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医療従事者なら知っておくべき!標準予防策(standard precaution)で感染リスクを減少させるための知識

standard precaution(スタンダードプリコーション)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
患者さんの血液や体液など感染の可能性があるものの対応を標準化し、患者さんや医療従事者双方の感染の危険性を減らすことを目的とした予防策のことです。
今回は、このスタンダードプリコーションに焦点をあて、見落としがちな感染経路や有効な予防策についてお伝えしていきます。

スタンダードプリコーションは、院内感染対策に最も重要!

スタンダードプリコーションで最も大切なのは、患者さんと接触する両手の衛生状態を保つことにあります。
コミュニケーションをとるための会話もまた、患者さんと接触することになるので、マスクの使い方なども重要になってきます。

1)手の衛生管理は手洗いが最も重要なポイント!その方法は?

手の衛生状態を保つうえで最も重要なのが手洗いですが、ほかにもサニタイザー(消毒液)の使い方や手袋の着脱、手のケアなどさまざまなチェックポイントがあります。

手洗い ●石けんを使用
●体液などに接触した場合・手袋を外したあと・患者さんに触れたあとに行う
サニタイザー ●明らかな体液などの汚染がある場合には使用しない
手袋 ●体液・粘膜・傷口・体に触れる際に使用
●手袋を脱いだあと、非感染物に触れるまえには必ず手を洗う
手のケア ●手荒れにより医療者が感染を起こさないように保湿などを行う
●手荒れなどがあれば、手袋を使用

2)口周囲の衛生にはマスクのフィッティングがポイントになります。

体液(唾液や鼻水など)が、医療者の顔に飛散する可能性がありそうな場合には、マスク(ゴーグルなども)を使用しますが、これらのフィッティング、着脱のタイミングなどが重要になってきます。

●マスクのつけ方

マスクから息が漏れやすいのは鼻、頬です。
息苦しさを感じますが、隙間がないかしっかりとチェックし、患者さんに会うまえにマスクを装着しましょう。

●マスクの外し方

マスクを外す(交換する)タイミングは感染エリアから1m以上離れた場所で、手袋をしている場合は手袋を外したあとに行います。
マスク前面は汚染しているため、耳にかけたひもだけを持つようにして外し、手洗いを必ず行いましょう。

処置の最中についつい息苦しくてずらしてしまったり、汚染部位であるマスク表面を触ってしまったりしていませんか?
マスクを一時的に外す場合でも、表面を触ったり腕などにつけておくのも感染予防の観点からはNGです。
また、エチケットとして咳やくしゃみの際には手を覆い、その後しっかりと手を洗いましょう。

コストがかかっても価値がある!病院ではハード面の改革が必要なことも

標準予防策において、施設面(ハード面)での改善が必要になることもあります。
患者さんに触れる手の衛生保持には欠かせない手洗いですが、水周りには菌も繁殖しがちです。

1)手洗いは乾燥している固形石けんかディスポタイプのもの

菌が付着した石けんで手を洗うことは、当然衛生的とはいえません。
またポンプ式の石けんも注ぎ足しをすると、その際に雑菌が混入したりして不衛生になるため、ディスポタイプの液体または泡状の石けんがいいでしょう
ただしディスポタイプのものは、なくなったら注ぎ足さずに新しいものに入れ替える必要があり、コストもかかります。

2)手洗い後はタオルではなく、ペーパータオルでふき取り!

タオルは、たとえ自分専用のものであっても、何度も使ううちにぬれて雑菌が繁殖するため適していません。
ロール式のふき取りタオルも、先に手洗いをした方の分が残っていたり、引き出す際に汚染されてしまう可能性があります。
衛生的なのはペーパータオルといえますが、設置には費用がかかります。
こうしたコストがかかるため、スタンダードプリコーションを忠実に実施するには、個人個人の意識だけでなく、病院側(ハード面)の努力も必要になってくるのです。

医療従事者なら知っておきたい!ソフト面で重要なことは?

スタンダードプリコーションは、患者さんに関わるすべての医療従事者が知識を持ち、行っていく必要があります。
すなわちスタンダードプリコーションの定義である、
「すべての人の体液や体物質などに感染性があるという意識をもって取り扱うこと」
を実行することで、院内での感染を防ぐことができるのです。
ここでは、医療従事者が知っておくべき注意点について、詳しく解説します。

1)手洗いの基本とは?菌が残りやすいのは手のどのあたり?

手洗いを行う際は、洗い残しのないようにしっかりと洗いましょう。
洗い残しが多い場所は「親指」「親指と人差し指の間」「手首」などです。
手洗いの注意点は以下です。

  • ●手袋を装着している場合は、汚染した側が内側になるように脱ぎ、廃棄する
  • ●時計をつけている場合は外す
  • ●先に手をぬらす
  • ●石けんを手に取りあわ立てる
  • ●手のひらと手の甲をこすり合わせるように洗う
  • ●指を組み合わせて指の股を洗い、指先と爪も忘れずに洗う
  • ●親指と手首は反対の手でつかんでねじるようにして洗う
  • ●すみずみまで洗い流したら、ペーパーや清潔なタオルでしっかりとふき取る
  • ●手荒れ防止のためにハンドクリームで保湿を行う

手洗いは、乾いた状態で石けんをつけるのではなく、ぬらしてから石けんをつけるのがポイントです。
また、手荒れによって感染経路をつくってしまう恐れがあるため、手荒れ防止の保湿クリームも忘れずに塗布しておきましょう。

2)ガウンの着方も知っておこう!

医療者は、MRSAなどの耐性菌を持った方にケアやリハビリテーションを提供する場面もあります。
その場合はマスクや手袋だけではなく、ガウンやゴーグルなども使用する必要があります。
特にリハビリ職にはあまりなじみがないガウンですが、いざというときのためにこれらの着脱の順番も覚えておきましょう。

着るとき:ガウン(折りたたまれた内側(清潔な面)が表側になるように着用)
    →マスク(鼻・顎がしっかりフィットしているか確認)
    →ゴーグルまたはフェイスシールド(必要時)
    →手袋(マスク着用時に顔面に触れてしまうため、一番最後に着用する)
脱ぐとき:手袋(最も感染物質の暴露を受け、汚染されているため)
    →ゴーグル・フェイスシールド(外すときは耳の横のツルの部分を保持)
    →ガウン(汚れていると考えられる袖やガウン前面を内側に巻き込み廃棄する)
    →マスク(マスクのひもだけを持って外し廃棄する)

手袋着脱の前と後には必ず手洗いを行い、患者さんが変わるごとに手袋を変えましょう

まとめ

スタンダードプリコーションは患者さんだけではなく、医療従事者への感染を予防するためにも重要な対策です。
これを実施していくためには、さまざまな備品や設備といった病院側の努力も必要になってきますが、院内感染は病院そのものの信頼を失墜させることにもつながり、絶対に避けなくてはならないことの一つといえるでしょう。
病院側と医療者個人が危機感をもって業務にあたることが大切です。
まずは正しい手洗いとマスクの装着から、感染予防を心がけていきましょう。

参考:
北大病院感染対策マニュアル 標準予防策(スタンダードプリコーション)(2018年3月8日引用)
日本感染症学会 Q58 標準予防策(2018年3月8日引用)
大阪医科大学保健管理室 スタンダードプリコーション(2018年3月8日引用)

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