介護業界専門のITサービスを活用するメリットと、サービスの事例を紹介
介護業界の拡大とともに、専門のITサービスを提供する企業が増えています。
このような企業に依頼すると、費用対効果の高い業務改善が図れます。
本記事では介護業界専門のIT企業に依頼するメリットを解説し、実用化されているサービスを紹介します。
介護業界がIT化を行う際の課題
IT化には業界ごとの課題があります。介護業界も例外ではありません。
とりわけ介護業界のIT化にあたっては、認識しておくべき重要な課題があります。
ここでは主な課題を2点取り上げ、解説していきます。
●IT化により効率化が可能な一方、パソコンが最適とは限らない
介護の業務において記録が必要な書類は多岐にわたり、また記録すべき時間が決まっているものも少なくありません。
そのためITを活用して記録を効率化できれば日々の業務が楽になり、また利用者と接する時間も増えます。
一方で介護における業務効率化は、パソコンが必須、または最適な手段とは限りません。
以下のようにさまざまな方法でITを活用し、業務の効率化を行うことが可能です。
- ○タブレット端末などで入力した手書きの情報も、自動でコンピュータに記録できる
- ○自分が記録した情報は、部署の全員で共有できる
- ○入力した情報は自動でグラフ化でき、日々の変化が簡単にわかる
一方でITによる業務効率化を行わない場合は、「面倒だけど、仕方がない」と思いながら日々の業務を進めることになるかもしれません。
●IT企業のなかには、介護業界を専門としていない企業もある
IT企業にはそれぞれ得意・不得意の分野がありますから、どのIT企業も介護業界を専門としているとは限りません。
したがって介護に関する業務知識が十分でないIT企業にシステム化を依頼すると、以下のような事態になる可能性があります。
- ○見積額が想定以上に高額となり、システム化を進められない
- ○介護の現場で使いにくいシステムができてしまう
このため「介護業界に精通したIT技術者」の育成と、介護業界を専門とするIT企業が求められています。
介護に詳しいIT企業に依頼するメリット
2019年の時点では、介護業界の知識を持つIT企業がいくつか現れています。
ここでは介護に詳しいIT企業に依頼するメリットを3つ取り上げ、解説していきます。
●業務に関する要望を、ITエンジニアに正しく理解してもらえる
業務システムの開発においては、業務に詳しいITエンジニアが必要です。
これは、介護業界も例外ではありません。
そのためシステムに求める要件などを打ち合わせする際には、介護業務に精通したITエンジニアと会話すると、認識の差異が少なくなります。
これによりシステムの完成間近になってから「こんなはずではなかった」という事態を減らせ、手戻りの少ないシステム開発が可能です。
●法令改正への適切な対応が可能
介護は、法令で定められた内容が多い仕事です。
従って介護の業務システムは、法令改正への迅速かつ正確な対応が欠かせません。
一方で介護の現場は多忙なため、法令改正の情報を見落とす可能性もあります。
介護に詳しいIT企業は、業界に詳しいことが強みです。
このため法令改正の情報も迅速に把握し、適切な対応が行われます。
また介護事業者から要望を出さなくても、自動的に法令改正に対する情報提供が行われますから、安心して任せられることもメリットです。
●適正な価格での発注が可能
業務に詳しいIT企業に依頼するメリットには、適正な価格で発注できる点もあげられます。
もし依頼先のIT企業が介護に精通していない場合は、介護事業者から求められる要件について、どこまでシステム化すべきか判断することは簡単ではありません。
結果として「運用で対応したほうが適切」という判断ができず、要件すべてをシステムに取り入れるという判断をせざるを得なくなります。
そのため過剰な性能のシステムを、高価で購入する結果につながります。
これに対して介護業務に詳しいIT企業なら、業務の実態を理解しています。
そのため適切な性能と価格の提案を受けることができ、費用対効果も高くなります。
介護業界向けにITを活用した事例を紹介
介護業界向けのITサービスのなかには、特徴的なものがあります。
ここではサービスの一例として、「ほむさぽ」と「ケア記録アプリ」を解説していきます。
●「ほむさぽ」の利用で、介護事業者のIT全般をサポート
「ほむさぽ」は株式会社ビーブリッドが提供する、介護施設向けITサービスです。
東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県において、以下のサービスを提供しています。
- ○介護業界に特化したIT導入のコンサルティングを行い、適切な内容での提案を行う
- ○WEBサイトの運用や制作、メールアドレスの管理を受託
