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医療分野におけるAI活用の法整備はここまで進んでいる

医療分野におけるAIの活用は恩恵をもたらす一方で、さまざまな課題もあります。
これらの課題に対応するため、厚労省などは必要な法令の整備を進めています。
ここではAIを活用する上での課題と、法令の整備予定について解説します。

AIを活用する上での課題

医療分野でAIを活用する際にはいくつかの課題がありますから、その内容について解説します。

●医療におけるAIの取扱い

AIは過去の知見からは妥当な推論を出せる場合が多いものの、未知の状況に対しては正しい判断が行いにくい傾向があります。
従って将来も、治療方針の最終決定は医師自らが下すことに変わりありません。
事実、厚労省は2017年6月27日に公表した「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会報告書」において、「診断確定や治療方針の最終的な意思決定は医師が行う」と明記しています。
その一方でAIを医療現場で用いる際の基準がないことから、AIの判断をどこまで重視すべきか迷う場合もあると考えられます。

●医療機器の定義

AIを利用した機器には、それが医療機器なのか否かを決める明確な基準が決まっていません。
たとえば、患者情報を表示する機器は医療機器なのかという問題は、その1つです。
もし高度管理医療機器や特定保守管理医療機器と認定されれば、あらかじめ許可を受けた業者でないと製造や販売ができません。

●医療機器の安全性

AIを活用した医療機器の開発においては、安全性の指針づくりも必要です。
AIを用いた医療機器の安全性の基準がないと、メーカーは過剰な安全性チェックを行わなければならず、結果として機器開発を委縮させることにつながります。

●プライバシーの保護

医療にAIを活用するためには、外部の事業者も日々の診療により蓄積される「保健医療データ」を利用することが求められます。
一方で保健医療データが外部の事業者にわたることにより、自院の関係者以外が患者のデータを閲覧できることにもなります。
このため患者のプライバシーを尊重しながら、保健医療データの活用を行うことが必要です。

●倫理・法・社会的課題

AIは多くのメリットがありますが、一方で社会に影響を与えるものですから、予期せぬ悪影響を及ぼす可能性は否定できません。
また、AIの悪用も防ぐ必要があります。

これらは倫理的・法的・社会的な課題であり、AIを医療で活用する上ではこれらの課題もクリアする必要があります。

法令の整備が進行中

AIを使った医療においては、さまざまな形で法令の整備が進行しています。

●医師法における取扱いの明確化

AIは医師の代わりとならないまでも、診断や治療の支援には有効です。
一方で安全性を確保する上でも、法令での定義が必要となります。
厚労省は医師法においても、診断や治療支援を行うAIの取扱いを明確化する方針です。

●薬機法における定義の明確化

AIと医療機器との関連付けは、法令で明確な定義がされていませんでした。
厚労省は2017年度以降、医療機器に該当するAIはどのようなものか、明確な基準を定める方針です。

●安全性や有効性を評価する取り組み

医療機器に該当するとされたAIは、その判断が患者の治療結果に影響を与えます。
このため国民が安全・安心して医療を受けるためには、AIにも有効性や安全性をチェックする指標を設けることが必要です。

厚労省では「AI活用推進懇談会報告書」において、以下の取り組みが必要と明記しています。

  • ○AI技術を用いた画像診断機器における、評価指標などの策定
  • ○製品開発の進展に応じた、医療機器に対する評価についての体制整備

●「次世代医療基盤法」による、プライバシーへの配慮

患者のプライバシーに配慮しつつ医療データをAIなどに活用するため、2018年5月11日に「次世代医療基盤法」が施行されました。
この法律により、医療データをどの患者のものかわからないように加工する「認定匿名加工医療情報作成事業者」が定義され、国によって認定されます。
医療データは、認定を受けた事業者だけが匿名化の加工を行えます。
また匿名加工方法は、法令で定められた基準を満たす方法で実施することが必要です。

