整形外科・リハビリ病院が抱える課題(ヒト・モノ・カネ)をサポート

  • Facebook

クリニック・治療院 OGメディック

この記事に関するタグ

病院から地域へ。シームレスな継続看護のために看看連携を強化しよう!

地域包括ケアシステムの推進により、医療は「病院完結型」から「地域完結型」に変化しつつあります。
病院から地域へのスムーズな移行には看護師同士の連携は欠かせません。
看看連携を強化するためには、いったい何が必要なのでしょうか。
訪問看護師である筆者の視点から、考えます。

温度差を埋めるのは地域看護師からのアプローチ

厚生労働省が行った看護師の就業場所の調査を見てみると、20代では90%以上が病院に勤務しており、地域で働く看護師はごくわずかです。
筆者が勤務する訪問看護ステーションでも、新卒看護師を積極的に採用したいという考えからさまざまな取り組みをしていますが、新卒者の応募は少ないのが現状です。

●病院看護師→地域看護師は多いが、その逆は少ない

筆者自身、新卒から30代後半まで病院勤務をしていました。
訪問看護に興味を持ったのは、末期の患者さんが自宅で死にたいと言って退院されたときです。
当時は退院調整会議などはなく、看護師同士の連携も積極的に行われてはいませんでした。
それまでは、患者さんが治療を終えて退院することに喜びを感じていましたが、このとき初めて疑問に思ったのです。
麻痺が残ったまま退院する方、継続的な治療が必要な方、高齢者の二人暮らし。
病院での治療は終わっても、自宅で今までどおりに過ごせない方はどうしているんだろう?
その後もしばらくは病院で働きましたが、訪問看護をしたい気持ちが消えませんでした。地域で働く看護師は、筆者と同様に病院勤務経験後の人が圧倒的に多いです。
反対に地域で働く看護師が病院勤務へ戻る例は、筆者が知る限りほとんどありません。
こういった事情が、病院看護師と地域看護師の間に温度差の生まれる要因ではないでしょうか。

●イメージできる側から働きかけよう

病院看護師は退院後の生活をイメージしにくいと言われますが、筆者も訪問看護師になった当初はカルチャーショックの連続でした。
始めはなにもかも病院とくらべて気になりましたが、先輩訪問看護師から「ここは病院じゃないのよ」と言われ、はっとしました。
病気を持っていてもあくまで地域で「生活する人」であり、「患者さん」ではないのです。
このことに気付いてから、病院との違いが気にならなくなりました。
在宅で起こるさまざまなことは、病院に勤務していた頃は知らなかったことです。
病院看護師が退院後の生活をイメージできないのは、当たり前です。
だからこそ、イメージできる側(地域看護師)から働きかけることが重要だと考えます。

情報共有だけで満足していませんか?継続看護の目的は看護の質を低下させないこと

継続看護は、1969年、ICN(国際看護師協会)において、「継続ケアは、その人にとって最も適切なときに、最も適切なところで、最も適切な人によってケアをされるシステムである」と定義されました。
治療が必要な入院中は病院の看護師が、退院後は地域の看護師が、それぞれ適切なケアを提供する義務があります。
このとき、病院では手厚い看護が受けられたのに、退院したら納得がいく看護を受けられないと言われては困ります。
退院調整会議や、場合によっては事前訪問などが積極的に行われるようになり、地域の看護師も病院へ伺う機会が増えました。
退院調整看護師や地域連携室のスタッフと顔見知りになり、情報交換もしやすくなっています。
でも、会議に出席して、患者さんの情報を共有し、コミュニケーションが取れていれば、連携が取れているといえるのでしょうか。
確かに情報共有は看看連携の重要な要素ですが、継続看護の面から見ると不十分です。
継続看護の目的を考えれば「患者さん」から「地域で生活する人」になっても、質の高い看護が提供されなければなりません。
そのため、「入院中の看護の共有」をし「退院後の生活の課題」が明確でなければ、継続看護につなげることはできないのです。
よって退院調整会議の際は、情報を提供する側も受ける側も、単なる経過報告ではなく、継続看護を意識したやりとりを心掛けるべきだと考えます。

退院支援と退院調整

退院支援とは、患者さんとご家族が今の状態をどう受け止めているか、退院後の生活をどう過ごしたいかを入院早期から確認、支援していくプロセスです。
退院後の生活のためには、退院支援から地域の看護師も参加することが望ましいのですが、お互いの都合もあり難しいのが現状です。
そのため地域の看護師は、ご自宅へ帰ることが決定し、退院調整をする段階から関わることが多くなります。
このとき、退院支援のプロセスは病院から情報を得ることになります。
前項でも述べましたが、退院支援を含む入院中の看護がどのように行われたのかを共有し、看護を受ける場が在宅に変わっても入院中の看護の質を保つこと。
そして、退院後の医療上・介護上の問題を明確にしてどのような支援が必要になるかを、関わる多職種全員で考えることが大切です。
また退院支援には、退院後の状況のモニタリングと評価が含まれています。
退院したら終わりではなく、退院後も引き続き連携していくことが求められます。

●退院調整会議が実施されない患者さんをどうするか

退院調整会議が実施されない患者さんの情報は、看護サマリーに頼らざるを得ません。
しかし、看護サマリーの内容と、地域の看護師がほしい情報は必ずしも一致していません。看護サマリーで提供してほしい情報とその理由を、地域の看護師から病院看護師に伝えていくことも必要でしょう。

まとめ

本記事では1入院1退院の看看連携、継続看護についてお話しました。
実際には、人は健康状態によって病院と地域を行き来するものですから、患者(利用者)さんを中心においた継続看護には、1回の入退院に関するアセスメントだけでは足りません。
過去のエピソードや将来どうしたいか、家族の状況や思いを総合的にアセスメントし、連続して支援していくことが大切ではないでしょうか。

参考:
看護師の年齢階級別就業場所の割合 厚生労働省 2012年(2018年3月11日引用)
櫻井尚子,渡部月子(編)他:ナーシング・グラフィカ在宅看護論 地域療養を支えるケア.
メディカ出版,大阪,2006,pp.49‐53.

コメントをどうぞ

ご入力いただいた名前・コメント内容は弊社がコメント返信する際に公開されます。
ご了承ください。
メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)