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国内外で注目を集める子どもの不器用さ 発達性協調運動障害(DCD)の概要とリハビリ

幼稚園・学校で運動や工作がうまくできない子どもたちは、「不器用」と考えられてきました。
しかし、運動の不器用さを主体とする「発達性協調運動障害」という概念で論じられるようになってから、医療やリハビリの現場でも注目されています。
今回は、発達性協調運動障害の概要や症状、リハビリのあり方について解説していきます。

体の不器用さが主体の「発達性協調運動障害」が注目を集める

全身運動や手先の操作において不器用とみなされてきた子どもたちが、国内外で注目を集めています。
小児にかかわることがある医療従事者にとっては、知っておくべきトピックといえるでしょう。

●発達性協調運動障害とは?

全身運動や手先の操作においてぎこちなさのある子どもは、不器用としてみなされてきました。
ところが、不器用を障害の一つとして位置づけて「発達性協調運動障害」と呼ぶようになり、医師や作業療法士がアプローチを行っています。
英語ではDevelopmental Coordination Disorderといい、DCDと略記されます。
単独で診断名がつくケースもありますが、自閉症スペクトラム(ASD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)・学習障害(LD)などを併発する例が多いです。

●国内外で関心が高まる

発達性協調運動障害は国内外で関心を集めており、日本でも2016年に日本DCD研究会が開催され、その後は日本DCD学会として正式に発足する運びとなりました。
筆者も2016年に開催された第1回DCD研究会(愛知)に参加しましたが、医療・福祉・教育など多様な分野の方が集まっており、その関心の高さがうかがえました。
世界的にも発達性協調運動障害の子どもを対象とした研究報告が相次いで発表されており、小児・発達障害領域ではトピックの一つとなっています。

発達性協調運動障害の子どもにみられる症状〜粗大運動と微細運動から〜

発達性協調運動障害の子どもでは、全身を使った粗大運動と、手先を使った微細運動の両方に困難感が生じます。
粗大運動では、次のような運動が苦手と感じる子どもが多いです。

  • ●なわとびを跳べない
  • ●自転車に乗れない
  • ●ボールをキャッチできない
  • ●ジャンプのときに足がばらばらになる
  • ●スキップができない

上記のように、手足を協調的に動かす場合をはじめとして、視覚的なターゲットやリズムなどに協調して体を動かすときにうまく遂行できないケースが多いです。
学齢期に体育や図工、音楽などの授業でつまずきが認められ、顕在化する例も少なくありません。
乳幼児期の運動発達は個人差も大きいですが、この段階からハイハイなどの運動の獲得に遅れが生じていると考える立場もあります。
また、手先を使った微細運動では、次のような困難さを抱えることがあります。

  • ●リコーダーや鍵盤ハーモニカを吹けない
  • ●コンパス・定規・消しゴム・はさみの操作が苦手
  • ●ノートのマス目に文字をかけない
  • ●筆圧のコントロールが難しい
  • ●エプロンや靴のひもを結べない
  • ●服のボタンをとめることができない
  • ●箸の操作がうまくできない

このように、「不器用」によって生活や学習に影響が及ぶ場面も多いのです。
体育・図工・音楽などの教科学習が苦手な子どもを「ただの不器用」として軽視してしまうと、子どもの自尊心の低下といった二次障害を引き起こす恐れがあるため留意すべきです。
不器用によるニーズを抱えた子どもには、幼児期など早期からできるトレーニングを行っていくことが望ましいでしょう。

リハビリ場面における協調運動の評価は多角的に

リハビリ場面で子どもの状態を評価するときは、運動機能だけに着目するのではなく、多角的に分析していくことがポイントになります。

●子どもと親御さんからニーズを聴取

発達障害領域のリハビリ場面では、親御さんからの聞きとりが非常に重要となります。
生活上のニーズや達成したい目標などを丁寧に聴取しておきましょう。
リハビリ場面だけではすべての課題がみえてこないため、聞きとりによる評価は欠かせません。
ニーズを理解し、目標の合意形成を図ることで、信頼関係を構築することもできるでしょう。