- ○パソコンなどのトラブルや操作で不明な点を、ヘルプデスクへの問い合わせで解決
上記に示す通り、介護施設におけるITの相談を一手に引き受けるサービスであることが特徴です。
「ほむさぽ」で相談にあたる担当者はITに詳しく、かつ介護業界での実務経験もある方です。
このため「ほむさぽ」の活用により、適切なコストで介護施設のIT化を実施でき、職員の負担とコストの軽減が図れます。
また「ほむさぽ」はほかのIT関連事業者との間に立ち、必要な調整を行います。
このため、ITに詳しい方が職場にいなくても安心です。
●「ケア記録アプリ」の活用で、ITに慣れていない職員でも簡単に使える
引用:http://kaigosapuri.com/carerecord/
「ケア記録アプリ」は神戸デジタル・ラボが提供するITサービスで、日々の介護記録を楽にすることが特徴です。
ケア記録アプリには以下の特徴があり、ITに慣れていない職員でも簡単に使えるようにつくられています。
- ○iPad付属のペンを使い、紙に書く感覚で記録でき、職場の人と情報共有できる
- ○よく使う文言はボタンを押すだけで入力できるため、手書きよりも早くて便利
- ○書き直しや消去も簡単
タブレット端末で記録ができるサービスは、他社も提供しています。
しかしケア記録アプリは、紙と同じ「手書きの方法」を用意しているという特徴があります。
一方でケア記録アプリでは、以下のように紙での記録では難しいことも可能です。
- ○1回の記録で「日々の介護記録」や申し送り事項なども自動で作成されるため、転記の手間が不要
- ○記録した情報をグラフ化して表示でき、いつもと違う変化を早く見つけられる
- ○データはクラウド上に保管されるため、介護事業者がサーバなどを用意する必要はない
ケア記録アプリでは、以下の情報を記録できます。
また、施設ごとに必要な項目を追加・削除することが可能です。
- ○体温、血圧、脈拍など
- ○食事量、服薬チェック、口腔ケア、入浴
- ○飲水時間、摂取した水分量、排泄量、排泄形態(小便か大便か)
- ○経過記録(文章で記入できる。iPadで撮影した写真の添付も可能)
特にグラフ化や日々の水分量の計算は面倒ですが、ケア記録アプリなら記録した情報をもとに、そのつど自動で計算してくれます。
このため転記に手間をかけるよりも、早く正しい情報を得られることがメリットです。
介護事業者のIT化は、介護業界を知るIT企業への依頼がおすすめ
人と接することが主体の介護業界であっても、ほかの業界と同様、IT化による業務の効率化が期待できます。
一方で不十分な業務知識のまま開発すると使いにくいシステムになることも、ほかの業界と変わりません。
このため介護事業者のIT化は、業務知識を持つIT企業への依頼がおすすめです。
とりわけ介護業界を知るIT企業では、介護事業者が使いやすいシステムを提供していますから、この機会に検討することもよいでしょう。
参考:
大塚商会 「成功導入事例<介護・医療・福祉業>」.(2019年6月17日引用)
ITmedia “素人集団”が強みに 基幹システムを自社開発するハンズラボ.(2019年6月17日引用)
株式会社ビーブリッド トップページ.(2019年6月17日引用)
株式会社ビーブリッド ほむさぽ.(2019年6月17日引用)
株式会社ビーブリッド.(2019年6月17日引用)
株式会社Mewcket 「介護のIT化」はまだ準備の前段階、介護ITエンジニアという職種の確立に光明を見出す.(2019年6月17日引用)
神戸デジタル・ラボ ITで介護現場を変える.(2019年6月17日引用)
株式会社介護サプリ ケア記録アプリ.(2019年6月17日引用)
株式会社介護サプリ 【介護サプリ】ケア記録アプリ インタビュー編.(2019年6月17日引用)
神戸デジタル・ラボ ケア記録アプリ~手書きデモ~.(2019年6月17日引用)
神戸デジタル・ラボ ケア記録アプリ(説明・Q&A).(2019年6月17日引用)
ワイズマン 記録支援タブレット.(2019年6月19日引用)
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執筆者
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千葉県在住で、ITエンジニアとして約14年間の勤務経験があります。過去には家族が特別養護老人ホームに入所していたこともありました。2018年からは関東にある私大薬学部の模擬患者として、学生の教育にも協力しています。
現在はライターとして、OG WellnessのほかにもIT系のWebサイトなどで読者に役立つ記事を寄稿しています。
保有資格:第二種電気工事士、テクニカルエンジニア(システム管理)、初級システムアドミニストレータ