医療機関はあらかじめ患者に書面で通知する必要がありますが、患者から拒否の意思表示がない限り、医療データを認定匿名加工医療情報作成事業者へ提供できます。

●倫理的・法的・社会的課題の解決

厚労省はAIの悪用や社会への悪影響を防ぐ取組みについて、倫理的・法的・社会的課題と位置付けています。
これらの課題を解決する取り組みについて、2018年度以降に検討が行われます。

法令の整備により期待される効果

AIに関わる法令の整備により、さまざまな効果が期待できます。

●医療現場でAIの利用を促進

厚労省により「診断や治療方針の意思決定は医師が行う」と規定されたことで、AIは診断を支援する機器と位置付けられたことになります。
これにより医師の仕事を守りつつ、AIの利用を促進することが可能です。

●機器の調達価格の低下

AIを使った医療機器の定義が明確化されることは、今まで医療機器として扱われたものが、医療機器でないとされるケースが出ることにつながります。
医療機器でないと定義されたAI機器は、医療機器製造や販売の許可を取っていないメーカーや販売店でも扱えます。
このため競争などにより、調達価格の低下が期待できます。

●医療機器の開発促進

AIを使った医療機器の安全性や有効性を評価する指標が定められることで、医療機器の承認審査基準も明確化されます。
これらは開発費などの適正化や、AIを使った医療機器を開発しやすくすることにつながります。

●医療の質が向上

次世代医療基盤法の施行により、医療データの活用がしやすくなります。
このため、AIによる医療の質の向上が期待できます。

法令を所管する内閣府では「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律について」資料で、以下の通り期待できる効果を挙げています。

  • ○大量の実診療データを解析することで、患者に最適な医療が提供できる
  • ○糖尿病と歯周病など、別々の医療機関で診療を受けていた疾患の連携が行え、治療成績の向上につながる
  • ○医師の診断から治療までを包括的に支援する、診療支援ソフトの開発
  • ○副作用の把握がより確実となり、医薬品の安全性向上に寄与

●AIを活用した医療が社会に受け入れられる

法整備のメリットとしては、AIを活用した医療が社会に受け入れられるという面も見逃せません。
患者のプライバシー確保や倫理的・法的・社会的課題を解決することで、AIを活用した医療を安心して受けられるというメリットがあります。

AIを医療で活用するため、法令の整備も進む

AIの活用についてはさまざまな課題がありますが、法令が整備されることでさまざまな安心を得られます。
医師は安心してAIを用いた医療機器を診断に用いることができ、メーカーは医療機器の開発を安心して進められます。
また患者のプライバシーを守ることと、診療データを医学の進歩に役立てることの両立も可能となります。

法令の整備は進行中ですので、今後はAIを安心して活用する環境が整うことになります。

参考:
厚生労働省 保健医療分野におけるAI活用推進懇談会.(2018年10月21日引用)
厚生労働省 保健医療分野におけるAI活用推進懇談会報告書.pp.23-35(2018年10月21日引用)
日本医師会 第Ⅸ次学術推進会議報告書「人工知能(AI)と医療」.pp.27-33,41-42(2018年10月30日引用)
首相官邸 次世代医療基盤法の施行について. (2018年10月23日引用)
内閣府 医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律について.(2018年10月23日引用)
エムスリー 5月からいよいよ施行、「次世代医療基盤法」って何?.(2018年10月23日引用)
東京都福祉保健局 医療機器販売業、貸与業について.(2018年10月30日引用)
公益財団法人 医療機器センター 医薬品医療機器等法における医療機器プログラムの取り扱い.(2018年10月30日引用)
フィスコ 【日経新聞1面】AI医療の包括ルールを定めることでAI活用の医療機器の開発が進むことに【本日の材料と銘柄】.
(2018年10月23日引用)

  • 執筆者

    稗田 恵一

  • 千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
    現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
    保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ

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