●協調運動の評価は観察とスケールで

スタッフの指示が理解できる子どもでは、臨床観察やM-ABC(Movement Assessment Battery for Children)といった評価スケールを使って運動機能を分析していきます。
観察評価から得られる手がかりも多いですが、こうした記録を残しておくと、あとで比較する際にも役立ちます。

●運動・認知・行動を多角的に評価する

運動だけでなく、認知面・行動面を併せて評価することが大切です。
運動の不器用だと思っていても、マス目や図形などの視覚情報をうまく処理できず、書字や描画でつまずいている可能性もあります。
また、注意集中に課題があるために、手先を使った活動が大ざっぱになっているという場合もあります。
特に子どもの領域においてはさまざまな要因が影響するため、多角的に状態を分析していくことが重要になるでしょう。

基本は遊びを介してアプローチ!幼稚園や学校における課題もフォロー

運動が不器用であっても、繰り返しさまざまなトレーニングを行っていくと、運動学習が進んでいきます。
これは筆者の経験則になりますが、作業療法などでトレーニングを長く行ってきた子どもと、なにもしてこなかった子どもでは、非常に大きな開きがあると感じます。
運動のスキルは経験的な要素の影響も受けるため、ぜひ次のようなトレーニングを提供してみてください。

●まずは運動学習しやすい状態をつくる

発達性協調運動障害の子どもでは、筋肉の緊張が低いために体をうまく操作できない、運動経験が乏しいためにパフォーマンスが低いなど、さまざまな背景要因があります。
筋肉が柔らかく、体がくたっとしている子どもでは、まず筋緊張を高めるためのウォーミングアップを実施してみることがおすすめです。
たとえば、丸太型のブランコにしがみついて、全身を収縮させる運動などを準備として行っておくと、そのあとに行う運動学習の一助になるでしょう。

●遊びを通して、協調運動のトレーニングをする

協調運動と一言でいっても、そのバリエーションはさまざまです。
粗大運動であれば、マス目に合わせてジャンプする運動をしたり、ブランコに乗りながら輪投げをする活動をしたり、さまざまなトレーニングをすることができます。
リズムに協調した運動が苦手であれば、手拍子に合わせて運動するような練習も効果的です。
微細運動の場合は、机上で線引き課題を行ったり、ジェンガなどで力加減のコントロールを行ったりといった活動をしてみると良いでしょう。
トレーニングのレベルや内容は子どもによって変える必要があるので、スタッフは自分のなかで引き出しを増やしておくことをおすすめします。
不器用な子どもは運動をすることに自信がないケースもあるため、段階づけをしながら、達成感を味わえるような関わりを心がけてください

●幼稚園や学校で抱えている具体的な課題・ニーズにも介入

子どもや親御さんから、「体育でなわとびができなくて困っている」「中学校で上靴が指定されるので、靴ひもを結べるようになりたい」など、具体的なニーズがあがってくることも多いです。
なわとびの場合は、まずフラフープを回しながら輪の中をくぐる練習から始めたり、タオルを両手に持って縄を回す運動だけやってみるなど、工程を細分化していきましょう。
靴ひもの場合は、色の違う2本のひもを使って手順を学習していくなど、その子どもが理解しやすい手がかりを見つけて練習していきます。
リハビリの時間は限られているため、親御さんにもやり方を共有し、ホームプログラムとして実践していただくと効果的です。

まとめ

発達性協調運動障害の子どもは、単に不器用であるだけでなく、幼稚園や学校の活動で困っていることがある例が大半です。
もちろん運動ができれば良いというわけではありませんが、子どもたちが自信を持って活動や学習に取り組めるよう、リハビリでフォローしていくことはとても大切です。
こうした子どもたちを支援することも、医療機関の役割といえるでしょう。

参考:日本DCD学会 学会について(2018年2月17日引用)
関連記事:発達障害の療育では早期介入が肝心!家族の理解を促すために医療者ができること

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