましたか? |
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部位・範囲 | 症状が起こっている場所や範囲はどこなのか 例:おなか全体の痛みですか?それとも、おなかの特定の部位が痛みますか? |
性質 | 症状の性質や状態はどのようなものなのか 例:おなかの痛みは鈍いですか?それとも激痛ですか? |
量・程度 | 症状の質や程度はどれくらいなのか 例:一番痛いのを10とすると、今のおなかの痛みはどれくらいですか? |
経過 | いつから症状が始まり、どのように変化したのか 例:腹痛はいつから始まり、痛みはどう変化していますか? |
影響する因子 | 症状の増悪や軽減に影響する要因はなにか 例:おなかの痛みは、食事や運動によって変化することはありますか? |
随伴症状 | 症状に伴って、ほかの症状は出現しているか 例:おなかの痛みと一緒に、別の症状はありますか? |
問診の際には2つの質問を使い分ける
看護師さんのなかには、患者さんとのコミュニケーションに苦手意識があり、問診の際にも自分の聞きたいことを聞けず、困ってしまう方がいらっしゃるかと思います。
そこで、問診の際にぜひ活用してほしいのが、開かれた質問と閉じられた質問です。
開かれた質問とは、たとえば「今日はどうかされたのですか?」「頭がどのように痛いのですか?」というように、患者さんが自分の言葉によって自由に回答できる質問内容にすることです。
一方、閉じられた質問とは、はい・いいえだけで簡単に回答できる質問のことをいいます。
開かれた質問のメリットとしては、自由に回答できるようにすることで「今日、こんなことがあったよ」というように、より細かく患者さんから情報を収集することができる、という点があげられます。
一方、デメリットとしては質問をしても「別に…」と短く返されてしまうことで、かえって収集したい情報を得るのに時間がかかってしまう、という点があげられます。
そんな開かれた質問に対し閉じられた質問では、看護師が知りたい、より具体的な項目の回答をすぐに得ることができる、というメリットがあります。
一方で、患者さん自身が自由に話せないために、痛みの経過や性質といった詳細な情報を得ることが難しくなる、というデメリットがあります。
このように、2つの質問にはそれぞれメリット・デメリットが存在しているため、看護師は得たい情報に応じて質問を使い分けることが大切です。
問診でより確かな信頼関係を構築するために、専門用語は極力使わない
フィジカルアセスメント前の問診は、看護師と患者さんとの間に信頼関係を構築できる絶好の機会の一つです。
そんな効果があるのなら、患者さんとより良い信頼関係が築ける問診にしたいもの。
そこで注意したいのが、「専門用語を極力使わないようにすること」です。
看護師として働いていると、日々使っている用語がつい患者さんとの会話にも入ってしまいがちです。
しかし、専門用語は患者さんにとって聞いたことがない言葉故に、その言葉に対して不安などの負の感情を抱きやすくなってしまいます。
筆者も以前患者さんの元へ行き、バイタルを測ろうとしたときにふと「それではバイタルを測りますね」と患者さんに声かけしてしまい、患者さんから「バイタルってなに?今からなにをするの?」と不信感を与えてしまったことがあります。
問診を行う際には専門用語を使わないように意識して、患者さんのわかる言葉で質問をすることが大切です。
フィジカルアセスメントに強くなるために、問診の技術を磨いて信頼関係を
患者さんから情報を収集しようと訪室しお話をうかがうなかで、徐々にただの雑談になってしまった、ということもあります。
しかし、病状などには関係のない雑談をしてくれるということは、それだけ患者さんが看護師に心を許し、信頼してくれているという証拠でもあります。
フィジカルアセスメントに強くなるためにも、まずはどんどん患者さんと会話をして、問診の技術を磨いてみてください。
看護師にとって、その会話の積み重ねは大きな成長へとつながる礎となってくれるでしょう。
参考:
長嶋緑他:リハビリ患者のフィジカルアセスメントと患者対応:リハビリナース:2015年8巻2号:pp07-58
熊谷たまき他:フィジカルアセスメントがわかる:メディックメディア社:東京:2015:pp6-13