スポーツ少年に起こるオスグッド病!患者さんに教えたいセルフチェックとストレッチを解説
オスグッド病(オスグッド)は成長期のスポーツ障害で非常に多い疾患の1つで、脛骨粗面(けいこつそめん)に痛みが生じ局所の腫脹を伴います。
放っておくと痛みは重症化し、運動の制限やスポーツ活動の休止につながります。
子どもたちが痛みなくスポーツに復帰できるように、普段から使える「教えておきたい予防法」について解説していきます。
オスグッドになる原因は大腿四頭筋の柔軟性の低下だけ?
オスグッドは、10~14歳頃のスポーツ活動をしている子に多いです。
一般的には手術を行わない保存療法で対応していくことになり、運動量の調整や大腿四頭筋の柔軟性の改善が中心になってきます。
しかし一度は改善されても再発することが多いため、ほかの問題点を見つけることが重要になります。
●成長期の少年は要注意!なぜ成長期に障害が増えるのか?
この時期の少年は成長期にあたり、身長も目まぐるしいスピードで伸びていきます。
骨の発育スピードに筋の発育スピードがついてこれず、筋肉は伸張されて抵抗が増加し、筋緊張も高まってしまいます。
この状態で激しい運動を繰り返すと、筋の付着部に繰り返しストレスがかかり発症してしまうのです。
この時期に大きく成長している子どもほど、オスグッドを発症するリスクが高いと考えられます。
●原因は大腿四頭筋の柔軟性低下!しかし急性期では思ったよりも硬くない?
オスグッドの原因といわれているのが大腿四頭筋の柔軟性の低下です。
確かにオスグッドで受診された方で、大腿四頭筋の柔軟性が低下している割合は非常に高いです。
しかし、たまにオスグッドで来院された方のなかに大腿四頭筋の柔軟性が維持されている方もいます。
つまり、大腿四頭筋の柔軟性が低下しているからオスグッドになるだけではなく、ほかの原因で大腿四頭筋に負担がかかり、疼痛を引き起こしたと考えられるのです。
また福原ら(2009)によると、大腿四頭筋の柔軟性は急性期よりも慢性期の方が低下していたとの報告があり、オスグッドによる痛みによって大腿四頭筋の緊張が高まって徐々に柔軟性が低下していくということが推測できます。
●大腿四頭筋の負担の原因はなに?足関節の硬さや後方重心の影響が
臨床上、オスグッドの患者さんでよく見かける姿勢が、骨盤が後傾してしまっている状態です。
骨盤が後傾していると後方重心になってしまい、そのぶん大腿四頭筋への負担が大きくなってしまいます。
また足関節の動きが硬い方も多く、足関節の背屈制限があると前方への重心移動が行いにくく後方重心での動作になってしまいます。
後方重心も大腿四頭筋への負荷が大きくなる要因の一つです。
オスグッドは本人、家族、指導者への教育が大切!
オスグッドは世間でも周知されている疾患です。
しかし、「成長痛」という言葉で片付けられ、治療せずに放置されることが多々あります。
治療の基本は早期発見、早期に安静、保存療法になるのですが、オスグッドの原因であるオーバーユース(酷使)が見逃されることも多く、病院を受診する頃には進行した状態になっていることも少なくありません。
●理由は後回し!まずは本人がセルフケアを行う習慣作りを!
本人に一番意識してもらわなければならないことはセルフケアです!
筆者は一時期、中学生の野球チームの活動に携わっていましたが、この時期の子どもたちはストレッチなどの「体のケア」にあまり関心がありません。
なぜストレッチが必要なのか説明しても、その重要性を理解してもらうのは容易なことではありません。
そこで必要だと思ったのは、まずはストレッチをすることは当たり前と思わせるようにしていくことです!
●リハビリは保護者の方も同伴で!リハビリをする理由を理解してもらおう!
子どもたちが関心を持てない部分は、保護者の方を介して理解してもらいましょう。
直接子どもに説明するよりは理解が得られやすいです。
また、保護者の監視があれば自宅に帰ってからでも子どもたちにセルフケアを促してもらうことができます。
●保護者から指導者へ!オーバーユースの防止が必須
上述したように、オスグッドになる要因にはオーバーユースとケア不足が挙げられます。
練習量などはなかなか変更できませんが、日頃の練習前後のケア次第で予防ができることを、指導者にも理解してもらうことが大切です。
これだけは伝えたい!セルフチェックのポイントとストレッチの方法
オスグッドは、発症リスクの高い時期がわかる可能性があるため、セルフチェックを教えることで早期発見につながり、それは同時に障害予防や再発防止に必要なアプローチにもなります。
●セルフチェックのポイント
まずは自宅でもできるセルフチェックのポイントを説明していきます。
1)こまめに身長測定をして危険な時期を知ってもらう!
子どもたちの身長は15歳までは増加傾向にあります。
なかでも11~12歳は身長が急激に伸びる時期です。
身長が伸び始める時期は子どもによって違いますが、この年齢に近い子どもたちは定期的に身長測定を行うことで「危険な時期」を推測することができます。
2)脛骨粗面(けいこつそめん)を自分で押さえて痛みを確認!
オスグッドの特徴的な所見は「脛骨粗面の圧痛」です。
11~12歳ごろの子どもには定期的に脛骨粗面を押さえて痛みがないか確認させるようにしましょう。
もし痛みがあるようなら運動量を制限してオーバーワークにならないように注意が必要です。
●必ず押さえてもうらうべきセルフケア!
オスグッドになっていても、適切なケアを行えば痛みをコントロールできます。
「せめてこれだけは自宅で行ってほしいセルフケア」を説明していきます。
1)入浴して筋肉の柔軟性を高める!
筋肉の柔軟性を高めるには温熱療法が効果的です。
一番簡単な方法は入浴です。
入浴するときは浴槽につかって血行を良くし、硬くなっている筋肉の柔軟性を高めましょう。
2)大腿四頭筋のストレッチは最重要!ほかにもストレッチしておきたい場所が!
大腿四頭筋の柔軟性は、低下もしくはこれから低下してくる可能性が高いため、必ずストレッチを行うように説明しましょう。
しかし大腿四頭筋のストレッチだけでは痛みは軽減しません。
オスグッドの子どもたちは、後方重心になっていたり足関節が硬くなっている場合が多く、その要因にもアプローチしていかなければ再発を繰り返してしまいます。
以下の筋肉は、筆者がオスグッドの子どもを担当したときに、大腿四頭筋以外でよくストレッチを指導する部位です。
- 〇ハムストリングス
- 〇下腿三頭筋
- 〇大殿筋
ハムストリングスや大殿筋の柔軟性の低下は骨盤の後傾を、下腿三頭筋は足首の柔軟性の低下を引き起こし、後方重心になりやすくなってしまいます。
3)骨盤を前傾させる練習を!
骨盤が後傾したままで日常生活を過ごしていると、なかなか前傾位に動かせなくなる場合もあります。
四つばいで背骨を丸めたり反らしたりすることで、骨盤を前後に動かし前傾位を保てるようにしていきます。
まとめ
今回は患者さんに伝えたいこととして、セルフチェックやストレッチのポイントを解説していきましたが、オスグッドなどの「成長期のスポーツ障害」は本人の努力や意識だけで予防できるものではないといえます。
保護者やコーチ、指導者などスポーツに携わっている方がみな同じ方向を見て実行していくことで、成長期の子どもたちの苦痛を少しでも回避することができるのではないでしょうか。
理学療法士として、こうした予防法を子どもたちだけでなく保護者や指導者の方にも伝えていきたいものです。
参考:
平野篤:オスグッド病 発症メカニズムとその予防・再発予防.臨床スポーツ医学 vol.25,臨時増刊号:252-255,2008
福原隆志他:オスグッド・シュラッター病発症からの期間と大腿四頭筋の柔軟性についての一考察,日本理学療法学術大会2009(0),C3O1117-C3O1117,2010